インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

ニュージーランド、景気回復確認もNZドル相場の行方に不透明感

~企業マインドの悪化、中東情勢悪化、トランプ関税など、金融政策の行方は見通しにくくなっている~

西濵 徹

要旨
  • 米トランプ政権の関税政策は、世界経済や国際金融市場に波紋を広げている。米国は安全保障を理由に、自動車や鉄鋼製品、アルミ製品に追加関税を課し、鉄鋼とアルミに対する税率を大幅に引き上げた。また、すべての国に一律10%、一部の国・地域に税を上乗せする相互関税を課す方針を示した。ただし、ニュージーランドへの相互関税は一律分と同じ10%であり、対米輸出依存度が低いことで直接的な影響は限定的だが、同国は中国やASEAN向け輸出比率が高く、間接的な影響が出ることは避けられないであろう。
  • 近年のニュージーランド経済は、物価高と金利高に加え、中国の景気減速の影響も重なり、景気は低迷してきた。しかし、インフレが沈静化するとともに、RBNZも連続利下げに動くなど内需を取り巻く環境は改善している。さらに、年明け直後はトランプ関税の発動を前に輸出に駆け込みの動きが出るなど、景気の追い風になることが期待された。1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+3.13%と2四半期連続のプラス成長となるなど、足元の景気は底入れの動きを強めている。景気実態も数字以上に良好と捉えられる状況にある。
  • しかし、足元では企業マインドが急速に悪化しており、中東情勢悪化による原油高がインフレを再燃させるリスクも高まっている。金融政策を巡る市場の見方は分かれており、RBNZの利下げ継続には不透明感が増している。NZドルは米ドル高再燃に伴い上値が重く、円にも弱含みする展開が続く可能性があろう。

このところの世界経済や国際金融市場は、米トランプ政権の関税政策に揺さぶられる展開が続いている。米国は、安全保障上の脅威を理由に、自動車や鉄鋼製品、アルミ製品に追加関税を課した上で、今月からは鉄鋼製品とアルミ製品に対する税率を大幅に引き上げている。また、貿易赤字の縮小を目的に、すべての国に一律で10%、一部の国と地域に対して非関税障壁に応じて税率を上乗せする相互関税を課す方針を示した。なお、米国のニュージーランドに対する貿易赤字は小幅に留まり、米国は同国に対する相互関税を一律水準と同じ10%としている。さらに、同国の対米輸出額は名目GDP比で2.1%に留まるため、相互関税による同国経済への直接的な影響は限定的なものに留まると想定される。他方、同国は総輸出の4分の1強を中国(含、香港・マカオ)向けが占めるほか、相対的に高い相互関税が課されるASEAN(東南アジア諸国連合)向けも1割強を占めており、相互関税による間接的な影響が及ぶことは避けられないと見込まれる。

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他方、ここ数年の同国においては、物価高と金利高の共存が個人消費をはじめとする内需の足かせになるとともに、最大の輸出相手である中国経済の減速が外需の重石となるなど、内・外需双方に下押し圧力が掛かりやすい展開が続いてきた。事実、昨年半ばにかけての同国経済は2四半期連続のマイナス成長となるテクニカル・リセッション(景気後退局面)に陥るなど、景気は頭打ちの様相を強めた。しかし、インフレは2022年後半に30年ぶりの水準に達するも、RBNZ(中銀)の断続利上げの効果発現に加え、商品高の一巡も重なる形で2023年以降は頭打ちの動きを強めるとともに、足元ではRBNZが定める目標域内に収まるなど落ち着きを取り戻している。よって、RBNZは昨年8月にコロナ禍一巡後初の利下げに動き、その後もインフレ鈍化を受けて断続利下げに動いており、先月の定例会合まで6会合連続、累計225bpの利下げに動くなど金融緩和を進めている(注1)。こうしたことから、足元では物価高と金利高の共存が個人消費をはじめとする内需の足かせとなる状況は大きく変化している。また、昨年末から年明け直後にかけての輸出には、トランプ関税の発動を前にした『駆け込み』の動きが確認されるなど、外需が景気を押し上げる様子もうかがわれた。

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こうした状況を反映して、1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+3.13%と前期(同+2.00%)から伸びが加速しており、上述したように同国経済は昨年半ばに景気後退局面に陥ったものの、足元では底入れの動きを強めている様子がうかがえる。中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率も▲0.7%と4四半期連続のマイナスで推移するも、前期(同▲1.3%)からマイナス幅は縮小するなど底打ちしている。トランプ関税の発動を前にした駆け込みの動きを反映して財輸出は大幅に拡大する一方、外国人来訪者数の頭打ちを受けてサービス輸出は下振れしており、総輸出の拡大ペースは小幅に留まっている。一方、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げに加え、利下げによる債務負担の軽減も重なり個人消費は押し上げられて大きく上振れしたほか、住宅投資も底打ちするとともに、企業部門の設備投資も拡大の動きを強めている。そして、政府消費も拡大傾向が続くなど、総じて内需は景気をけん引している様子がうかがえる。さらに、在庫投資の成長率寄与度は前期比年率ベースで▲1.16ptと前期(+1.45pt)から2四半期ぶりのマイナスになるなど、在庫調整が進む動きも確認されており、足元の景気実態は数字以上に堅調と捉えられる。分野ごとの生産動向を巡っても、金融関連や観光関連など一部のサービス業を除いてほぼすべての分野で拡大が確認されている。なお、年明け直後は幅広く企業マインドは堅調な動きをみせてきたものの、足元では製造業、サービス業ともに急速に悪化しており、先行きの景気に急ブレーキが掛かる可能性は高まっている。

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RBNZは先月の定例会合で6会合連続の利下げを決定したものの、金融市場では先行きの政策運営に対する見方が分かれている。というのも、決定に際しては利下げと据え置きの間で検討がなされた旨が明らかにされるとともに、評決も「5(25bpの利下げ)対1(据え置き)」と票が割れるなど、政策委員の間でハト派姿勢が後退しつつあるとの見方が強まっている。その一方、同時に公表した最新のインフレ見通しでは、当面の政策金利について一段の利下げに加え、従来見通しに比べて利下げ幅を拡大させるシナリオが示されるなど、ハト派姿勢を強める内容とされた。なお、足元の景気の堅調さが確認されたことを受けて、RBNZは利下げを休止させるとの見方が広がる可能性はある。他方、上述したように足元の企業マインドは急速に悪化しているほか、このところの中東情勢の悪化による原油価格の上振れが新たなインフレを招く可能性があり、政策運営に対する見方が再び分かれる可能性がある。足元のNZドル相場は、中東情勢の悪化を受けた米ドル高の再燃を受けて上値が重い動きをみせており、当面は米ドルのみならず、日本円に対しても上値が抑えられる展開が続く可能性が見込まれる。

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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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