資金循環統計(2025年4-6月期)

~家計の現預金フローのトレンドが約18年ぶりのマイナス~

星野 卓也

要旨
  • 家計貯蓄の縮小と政府財政赤字の縮小が並行して進む

 4四半期移動平均値で均してみると、直近のトレンドは家計の資金余剰幅の縮小と政府の資金不足幅の縮小が並行し進んでいる点が確認できる。足元では企業部門もやや資金余剰幅が縮小する方向にあることもわかる。

 政府部門はインフレになることで収入側の税収が拡大する一方で、歳出側は物価に合わせて自動調整する仕組みが完備されているわけではない。また税収についても、昨年の「年収の壁」の議論でも課題となったブラケット・クリープの影響などで制度改正がないと増えやすくなる。この点で、インフレ経済は基本的に政府の財政赤字縮小に追い風だ。一方で、それは民間部門から政府部門への移転がインフレで強まることも意味している。

  • 家計:変わりつつある家計フローの形、現預金フローのトレンドがマイナスに

 今回、象徴的な点として、家計の現預金フローの4四半期移動平均値が約18年(74四半期)ぶりにマイナスとなった点がある。新NISAの開始などをきっかけに家計のリスク性資産への資金流入は堅調な状態が続く一方、現預金への資金流入は縮小傾向にある。インフレ下での実質可処分所得の伸び悩みのもとで、脆弱な家計が貯蓄の縮小や資産取り崩しの拡大を進めている部分もありそうだ。高齢化とともに進む無職世帯(貯蓄率マイナス世帯)の増加は、長期的にはマクロの家計貯蓄率にも低下圧力を及ぼす。この影響は現役世代の将来不安(消費より貯蓄)で相殺されてきたが、直近ではマイナス方向へのトレンドが続いており、「マクロの家計貯蓄マイナス」がじわりと近づいてきている点には気を付けたい。

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星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

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