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- ドイツの財政転換は実現するか?
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- ドイツで次期政権発足を目指す二大政党は、国防費の増額やインフラ投資の拡大に向け、旧議会での憲法改正というウルトラCに着手した。憲法改正には上下両院で3分の2以上の賛成が必要。下院で環境政党の協力が得られるか、州代表で構成される上院審議の行方、憲法裁判所による司法判断など、残されたハードルは少なくない。25日の新議会招集までに憲法改正が実現するか、ぎりぎりの折衝が続けられている。
ドイツでは次期政権発足を目指す中道右派政党「キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)」と中道左派政党「社会民主党(SPD)」の二大政党が、国防費の増額やインフラ投資の拡大に向けて、①総額5000億ユーロの特別投資基金を創設する、②GDP比で1%を超える国防費を債務ブレーキ(財政均衡規定)の対象から除外する、③債務ブレーキが定める州・地方政府の借り入れ上限をGDP比で0.35%に引き上げる財政政策の転換を進めている。こうした見直しは憲法改正に当たり、上下両院で3分の2以上の賛成が必要となる。2月23日の連邦議会選挙を受け、3月25日に召集予定の新議会では、債務ブレーキの改正に反対する極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」、債務ブレーキの改正には賛成するが、国防費の増額に反対する極左政党「左翼党(Linke)」が3分の1以上の議席を持ち、賛成を取り付けることが困難になる。そこで改選前の旧議会を緊急招集し、新議会の招集までに憲法改正を終えるスピード審議を進めている。
二大政党は暫定政権の一員である環境政党「緑の党(Grünen)」の協力が得られると考えていたが、ここにきて同党が難色を示している。憲法改正には緑の党の協力が必要にもかかわらず、二大政党から改正内容についての事前説明がなかったことに、党内からは苛立ちの声も広がっている。特別基金の用途にグリーン関連投資を盛り込むことや、サイバーセキュリティ対策なども国防費に含め、債務ブレーキの対象から除外する国防費を二党合意案のGDP比1%超から同1.5%超に引き上げることを求めている。また、二党合意案を基金創設と債務ブレーキ見直しの2つに切り離し、旧議会では債務ブレーキの見直しのみに着手し、基金創設については新議会で改めて協議することを提案している。緑の党は、二党合意案が両党の公約実現に向けて、国防費やインフラ投資など以外の一般歳出を拡大する隠れ蓑になることを警戒している。
次期首相就任が確実視される「キリスト教民主同盟(CDU)」のメルツ党首は13日の初回審議の場で、民間防衛やインテリジェンス関連支出も国防費に含めること、特別基金の用途にグリーン投資を盛り込むこと、創設する特別基金のうち最大500億ユーロを気候変動基金に移管することを認める譲歩案を提示したが、緑の党はこれを拒否した。これは18日に予定される改正案の最終採決に向けて、更なる譲歩を引き出す狙いがあると考えられる。ただ、インフラやグリーン関連の基金創設と債務ブレーキ見直しの譲歩案は、緑の党が選挙公約で掲げていた内容に近い。次期政権で下野することがほぼ確実な緑の党は、今回の改正案を通じて自党の政策要求を今後の政権運営に最大限反映させることを目指しているのだろう。国内世論が債務ブレーキの見直し容認に傾くなか、同党の反対で財政政策の転換が頓挫すれば、批判に晒される恐れもある。最終的には改正に賛成する可能性が高いとみている。
債務ブレーキの見直しに向けたハードルは、緑の党の反対だけではない。憲法改正には上下両院ともに3分の2以上の賛成が必要となる。一部の法案審議では、選挙で選ばれた連邦議会(下院)が、州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)に対して優越するが、憲法改正についてはこの限りではない。連邦参議院では各州の代表者に3~6の議席が割り当てられる。連立を組む州は、連立与党の議席配分に応じて州代表が割り当てられるが、州の代表という性質上、同じ州内では投票を一本化する。二党合意案に州・地方政府の借り入れ上限の引き上げが盛り込まれたのは、上院の協力を取り付ける狙いがあったのだろう。ただ、連立を組む州政府内で意見集約が進んでいないケースもみられる。例えば6票を持つバイエルン州では、連邦レベルで次期政権を主導する可能性が高いCDUの姉妹政党「キリスト教社会同盟(CSU)」が州政府運営を主導するが、連立を組む小政党「自由な投票者(FW)」が二党合意案に反対している。
法律上のハードルも残っている。AfDと左翼党は、憲法改正という重大な手続きを退任する旧議会で進めることが、新たに選出された議員の権利を侵害するとして、憲法裁判所に提訴した。最終採決が行われる18日までに、憲法裁判所は司法判断を下す見込みだ。
協案での合意ができない場合、旧議会では債務ブレーキの見直しのみに着手し、基金創設については新議会で改めて協議する形で審議を進める可能性もある。新議会では、債務ブレーキの見直しに反対するAfDと国防費の増額に反対する左翼党が3分の1以上の議席を持つが、国防費の増額につながる改正を旧議会で終えていれば、国防費を資金使途に含めない基金創設や更なる債務ブレーキの見直しでは、左翼党の協力を取り付ける余地が出てくる。
田中 理
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