世界経済見通し(日米欧亜・2025年11月)

新家 義貴 、 桂畑 誠治 、 田中 理 、 西濵 徹

1.日本経済

景気の現状 ~住宅投資の急減によりマイナス成長~

内閣府から公表された2025年7-9月期の実質GDP成長率(1次速報)は前期比年率▲1.8%(前期比▲0.4%)と、6四半期ぶりのマイナス成長となった。マイナス成長の主因は住宅投資であり、これだけで成長率を前期比年率で▲1.4%Pt押し下げた。25年4月の建築基準法・省エネ法改正によって、住宅建設や大規模リフォームのコスト増・手続き負担増・工期長期化が生じた。こうした負担を嫌った多くの事業者が改正前に着工を前倒ししたことで3月の住宅着工は急増したが、駆け込み需要の反動が生じたことで4-6月期の着工は歴史的な減少となった。この着工減がタイムラグをもって住宅投資に反映されたことで、7-9月期の住宅投資は前期比▲9.4%と急減している。また、輸出が前期比▲1.2%と2四半期ぶりに減少したことも成長率の押し下げ要因となっている。

住宅投資の落ち込みは一時的なものにとどまる可能性が高いことに加え、輸出も4-6月期の増加からの反動が生じた面もあるため、7-9月期の成長率の弱さについて過度に悲観視する必要はないだろう。これまでのプラス成長と均してみれば景気は上向きと判断できる。米国経済が関税引き上げのもとでも底堅さを保っていることで、当初懸念されていたような日本からの輸出が失速する事態は避けられており、景気腰折れに直結する動きは現時点で確認されない。

図表
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景気の先行き ~目先は輸出減が下押しも、26年度には上向きの動きに~

もっとも、輸出の先行きには不安が残る。米国経済は底堅く推移しているが、方向としては減速傾向にある。関税引き上げの価格転嫁も徐々に進んでいくことに加え、雇用情勢に陰りが出ていることが、低所得者層を中心として個人消費を下押しするだろう。また、日本からの対米自動車輸出については、これまでは輸出価格を関税の分だけ引き下げることで現地での販売減を回避してきたが、関税率が15%に定まったことで今後は値上げに踏み切る可能性が高く、米国内での販売台数も下押しされるだろう。輸出は10-12月期も減少する可能性が高い。住宅投資の落ち込みに歯止めがかかることや設備投資の増加によって10-12月期のGDP成長率はプラスに転じるとみられるが、輸出の下押しが影響することで、7-9月期の落ち込みと比べると小幅な持ち直しにとどまるだろう。牽引役に欠けるなか、年度下期の日本経済は回復感に乏しい状態となる可能性が高い。

一方、26年度の景気は徐々に上向きの動きが強まると予想する。米国では、関税引き上げによる悪影響が残るものの、これまでの利下げの効果がタイムラグをもって景気を支える。減税の実施も米国経済の押し上げに寄与するだろう。米国景気が安定に向かうことで、日本からの輸出も底入れが予想され、企業業績の悪化にも歯止めがかかるだろう。収益環境の好転や先行き不透明感の和らぎから、設備投資も緩やかな増加が期待できる。

もう一つの好材料が実質賃金の下げ止まりである。26年春闘では、賃上げ率を5.20%(厚生労働省ベース)と、3年連続で5%台の賃上げが実現すると予想する。①深刻化する人手不足、②歴史的な物価高の継続と実質賃金減少への対応、③高水準の企業収益、が賃上げに寄与するだろう。こうしたなか、コストプッシュの一巡に伴って物価上昇率が鈍化することで、実質賃金はマイナス圏から脱すると予想している。このことが個人消費の安定化につながるだろう。もっとも、実質賃金の増加幅は小幅で、個人消費が力強く伸びることまでは期待できない。あくまで緩やかな回復にとどまるとみられる点には注意が必要である。

(シニアエグゼクティブエコノミスト 新家 義貴 TEL 050-5474-7490)

