株高不況 株高不況

「円安予想」を維持 FRB の利下げは想定ほど進まない可能性

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月45,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
  • 日銀は利上げを続け、2026年前半に政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が▲0.4%、NASDAQが▲0.3%で引け。VIXは16.6へと上昇。

  • 米金利はカーブ全般で金利上昇。予想インフレ率(10年BEI)は2.392%(+3.3bp)へと上昇。
    実質金利は1.933%(+0.4bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+53.0bpへとプラス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが堅調。USD/JPYは148前半へと上昇。コモディティはWTI原油が63.5㌦(+0.3㌦)へと上昇。銅は9724.5㌦(+4.0㌦)へと上昇。金は3336.9㌦(▲6.5㌦)へと低下。

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注目点

  • 筆者はUSD/JPYが「円安方向」に推移するとの見通しを維持してきた。基本的な根拠はFedの利下げが市場の期待ほど進まないとの見方。FF金利先物から逆算すると、市場関係者は2026年末にかけて3%程度まで利下げが進むことを織り込んでいるが、筆者は2025年9月FOMC以降、2回(累積50bp)の利下げが実施された後、様子見に転じると予想している。この見方が正しければ、利下げ観測の後退と共にドル高主導の円安が予想される。

  • そうした見方を裏付けるように、シュミッド・カンザスシティ連銀総裁は8月21日に「インフレのリスクは労働市場におけるリスクよりやや高い」として、積極的な利下げにやや距離を置く見解を示した。またハマック・クリーブランド連銀総裁も同日に「米国のインフレは高過ぎる上、過去1年を通じて上昇基調にある」、「失業率は依然として、自身が最大雇用とみる水準に近い」として「(22日にFOMCが開催されるなら)自身は利下げを支持しないだろう」と利下げに否定的な見解を示した。そして同日にはボスティック・アトランタ連銀総裁も「労働市場の動向は気掛かりな要因となり得る」としつつも「年内の利下げは1回となる可能性が高い」と控え目な利下げが適当であるとの見方を示した。

  • 失業率が現在の4%台前半から5%に向けて一本調子で上昇(例えば半年で0.5%pt)するような事態になれば、インフレ率安定と雇用最大化の天秤は一気に後者に傾くのだろうが、関税インフレの警戒が残存する中では慎重な利下げが選択され易いのではないか。9月FOMC以降、「利下げ=ドル安・円高」という単純な展開にはならないと予想する。

  • 米景気がはっきりとした減速基調にあるならば話は簡単であるが、引き続き強弱区々である。8月21日に発表された8月のPMIと中古住宅販売件数は共に市場予想を上回り、利下げの緊急性に疑問を投げかけた。

  • 速報性に優れた製造業PMI速報値は8月に53.3と強く反発(7月は49.8)。単月の振れを除去した3ヶ月平均でみても52.0と堅調な数値が示されている。トランプ関税による混乱は一部にあるのだろうが、それでも最終需要がしっかりとする下で、景況感が悪化するには至っていない。この間、サービス業PMIも55.4と高水準にある。類似指標のISM製造業/サービス業とのかい離が大きくなっていることに鑑みると、PMIが強さを誇張している可能性は否定できないが、経済指標は良い意味でまだら模様である。

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  • 中古住宅販売件数も悲観を和らげる結果であった。6月は前月比+2.0%、401万件(年換算)と下げ止まった。住宅バブル崩壊後の最低水準に匹敵するほどの販売不振に直面しているものの、販売中央価格が落ち着き、在庫(販売可能戸数)が回復するなど、販売の底打ちを示唆するデータもある。住宅ローン金利の高止まりはしばらく続きそうだが、住宅市場は最悪期を脱しつつあるようにみえる。

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  • 関税由来のインフレに一定程度の警戒が必要な現状、こうした強弱区々の構図が大きく崩れないであれば、中立金利に向けて一気に政策金利を引き下げる必要性には乏しい。市場参加者の利下げ観測が後退する下で、USD/JPYは円安方向への圧力が生じるのではないか。

藤代 宏一


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