株高不況 株高不況

半導体は雌伏の時(2025 年1月鉱工業生産)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月43,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう。
  • 日銀は半年に一度の利上げを続け、2026年1月までに政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が▲1.6%、NASDAQが▲2.8%で引け。VIXは21.1へと上昇。

  • 米金利はツイスト・スティープ化。予想インフレ率(10年BEI)は2.360%(▲0.2bp)へと低下。
    実質金利は1.898%(+0.6bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+20.5bpへとプラス幅拡大。

  • 為替はUSDが堅調。USD/JPYは149後半へと上昇。コモディティはWTI原油が70.4㌦(+1.7㌦)へと上昇。銅は9389.5㌦(▲70.5㌦)へと低下。金は2895.9㌦(▲20.9㌦)へと低下。

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注目点

  • 日本の2025年1月鉱工業生産は前月比▲1.1%と3ヶ月連続の減産となった(12月分は確報で▲0.2%へと下方修正)。市場予想(同▲1.1%)に一致、経産省経済解析室の予測値(同▲2.1%)に対しては上回った。自動車など6業種が増産となったものの、生産用機械工業や電子部品・デバイス工業など9業種が減産となり、全体として低下となった。

  • 鉱工業生産全体の方向感を決める自動車工業は、大手メーカーの工場稼働停止によって2024年1-3月期に垂直的落下を経験した後、大幅な振れを伴いつつも回復傾向にあったが、このところ回復が一服している。それでも生産水準は、認証不正問題が表面化する以前の2023年10-12月期をなお下回った状態にある。この間、需要側に大きな問題が発生していないことを踏まえれば、先行きは増産の余地があり、鉱工業生産全体を押し上げる役割が期待される。

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  • 自動車と並ぶ重要産業である半導体関連については、電子部品・デバイス工業が前月比▲5.4%と2ヶ月ぶりに減産。後述するとおり2月以降は増産が見込まれているが、基調的な弱さが認められている。なお熊本工場の生産分が反映されているかは判然としない。また生産用機械に分類される半導体製造装置は同▲19.4%となったが、こちらも2月以降は増産計画となっており、1月が当面の底になる可能性がある。ただし、関連指標の機械受注統計(機種別集計の電子計算機等)に目を転じると、半導体製造装置の引き合いが軟化している可能性が示唆されている。反転増加の持続性は慎重に見ておいた方が良さそうだ。

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  • 2月初旬に実施された生産予測調査に基づけば、製造工業の生産計画は2月が前月比+5.0%、3月が同▲2.0%と均してみれば増産となっている。経産省経済解析室が生産予測指数の上振れバイアスを補正した2月の予測値は同+2.3%の増産となっており、仮にこの通りになれば直近3ヶ月分の減産に対して過半を取り戻すことになる。注目の輸送機械工業の生産計画は2月に同+0.4%となった後、3月は同▲4.1%と慎重。過去数年の世界的供給制約によって積み上がった潜在需要を背景に息の長い増産が期待できるものの、当面は品質確保を優先する動きから生産台数を抑制する状況が残存する模様。一方、北米市場では自動車ローン金利の高止まりにもかかわらず、自動車販売台数が増加基調にあり、当面は輸出の増加が期待できる。

  • 株式市場と関連の深い電子部品・デバイス工業の生産に目を向けると、上述のとおり1月の生産は前月比▲12.3%となり、前年比では+1.0%へと伸び率縮小。もっとも、生産計画は2月に前月比+14.0%となった後、3月も同+3.6%と大幅な増産の計画。電子部品・デバイス工業の出荷と在庫に注目すると、1月は出荷が前年比▲1.8%と4ヶ月連続マイナス圏で推移し、在庫は同▲7.3%へとマイナス幅が縮小したことから、出荷・在庫バランス(両者の前年比差分から算出)+5.6Ptへと低下した。3ヶ月平均でも+11.8Ptと下向きの曲線を描きつつある。ここで長期的に電子部品・デバイス工業の出荷・在庫バランスと、日経平均株価が連動性を有してきたことを再確認したい。株価指数において半導体を直接手掛ける企業の存在感は必ずしも大きくはないが、半導体製造装置や化学品など「広義半導体」で見ればその存在感は大きく、結果的に日本株全体のうねりを作り出す構図があると筆者は理解している。

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  • 先行きの出荷・在庫バランスを見極めるために在庫循環図の位置取りを確認すると、現在は右下領域(在庫減・出荷増)から左下領域(在庫減・出荷減少)へと逆走している。過去の経験則に従えば、今後は出荷増に対応するための在庫積み増しによって右上領域(在庫増・出荷増)に向けて「北上」すると予想されるが、AI向け半導体以外の持ち直しが緩慢であることから、その速度は緩やかなものになる可能性がある。その場合、出荷・在庫バランスは緩やかな低下基調を辿るとみられる。株式市場との関連で言えば、出荷・在庫バランスが上向きに転じている局面は、半導体市況に反転の兆しが見えてきた頃に概ね一致し、関連企業の業績下振れリスクが後退することで、株価は大きく上昇する。まさに相場格言で言うところの「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つ」状況と言える。それに対して出荷・在庫バランスがプラス領域で下り坂に転じている現在の状況は「(強気相場は)楽観の中で成熟し」に近いものがある。ここから出荷・在庫バランスが更に伸びを高める可能性は低いと判断せざるを得ない。株価は前年割れには距離があるものの、この尺度で見る限り、上値を大きく切り上げるとは考えにくい。

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藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。