2.米国経済

景気の現状 ~不確実性の高まりを受け、景気は緩やかに減速、労働市場は軟化~

米国では、トランプ2.0での政策の不確実性が高まるなか、10月1日から11月12日までの43日間、政府機関の一部が閉鎖された。これまでの最長記録だった第1次トランプ政権での35日間を上回った。この間、金融市場は比較的安定していたが、経済指標の公表や作成が停止された。入手可能なデータでは、景気は緩やかに減速、労働市場は軟化している一方、インフレ率は下げ渋っている。

10月の経済情勢を民間統計でみると、ISM景況調査では、製造業が48.7(前月49.1)と50を下回った一方、非製造業が52.4(同50.0)に上昇しており、景気の緩やかな減速傾向を示している。トランプ2.0発足後、製造業部門が縮小を続けるなか、非製造業部門が拡大を続け、米経済成長を支えている。同統計の雇用DIは雇用の縮小ペース鈍化を示したほか、ADP民間雇用者数は前月比で増加に転じるなど、労働市場の更なる軟化を回避できている模様。

インフレでは、コアCPIの上昇モメンタムをみると、6ヵ月前対比年率で+3.0%(前月+2.7%)と上昇したうえ、3ヵ月前対比年率で+3.6%(前月+3.6%)と高い伸びを続けており、インフレ圧力は強いままであることを示した。ただし、金融市場での期待インフレ率を示す指標「10年債利回り-インフレ連動(TIPS)10年債利回り」は、11月18日にかけて安定を続けており、関税賦課の物価への影響が一時的なものとなる期待が維持されていることを示している。

10月のFOMCで、FRBは2会合連続の利下げと、バランスシートの縮小策を12月1日に終了することを決定した。FFレート誘導目標レンジを25bp引き下げ、3.75~4.00%とする決定に10人が賛成したが、ミランFRB理事は50bpの利下げが適切、シュミッド・カンザスシティ連銀総裁は据え置きが適切として、25bpの利下げに反対した。

パウエル議長は、「インフレ率がやや高止まりしているが、労働市場が徐々に冷え込みつつある」と指摘、「労働市場の悪化リスクが高まる形でのリスクバランスの変化を考慮し、より中立的な政策スタンスに向けてさらなる一歩を踏み出すことが適切と判断、リスク管理として利下げを決定した」と説明した。しかし、今後の金融政策について、パウエル議長はFOMCメンバー内で政策経路を巡り「見解が大きく分かれた」と強調した。インフレは上振れリスク、労働市場には下振れリスクがあるため、何をすべきか、どのくらいのスピードでやるべきかについては様々な意見があると説明した。そのうえで、次回12月のFOMCでの追加利下げは、既定路線ではないとし、「慎重姿勢を維持すべき時期だと考えるメンバーがいる一方、利下げを進めようというメンバーもいる」と見方が分かれていることを強調した。

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景気の先行き ~26年の景気は堅調に~

トランプ2.0の関税政策では、相互関税、商品別関税を賦課した。一方、貿易戦争は概ね回避され、各国と通商交渉が進展し、合意が行われている。5月に英国、7月にベトナム、インドネシア、フィリピン、日本、EU、韓国、10月にカンボジア、タイ、11月にスイス、リヒテンシュタイン、アルゼンチン等と通商合意した。これらの合意では、米国が関税の上乗せを抑制する一方、相手国は米国からの輸入製品に対する関税の撤廃、米国から農作物やエネルギー、航空機等の輸入拡大、米国への投資拡大など、米国が一方的に利益を得られる内容となっている。これらは、米国の経済成長率を押し上げる効果があり、関税賦課に加えて、インフレ圧力を強める要因となろう。

米中間では、10月末にレアアースの輸出規制強化や関税上乗せなどの1年延期で合意した。具体的には、①米国が相互関税の10%引き下げと合成麻薬(フェンタニル)対策として課していた関税を10%に引き下げる、②中国は、直前に発表していたレアアース関連品目に関する輸出規制の強化を1年間停止する、③米国は、中国企業が50%以上の株式を保有する子会社などを禁輸対象とする「50%ルール」の実施を1年間停止する。この合意を受け、インフレ上昇やテクノロジー規制に関する懸念が一時的に緩和されるなど、不確実性が段階的に和らいでいる。ただし、今後、医薬品、半導体などへの関税賦課が計画されているほか、各国・地域の通商合意の履行が不十分とトランプ政権が判断すれば、関税引き上げのリスクがある。

