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2025.04.18
アジア経済
米中関係
アジア経済見通し
アジア金融政策
マレーシア経済
トランプ関税
マレーシア経済もトランプ関税を前に頭打ち、先行きも不安要因山積
~中国との経済協力強化の背後でデフレの輸出や価格競争に晒されるリスクにも要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- 米トランプ政権の関税政策の不透明さは世界経済や金融市場を揺るがしている。マレーシア経済は対米輸出依存度が高く、仮に相互関税が発動されれば深刻な悪影響は避けられない。一方、中国との経済協力は進んでいるが、米中摩擦により中国経済は減速が避けられず、対中輸出の伸びは限定的と見込まれる。足元のマレーシア経済はトランプ関税を前に頭打ちの様相を強めており、公共投資や家計消費が下支え役となるも、公的債務の状況に鑑みれば財政政策の対応余地は限られる。さらに、中国からの安価な輸入品拡大によるデフレ圧力や価格競争の激化も懸念される。トランプ関税のさらなる強化に加え、米中摩擦の激化の余波も重なり、マレーシア経済の見通しは一段と厳しさを増す展開となることは避けられそうにない。
足元の世界経済と国際金融市場は、米トランプ政権の関税政策を巡る不透明感に揺さぶられている。米トランプ政権は、すべての国に一律10%の関税を課すとともに、一部の国には付加価値税(VAT)、為替政策、規制などの非関税障壁に応じて税率を上乗せする相互関税を賦課する方針を示した。今月初めには一律部分に加え、上乗せ部分も一旦発動させたが、直後に中国以外に対する上乗せ分を90日間延期するなど、政策は二転三転している。マレーシアの対米輸出額は名目GDP比で1割に達しており、米トランプ政権は同国への相互関税率を24%としている。仮に相互関税がすべて発動されれば、実体経済に深刻な悪影響が生じることは避けられない。こうした中、中国の習近平国家主席は同国を含むASEAN(東南アジア諸国連合)3ヶ国を歴訪し、トランプ関税を念頭に保護主義姿勢が強まる状況に抵抗するため団結を呼びかけた。両国の首脳会談では、貿易や観光、鉄道輸送、農業など多岐にわたる計31の協定に調印がなされ、経済協力の加速を図ることで合意した模様である。また、マレーシアは昨年のBRICS首脳会議で加盟を見据えた「パートナー国」となった模様であり、今後は加盟手続きが促進されることも考えられる。他方、ここ数年の同国の輸出をみると、中国経済が勢いを欠くなかで対中輸出は頭打ちする一方、対照的に対米輸出は拡大している。先行きは、トランプ関税により対米輸出に下押し圧力が掛かる一方、米中摩擦が中国経済の足かせとなることに鑑みれば、仮に中国との経済協力が加速したとしても対中輸出の伸びしろは限られるのが実情であろう。同国経済はASEAN内でも輸出依存度が極めて高い国のひとつであるが、外需を取り巻く環境は急速に悪化することは避けられない、

このように、先行きのマレーシア経済を取り巻く環境は厳しさ増すことは避けられないなか、昨年末にかけての同国景気はトランプ関税を前にすでにブレーキが掛かる動きが確認されるなど、不透明感が高まることが懸念された。こうしたなか、1-3月の実質GDP成長率(速報値)は前年同期比+4.4%と前期(同+5.0%)から鈍化しており、丸1年ぶりの伸びとなるなど頭打ちの様相を強めている。なお、前期比年率ベースの成長率は+3.01%と前期(同▲4.45%)から2四半期ぶりのプラス成長に転じたと試算されるなどリセッション(景気後退局面)入りは避けられているものの、勢いを欠いている。分野ごとの生産動向も、昨年末にかけて生産が大きく上振れした鉱業部門が反動により下振れしている。一方、トランプ関税を前にした駆け込み輸出の動きを反映して製造業の生産が押し上げられているほか、農林漁業関連の生産は大きく上振れしており、足元の景気を下支えしている。また、公共投資の進捗を反映して建設業の生産も拡大に転じるとともに、家計消費の底堅さを追い風にサービス業の生産も拡大しているものの、全般的には力強さを欠く推移をみせている。

上述したように、先行きは外需に不透明感が高まるなか、景気下支えに向けて財政政策への依存度が高まることが予想される。しかし、同国の公的債務残高はコロナ禍を経て急上昇しており、足元では法定上限(GDP比65%)に限りなく近づいていると試算されるため、財政政策に依存することのハードルは高まっている。アンワル政権は、今年度予算の歳出規模を過去最大とするなど景気下支えに注力する一方、増税や燃料補助金の削減などにより財政赤字の圧縮を図る方針を掲げている。足元のインフレ率は比較的落ち着いた推移をみせているが、政府が予算に盛り込んだ燃料補助金の廃止に加え、最低賃金の大幅引き上げも実施されるなど、今後は物価の押し上げ圧力が強まることが予想される。こうした事情も影響して、中銀は先月の定例会合でも政策金利を据え置くなど『様子見姿勢』を維持する対応をみせており(注1)、政策対応余力が限られていることを示唆している。さらに、中国との経済協力の加速により投資が拡大する背後で中国からの輸入が拡大するほか、安い中国製品の輸入拡大による『デフレの輸出』を通じて製造業などは厳しい価格競争に晒される事態も考えられる。政府と中銀は今年の経済成長率見通しを+4.5~5.5%としているが、トランプ関税や米中摩擦の激化など外部環境は一段と厳しさを増していることに鑑みれば大幅な下方修正は避けられない。米トランプ政権は同国の主力産業である半導体など電子部品に対する追加関税を検討しているとされ、一段と下押し圧力が強まる可能性にも留意する必要がある。

注1 3月6日付レポート「マレーシア中銀は様子見継続、財政、金融政策の対応余地は乏しい」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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