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ルーマニアのやり直し大統領選は極右が首位

~決選投票は親EU派との一騎打ち~

田中 理

要旨
  • ロシアの選挙介入などでやり直しとなったルーマニアの大統領選挙は、ウクライナ支援に反対する極右政党のシミオン党首が首位に立ち、次点となった親EU派のブカレスト市長のダン氏と、18日の決選投票で対峙する。世論調査は拮抗している。極右候補が勝利した場合、全会一致を原則とするウクライナ支援やロシア制裁でのEUの団結にひびが入る恐れがある。

5月4日に行われたルーマニアのやり直しの大統領選挙は、極右政党・ルーマニア人統一同盟(AUR)のシミオン党首が41%の得票率で首位に立ち、中道系独立候補でブカレスト市長のダン氏の21%、連立与党の統一候補アントネスク氏の20%を上回った(図)。過半数を上回った候補がいなかったことから、今月18日にシミオン氏とダン氏の上位2名による決選投票が行われる。

昨年11月24日に行われた大統領選挙では、無所属で極右・親ロシアの無名候補のジョルジェスク氏が22.94%の得票率で首位となり、中道右派政党・ルーマニア救出同盟(USR)のラスコー二候補が19.18%で続き、現職首相で中道左派政党・社会民主党(PSD)のチョラク候補は19.15%と僅差で上位2名に届かなかった。ジョルジェスク氏は、ウクライナ支援の終了、輸入依存の低減、エネルギーや食料生産の拡大、ルーマニアの尊厳回復、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)に対する従属を終わらせることを主張した。PSDの候補が決選投票に進めなかったのは、1989年の民主化後で初とされ、チョラク氏は党首を引責辞任した。ルーマニアの憲法裁判所は、ロシアによる選挙介入やソーシャルメディアの不正操作があったことから、選挙が無効であると判断し、やり直しの選挙を命じた。なお、無効となった大統領選挙の直後の12月1日に行われた議会選挙では、社会民主党が20%台前半の得票率で首位を守ったものの、大幅に議席を減らした一方、シミオン氏の極右政党が18%台の得票率で大幅に議席を伸ばし、上下両院で第二党に躍進した。

やり直しの大統領選挙ではジョルジェスク氏の出馬が認められず、同氏に近いシミオン氏が首位に立った。今回の大統領選挙でもロシアによる選挙介入の可能性が一部で報じられているが、今のところ憲法裁判所から投票無効の決定は出ていない。シミオン氏は無効となった昨年11月の大統領選挙にも出馬したが、決選投票に進めず、ジョルジェスク氏支持に回っていた。ジョルジェスク氏は現在無所属だが、過去にはシミオン氏の率いる極右政党に所属していた。両者は4日に投票所に連れ添って現れ、ジョルジェスク氏が記者の質問に率先して答えるなど、同氏が事実上の後見人の役割を果たしている模様だ。シミオン氏はジョルジェスク氏と同様に、ソーシャルメディアを駆使し、選挙戦を有利に戦った。親ロシア派とはやや距離を置くが、ウクライナ支援に反対の立場を取るほか、トランプ大統領のアメリカ第一主義に倣ってルーマニア第一主義の立場を採り、自国に不利なEUルールの受け入れを拒否する方針を示唆している。物価高騰などによる市民生活の厳しさや、与党政治家による汚職事件の発覚などを受け、ルーマニア国民の間で既存政党に対する不信感が広がっていることも、極右政党の追い風となっている。

決選投票でシミオン氏と対峙するダン氏は親EUの立場を採り、初回投票で落選した与党統一候補を支持した有権者の取り込みを目指す。ダン氏と与党の統一候補の合計得票率は、シミオン氏の初回投票での得票率と並ぶが、4番手のポンタ候補も与党出身の首相経験者だ。両者が決選投票に進んだ場合の世論調査は、ダン氏が勝利する調査が僅かに多いが、拮抗している。与党が正式にダン氏支持に回るか、シミオン氏当選時のルーマニアの将来に対する有権者の不安が投票行動にどう影響するか、ジョルジェスク効果がシミオン氏の追い風となるか、などが勝敗を左右しそうだ。

ルーマニアの大統領は外交や国防を主管し、首相の任命権を持つ。シミオン氏は大統領に就任する場合、ジョルジェスク氏を首相など政府の要職に起用する可能性を示唆している。ウクライナ支援に反対し、隣国モルドバの統合を主張し、米国のトランプ政権との連携強化を目指す同氏が大統領に就任すれば、全会一致を原則とするウクライナ支援やロシア制裁でのEUの団結にひびが入る恐れがある。

図表1
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田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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