実質GDP成長率は、これまでの実質金利の上昇や、価格上昇が経済活動の抑制要因になるほか、政府機関の一部閉鎖の影響によって、25年10-12月期に前期比年率+1%台に減速すると予想される。しかし、26年1-3月期には、政府機関の再開による押上げや減税効果等によって、再加速しよう。26年の個人消費は、価格上昇等の影響を受けるものの、減税、株や不動産などの資産残高の増加などを背景に堅調さを維持すると見込まれる。また、設備投資は、減税効果のほか、IT需要の拡大、通商合意による不確実性の和らぎや直接投資の増加等によって、伸び率が高まろう。さらに、通商合意による農作物やエネルギーの輸出拡大が見込まれる。以上により、米経済は潜在成長率(+1.8%)を上回る成長となる公算が大きい。

インフレは、住宅関連での低下が続くものの、関税賦課の影響が徐々に顕在化するなかで、緩やかに上昇する可能性が高い。このような環境のもと、FRBは、26年に利下げに慎重な姿勢に転じると予想される。

(主任エコノミスト 桂畑 誠治 TEL 050-5474-7493)

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3.欧州経済

景気の現状 ~関税合意と財政転換で安心感が広がる~

過去数年のユーロ圏経済は潜在成長率を下回る1%未満の低成長にとどまってきた。ロシアによるウクライナ侵攻後、ロシア産化石燃料への依存度が高かったドイツやイタリアでは、エネルギー価格が高止まりし、産業競争力や企業活力が失われた。世界的な貿易摩擦や中国を始めとする新興国企業との競争激化も、製造業が盛んで、輸出依存度が高い両国を苦しめている。また、財政不安を抱え、政局混乱が続くフランスも、不安定な経済環境が続いている。中核国の経済不振が続いているにもかかわらず、ユーロ圏が緩慢ながらも成長軌道を維持してきた背景には、2010年代前半の欧州債務危機時に欧州連合(EU)の財政支援下に入ったスペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランドの好調がある。これらの国々では、危機克服の過程で構造調整に取り組んだほか、移民の流入増加、旺盛な観光需要、多国籍企業による経済活動などが、経済環境の好転につながっている。

2025年に入ると、米国による関税引き上げ前の駆け込み輸出の増加で1~3月期の景気が大きく上振れした後、4~6月期、7~9月期はその反動もあり減速したが、緩やかな回復軌道を維持している。関税引き上げによる輸出企業への打撃は避けられないが、懲罰的な高関税や報復の応酬が回避され、米国とEU間の関税協議を巡る不透明感が後退し、先送りされていた経済活動が再開したことも景気拡大を後押ししている。また、長年、緊縮的な財政運営を続けてきたドイツが、財政収支の均衡化を義務付けた「債務ブレーキ」を見直し、インフラ投資、国防費、気候変動対策などに充てる特別基金を創設し、大胆な財政拡張に舵を切ったことも好感されている。

ユーロ圏の消費者物価は、エネルギーや食料価格の押し上げ剥落などを受け、歴史的な高インフレからの沈静化が進んでいる。賃金上昇率がピークアウトするなど、高止まりが続いてきたサービス物価にも緩和の兆しが広がっている。インフレ圧力の後退を受け、欧州中央銀行(ECB)は昨年央以来、利下げを続けてきた。下限の政策金利(預金ファシリティ金利)は現在2%と、ECBが想定する中立金利(景気を過熱も抑制もしない政策金利)の水準に到達している。景気回復の兆しが広がっていることもあり、7月以降、利下げを見送っている。

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景気の先行き ~財政拡張の効果顕在化で回復が加速~

ドイツによる歴史的な財政政策の転換は、その一部が2025年の補正予算に盛り込まれたが、多くは2026年以降に本格化する。ドイツ以外のEU諸国も、欧州を取り巻く安全保障環境の変化を受け、国防費の拡大に舵を切る。EUは加盟国による国防費の増加を支援するため、EUの財政規律の適用対象から国防費を一時的に除外するとともに、EU債の発行を通じて加盟国に財政資金を融資する。国防費の増加は、米国を中心にEU域外の防衛品の発注増加につながるとみられるほか、他の需要への波及効果が限定的であるとの見方もある。財政悪化懸念による長期金利の上昇で、民間の資金需要を抑制する面もある。もっとも、今回の計画ではEU域内からの発注増加が見込まれ、全体としては景気浮揚の効果が上回ろう。

