- 要旨
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- 日経平均株価は先行き12ヶ月54,000円程度で推移するだろう
- USD/JPYは先行き12ヶ月160円程度で推移するだろう
- 日銀は利上げを続け、2026年後半に政策金利は1.0%に到達しよう
- FEDはFF金利を26年前半までに3.5%へと引き下げ、その後は様子見に転じるだろう
金融市場
- 前営業日の米国市場は休場。USD/JPYは156前半で一進一退。
注目点
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筆者が日本経済と株式市場の行方を読む上で定点観測している日本の鉱工業生産は2025年10月に前月比+1.5%と2ヶ月連続で増産となった。経産省経済解析室の予測値(同▲0.4%)や市場予想(同▲0.6%)に反する力強い結果であった。増産となったのは自動車工業、電気・情報通信機械工業、輸送機械工業(除く自動車)など10業種。反対に減産となったのは電子部品・デバイス工業、汎用・業務用機械工業、パルプ・紙加工品工業など5業種。
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それでも鉱工業生産の水準は趨勢的に低下している。それは鉱工業生産指数が生産の「数量」を捕捉する統計であり「付加価値」ではないことが関係している。例えば、高付加価値を狙った品質向上によって生産数量が減少する場合、鉱工業生産統計はそれを減産と見做し、付加価値を過小評価してしまうこともある。したがって、鉱工業生産統計が示すほど日本経済(製造業)の付加価値創出力が停滞していない可能性を念頭に置く必要がある。事実、過去数年は付加価値の合計である実質GDPと鉱工業生産指数の水準・方向感の乖離が大きくなっている。

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11月初旬に実施された生産予測調査に基づけば、製造工業の生産計画は11月が前月比▲1.2%、12月が同▲2.0%と減産が見込まれている。経産省経済解析室が生産予測指数の上振れバイアスを補正した予測値でみると、11月の生産は同▲2.6%と深いマイナスになることが示唆されており、過去2ヶ月分の増産が帳消しになる蓋然性は相応に高い。生産の基調は横ばいとなろう。
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鉱工業生産全体の方向感を決める自動車工業の生産は前月比+6.6%の増産であった。オランダに本社を置く中国系半導体メーカーによる出荷停止の直接的影響は北米工場に集中しており、国内生産にはさほど影響を与えなかった。国内生産は、一部メーカーで昨年発生した認証不正の影響が緩和し生産が回復しているほか、思いのほか底堅い北米向け輸出に支えられている模様。米国向けに関してはトランプ関税(対自動車)が発動されて以降、日系メーカーは輸出価格の引き下げによって、現地の販売価格を据え置くことで販売数量の減少回避に努めている。駆け込みとその反動を除くと、米国向け需要に大きな変化はない。実際、米国の新車販売台数は10月に季節調整済み年換算の3ヶ月平均値が1,592万台と安定している。自動車ローンの延滞率上昇が耳目を集める一方、中高所得者は資産効果を追い風に高額消費に前向きとみられる。この間、国内販売は持ち直しの動きがみられている。筆者が試算した季節調整済み年換算値の基調は460万台程度となっている。ただし、輸送機械工業の生産計画は11月に前月比▲5.2%となった後、12月は同▲5.4%と慎重。もっとも、需要側に大きな変化が観察されていないことに鑑みると、その先は持ち直していく公算が大きいと思われる。
- 株式市場における重要度が高い半導体関連については、電子部品・デバイス工業が前月比▲6.7%と5ヶ月ぶりに減産となった。これまで大幅な変動を主導してきた集積回路(IC)は5月に同▲30.4%となった後、10月まで反発を続けて穴埋めを完了したが、11月は同▲9.3%となり、増産が一服した。なお、2024年12月に稼働したと伝わっているTSMC熊本工場の生産分が鉱工業生産統計に反映されているのかについて経済産業省からの情報発信はないが、令和7年度経済財政白書は「内訳として把握可能なメモリ等に比べ、その他の集積回路の回復が相対的に強くなっている」ことを指摘し、「一部の先端半導体工場が稼動開始したことに伴う効果が発現している可能性もある」と指摘している。この間、生産用機械に分類される半導体製造装置も復調の気配があり、11月の生産は同▲0.9%と微減も3ヶ月平均値では+6.3%と上向きの曲線を描いている。もっとも、関連指標の機械受注統計(機種別集計)における電子計算機等の受注額は下向き基調にあり、強弱区々となっている。
- 電子部品・デバイス工業の動向を仔細にみると、上述のとおり10月の生産は前月比▲6.7%、前年比では+2.9%となった。生産計画は11月に前月比+0.8%となった後、12月は同▲5.4%と減産が見込まれており、先行きは小幅に減産となる可能性がある。もっとも、出荷と在庫に注目すると、10月は出荷が前年比+7.1%とプラス圏で推移し、在庫が同▲4.9%とマイナス圏に回帰したため、出荷・在庫バランス(両者の前年比差分から算出)は+12.1ptへと上昇した。3ヶ月平均でも+5.1ptとプラス圏にあり、製品需給が引き締まる方向にあることが示唆されている。

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ここで長期的に電子部品・デバイス工業の出荷・在庫バランスと、日経平均株価が連動性を有してきたことを再確認したい。株価指数において半導体を直接手掛ける企業の存在感は必ずしも大きくはないが、電子部品、半導体製造装置、化学品など「広義半導体」で見ればその存在感は大きく、結果的に日本株全体のうねりを作り出す構図があると筆者は理解している。
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先行きの出荷・在庫バランスを見極めるために在庫循環図の位置取りを確認すると、直近12ヶ月は、右下領域(在庫減・出荷増)から左下領域(在庫減・出荷減)へと逆走した後、中心点付近で渦を描いている。もっとも過去の経験則に従えば、今後は東方に進路をとった後、徐々に右上領域(在庫増・出荷増)に向けて北上すると予想される。足もとの株価は急上昇した状態にあるが、今後AI向け半導体以外のPC、スマホ、自動車向け需要が復調すれば、現在の水準が事後的に正当化されよう。
藤代 宏一
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