株高不況 株高不況

日銀は国債の買い入れ減額を緩やかに 政府は財政支出の拡大を緩やかに

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月39,000円程度で推移するだろう。

  • USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。

  • 日銀は半年に一度の利上げを続け、2026年1月までに政策金利は1.0%に到達しよう。

  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。

目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が+0.1%、NASDAQが+0.3%で引け。VIXは17.2へと上昇。

  • 米金利はカーブ全般で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.313%(▲0.4bp)へと低下。
    実質金利は2.152%(▲2.8bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+46.8bpへとプラス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが軟調。USD/JPYは144半ばへと下落。コモディティはWTI原油が65.3㌦(+0.7㌦)へと上昇。銅は9793.0㌦(+100.0㌦)へと上昇。金は3332.1㌦(+9.4㌦)へと上昇。

図表1
図表1

米国イールドカーブ
米国イールドカーブ

米国イールドカーブ(前日差)
米国イールドカーブ(前日差)

米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国長短金利差(2年10年)
米国長短金利差(2年10年)

経済指標

  • NY連銀が集計した家計の予想インフレ率は5月に低下。1年先は3.2%へと0.43%pt低下、3年先は3.00%へと0.17%pt低下、5年先は2.61%へと0.13%pt低下となり、いずれもトランプ関税が強く意識される前の水準に回帰した。消費者は、通商交渉の進展により関税率が引き下げられることを期待していると推察される。予想インフレ率の安定は、Fedに自由度を与えることを通じて、金融市場の安定にも寄与する。

予想インフレ率(NY連銀調査)
予想インフレ率(NY連銀調査)

注目点

  • 6月17日の金融政策決定会合で日銀は政策金利を据え置くだろう。注目の国債買入れ方針に関する中間評価については、これまでの報道から判断すると、2026年3月までは2024年7月に示された現行の買入れ方針に沿って減額が続く見通し。すなわち、月間の買い入れ額を2024年7月の5.7兆円程度から四半期ごとに4000億円ずつ減額し2026年1-3月に2.9兆円程度とするものである。

  • 市場参加者の注目は、2026年4月以降の買入れ方針であり、減額ペースについては2000億円程度まで引き下げる案が有力視されている。ブルームバーグが報じたところによれば、2026年4月以降はまず期間を1年程度として計画を示すという。仮に、四半期ごとの減額幅が2000億円となれば、最終的な買入れ額は年間2兆円台前半となる。なお、2000億円という数値は、5月に実施された債券市場参加者会合において、市場参加者の「意見」として登場した額であるが、いつの間にかコンセンサスになりつつある印象だ。その他、市場参加者の意見としては、現行の四半期ごとに4000億円減額する現在の方針を維持すべきとの声もあった。

  • 2025年春以降の超長期金利上昇について、筆者は①日銀の利上げ観測復活、②日銀の長期国債の買入れ方針に関する不透明感、③米長期金利の上昇、④日本の財政懸念、という4つの要因があると整理してきた。このうち②については、先の減額幅が2000億円程度となれば、買い安心感が広がり金利上昇要因から外れよう。

  • また④日本の財政懸念についても、足もとでは落着きがみられる。7月の参院選に向けた政策議論において自民党が消費税率引き下げから距離を置く中、お米価格の低下もあってか石破内閣の支持率が底打ちしたことで、各党による財政支出拡大合戦に巻き込まれる可能性は低下した。NHKが実施した調査によれば、石破内閣の支持率は5月対比で6%ptも上昇して39%となった。もっとも、消費税率については41%が「今の税率を維持すべき」とした一方、「廃止すべき」(16%)と「税率を引き下げるべき」(37%)も多く、この点は自民党に財政支出の拡大を迫っている。

  • そうした中で、6月9日に木原誠二選対委員長は「物価高で苦しんでいる時に国の税収だけが伸びているのはおかしい。しっかり還元していくことも大切だ」として「実効性のある給付」が必要であるとの認識を示した。朝日新聞や毎日新聞によると、所得制限は設けられず、1人あたり数万円を給付する案が有力だという。財源は税収の上振れ分とされており、良くも悪くも「小粒」な規模に留まるだろう。超長期金利の抑制を優先事項として取り扱うのであれば、「内閣支持率上昇→財政規律維持」は良い流れと言える。

藤代 宏一


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