こうした国防費を中心とした財政支出の拡大に加えて、インフレ沈静化と賃上げによる家計の購買力回復、これまでの利下げ効果の浸透などに支えられ、2026年に入るとユーロ圏の景気回復が加速することが予想される。また、これまでの景気拡大を支えてきた南欧やアイルランドを取り巻く経済環境にも大きな変調が予想されない。なお、南欧や東欧諸国向けを中心に、コロナ危機からの復興に必要な財政資金を提供する欧州復興基金の新規融資が2026年中に打ち切られる。融資枠の多くが未消化で、新規融資の打ち切り前の駆け込み利用の増加も、2026年の景気拡大を後押しする公算が大きい。

2026年のユーロ圏の成長率は+1.2%と、2025年(+1.3%)から僅かに減速する見通しだが、これは関税引き上げ前の駆け込み輸出による1~3月期の成長上振れで2025年の年間成長率が大きく押し上げられることが影響している。特に米国向け医薬品輸出が多いアイルランドでは、巨額の駆け込み輸出で2025年の成長率が先進国で最も高い10%前後に達することが見込まれている。こうした特殊要因を除いた正味の成長率は、2026年にむしろ加速する展開を想定する。景気シナリオに対するリスク要因は、フランスの政局混乱による金融市場の動揺、ドイツの構造不況の継続、関税合意の履行を巡る米国との貿易摩擦の再燃、ウクライナや中東での地政学的な緊張の高まりなどが考えられる。

景気回復の加速が確認され、中期的な物価安定の達成が視野に入ることから、ECBは今後も様子見姿勢を続ける公算が大きい。ECBは不確実性の高さを理由に今のところ利下げ再開の余地を残しているが、2026年に入ると将来の利上げ転換を視野に、政策指針(フォワード・ガイダンス)の修正を開始することが予想される。

(首席エコノミスト 田中 理 TEL 050-5474-7494)

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4.中国、アジア新興国経済

景気の現状 ~トランプ関税の本格発動を前にした「駆け込み」が景気を下支えする展開~

中国経済を巡っては、過剰生産能力による供給過剰が懸念される状況が続くなか、依然として供給サイドが景気をけん引している。一方、中国国内では不動産不況が長期化し、コロナ禍一巡後も若年層を中心に雇用回復が遅れており、家計部門は節約志向を強め、個人消費は力強さを欠く。さらに、不動産需要の低迷は固定資本投資の足かせとなり、幅広く内需は弱含んでいる。トランプ米政権の関税政策は中国を標的としており、当初は貿易戦争に突入するなど外需に悪影響が出ることが懸念された。しかし、その後の通商協議を経て、米中は報復関税を撤廃し、上乗せ関税や輸出規制を停止するなど最悪の事態は免れている。また、中国当局は米中関係の悪化を念頭に、米国以外の国や地域への輸出を活発化させており、対米輸出の下押しの影響を相殺している。金融市場では、人民元の対ドル相場は堅調に推移しているが、通貨バスケット(CFETS人民元指数)は依然として割安な水準に留まり、足元の輸出を下支えする展開が続いている。中国当局は昨年後半以降、内需喚起を目的とする政策支援を強化させたが、その効果は足元で息切れの兆しがみられる。こうした状況ながら、今年9月までの経済成長率は+5.2%と政府目標(5%前後)を上回る伸びを維持している。

