関税上乗せ控え米非製造業は持ち直し(6月ISM非製造)

~小売業、卸売業等の拡大で、活動指数が大幅上昇~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年6月のISM非製造業景気指数(総合、季節調整値)は、50.8(前月49.9)と前月比0.9%ポイント上昇し、拡大縮小の分岐点である50を回復、市場予想中央値の50.5を上回った。トランプ2.0発足後、製造業部門が縮小を続けるなか、非製造業部門は5月の失速から直ぐに持ち直した。
  • 雇用は、トランプ政権の混乱を招く政策運営を受けた企業の慎重な採用姿勢を背景に低下した。一方、相互関税(7月9日期限)や対中関税(8月12日期限)の上乗せの90日間の停止等を背景とした駆け込みで新規受注が大幅に上昇したほか、活動指数が比較的高い水準まで上昇し、全体を押し上げた。発表元によると「引き続き関税関連の影響に対する懸念」が最も多く指摘された他、「成長減速と経済の不確実性への言及が多くあった」としており、需要の鈍化するもと、不確実性が強いままであることが指摘された。また、「価格上昇が事業コストに影響を与えているとの言及が今月は先月より多くあった」と企業収益への悪影響が強まっていることが報告された。
  • 非製造業総合指数の構成項目では、雇用が47.2(前月50.7、前月比▲3.5%ポイント)、入荷遅延が50.3(前月52.5、前月比▲2.2%ポイント)と低下した一方、新規受注が51.3(前月46.4、前月比+4.9%ポイント)、活動指数が54.2(前月50.0、前月比+4.2%ポイント)と上昇した。
  • 主要項目別では、雇用指数は縮小を示す水準まで低下した。雇用の拡大した業種数が18業種中5業種(同7業種)と減少し、縮小した業種数は9業種(同7業種)に増加した。6月に雇用の拡大を報告した5業種は、不動産・賃貸・リース、公益、運輸・倉庫、卸売業、情報(下線は拡大・縮小が2カ月以上続いたことを示す、以下同様)。企業からの回答では、「既存の従業員で対応できるのであれば、新規採用は行わない」と新規採用に慎重になっていることや、「政権の提案した2026年度予算を受け、保留中の採用活動の多くを停止した」と採用を停止したことが指摘された。また、入荷遅延は、関税による遅れを指摘する業種があったものの、大幅に低下しており、物流の遅れが改善に向かいつつあることが示された。
  • 一方、新規受注は、拡大を示す水準まで大幅に上昇した。拡大した業種が18業種中8業種(前月6業種)に増加し、縮小した業種が4業種(同7業種)に減少した。拡大した業種は、その他サービス、金融・保険、専門・科学・技術サービス、運輸・倉庫、卸売業、公益、公的部門、教育サービス。企業からの回答では、「企業は米国での事業拡大、供給混乱の最小化に関心がある」と米国内事業の拡大を目指していることが指摘された一方、「多くのバイヤーが関税期限前に在庫を積み上げたため、製品コストの上昇を受け需要が弱まっている」と駆け込みの反動や価格上昇による需要の鈍化が指摘された。
  • さらに、活動指数は、高い水準に大幅上昇した。拡大した業種が18業種中11業種(前月12業種)と減少した一方、縮小した業種が3業種(同3業種)と変わらなかった。拡大した11業種は、その他サービス、芸術・娯楽・レクリエーション、公的部門、情報産業、公益、教育サービス、卸売業、小売業、企業向けサービス、運輸・倉庫、金融・保険と続いた。
  • インフレ関係では、仕入価格指数が67.5(前月68.7)と小幅低下したが、高い水準にとどまった他、18業種中14業種(前月16業種)で上昇し、低下した業種はなく、インフレ圧力は強いままであることが示された。
  • 6月に拡大した業種数は、18業種中10業種と前月の10業種から変わらず。拡大した業種は、強い順に、その他サービス、運輸・倉庫、公益、芸術・娯楽・レクリエーション、企業向けサービス、卸売業、公的部門、小売業、情報産業、不動産・賃貸・リース業と続いた。
  • 米国経済全体の景気動向を示す「ISM総合景気指数(非製造業景気指数と製造業景気指数の合成)」は、6月に50.6(前月49.8)と上昇し、拡大に転じたことが示された。四半期では、4-6月期の製造業が48.7と1-3月期の50.1から低下し縮小に転じたうえ、非製造業が50.8と1-3月期の52.4から低下した。この結果、同期のISM総合景気指数は、50.6と1-3月期の52.1から低下し、4-6月期の米経済の減速を示唆している。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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