トランプ米政権は、米中摩擦の背後で対米輸出を拡大させるなど『漁夫の利』を得たアジア新興国に対し、当初は高率の相互関税を課した。しかし、その後の通商協議を経て、ASEAN主要国に対する相互関税は19~20%となるなど、税率が輸出競争力に過度の影響を与える事態は回避された。また、これまではトランプ関税の本格発動を前に、対米輸出に駆け込みの動きが出たほか、中国による迂回輸出の動きが活発化したことも重なり、外需をけん引役に景気が押し上げられる展開が続いた。さらに、ここ数年のアジア新興国では、商品高や異常気象の頻発などを理由に食料品など生活必需品を中心とするインフレが続いたものの、足元ではそうした動きが一服するなかで各国のインフレは落ち着いた推移をみせる。外需の不透明感が高まるなか、各国中銀は利下げによる内需下支えに動いていることも景気の堅調さを促す一助となっている。その一方、米国はインドがロシア産原油の輸入を拡大させたことを理由に、インドに対する相互関税を50%に大幅に引き上げた。ただし、インド経済は対米輸出への依存度が相対的に低いなか、インド政府はGST(財・サービス税)引き下げなど内需喚起への取り組みを強化しており、インフレも下振れするなど景気を下支えしている。こうしたことから、現時点においてはトランプ関税による景気への影響は限定的なものに留まっている。

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景気の先行き ~米中摩擦の先送りで中国は供給拡大が続く一方、アジアは余波を受ける~

10月末の米中首脳会談を経て、両国は互いに歩み寄りをみせた。中国はレアアースの輸出管理強化策の発動を1年延期し、米国は報復関税の撤廃に加え、フェンタニル対策の協力で合意し、この問題を理由に課した追加関税を軽減した。さらに、米国は輸出制限リストへの中国企業の追加や中国船への入港手数料の徴収を1年間停止、中国も米国関連船舶への特別港湾料の徴収を1年間停止し、互いに関税の上乗せ分(24%)も1年間停止した。今回の措置でトランプ2次政権以降に中国に課す関税は20%となり、ASEAN主要国とほぼ同水準となる。中国当局は米国以外の国や地域向けの輸出拡大で対米輸出の減少を相殺してきたが、中国にとって迂回輸出の経済的なメリットは低下する。よって、先行きは全方位で輸出を一段と活発化させると見込まれる。その一方、中国当局による内需喚起策の効果は一巡しており、先行きはその反動が懸念される。10月に開催された4中全会では、第15次5ヵ年計画における内需拡大の重要性の認識は示されたが、具体的な方策は示されなかった。よって、内需の先行きに不透明感が残る上、政策支援も限定的なものに留まる可能性がある。2026年の中国景気は供給をけん引役にした動きが続くと見込まれるが、需要は見通しが立ちにくい展開が続くであろう。

米中摩擦の緩和は、経済構造面で外需依存度が相対的に高いアジア新興国にとって世界貿易の拡大を通じて追い風になると期待される。しかし、トランプ2次政権以降に米国が課す関税は中国とアジア新興国の間でほぼ同水準となり、中国による迂回輸出の動きは縮小が見込まれる。さらに、米国はASEAN諸国などとの通商合意に一方的破棄を可能とする「毒薬条項」を盛り込むなど、アジア新興国は米中摩擦の代理戦争の舞台となる可能性が高い。また、先行きは対米輸出に駆け込みの反動が出る上、中国の迂回輸出による間接的な輸出押し上げ効果も期待しにくくなる。その一方、中国の輸出拡大による「デフレの輸出」に晒される可能性は高まり、製造業を巡る環境は一層厳しさを増すと予想される。一方、米国はインドに高関税を課したが、両国は通商協議を継続している。インド政府はGST引き下げなどを通じた内需喚起に動いており、足元ではインフレ鈍化に加え、個人消費が押し上げられるなどの効果もみられる。よって、短期的に内需がインド景気を押し上げる展開が見込まれる。また、アジア新興国のインフレは落ち着いており、各国中銀は景気下支えを目的に金融緩和の動きを強めており、個人消費をはじめとする内需を下支えすると期待される。外需に不透明感が残るなか、各国は内需喚起による景気下支えに向けた動きを一段と積極化させることが見込まれるものの、国ごとの経済構造の特徴が今後の景気動向に影響を与える展開が続くと予想される。

(主席エコノミスト 西濵 徹 TEL 050-5474-7495)

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新家 義貴 、 桂畑 誠治 、 田中 理 、 西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘等を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針等と常に整合的であるとは限りません。

新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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