株高不況 株高不況

工作機械受注が教えてくれる世界経済と日本株(24 年12 月)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000円程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう。
  • 日銀は1月に政策金利を0.50%に引き上げ、25年末までに1.0%への到達を見込む。
  • FEDはFF金利を25年央までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国株は、S&P500が+1.0%、NASDAQが+1.5%で引け。VIXは16.0へと低下。

  • 米金利はベア・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.430%(+0.6bp)へと上昇。
    実質金利は2.192%(+0.7bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+34.0bpへとプラス幅縮小。

  • 為替はUSDが全面高。USD/JPYは156前半へと上昇。コモディティはWTI原油が77.9㌦(▲0.8㌦)へと低下。銅は9190.0㌦(▲40.5㌦)へと低下。金は2748.7㌦(▲2.2㌦)へと低下。

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経済指標

  • 12月米住宅着工件数は前月比+15.8%、年率149.9万件となり、それまでの3ヶ月間の減少を埋めてなお余りある増加を示した。同時に発表された着工許可件数は前月比▲0.7%と微減であったが、均してみれば方向感は上向いている。こうした動きは住宅建設業者の景況感を示すNAHB住宅市場指数の底打ちと概ね整合的であり、住宅着工が大底を打ったことを印象付ける。

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注目点

  • 筆者が定点観測する工作機械受注統計(日本工作機械工業会)は2024年12月に前年比上昇率が加速した。受注増加の足取りは遅々としているが、米国の政策不透明感後退や中国の景気刺激策もあり、生産・投資活動の拡大に期待を繋げる動きになってきた。1月15日に発表された12月の受注額(原数値)は1412億円、前年比伸び率は+11.2%と3ヶ月連続でプラス圏推移。筆者作成の季節調整値は前月比+14.7%と急増し、3ヶ月平均値でも+6.1%へと伸びを高めた。これが基調的な増加であるかは予断を許さないが、下値固めの様相を呈してきたことは事実。単月の内訳は「国内向け」が季節調整済み前月比+12.3%となり、前年比でも+4.4%と2ヶ月連続でプラス圏確保。「外需」は前月比+15.6%と2ヶ月ぶりに増加し、前年比でも+14.1%とはっきりとプラス幅が拡大した。

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  • 日本の工作機械受注は、そのサイクルがグローバル製造業PMIやアナリストの業績予想(TOPIX予想EPS)と連動性を有する。グローバル製造業PMIは2024年12月に49.6へと0.4pt低下したものの、50近傍を維持しており、2024年夏場の停滞から抜け出しつつあるようにみえる。地域別では自動車生産の回復が進む日本が49.6と50を視界に入れた水準で推移している他、IT関連財の生産集積地である台湾は52.7へと上昇して9ヶ月連続で50超を維持。他方、韓国は49.0へと1.6pt低下した。中国も50.5へと低下したものの、3ヶ月連続で50超を維持した。そうした動きと整合的に12月の中国の鉱工業生産は前年比+6.2%へと加速し、年初来前年比でも+5.8%と堅調な伸びを示した。固定資産投資は前年比+3.2%となお力強さを欠くものの、全体として生産活動は下げ止まりつつあるようにみえる。IT関連財に限らず広範な製品の内製化が進んでいることに加え、サービス業PMIが52.2と堅調な領域で推移するなど、不動産以外の業種が底堅さを維持していることが製造業を下支えしていると考えられる。米国は49.4へと0.3pt低下した。単月では改善が一服したものの、大統領選通過に伴う政策不透明感の後退によって水準を切り上げている。また米新車販売台数が好調に推移していることから判断すると、自動車の増産が起点となり広範な業種で需要が誘発される可能性もある。他方、ユーロ圏ではドイツが42.5、フランスが41.9と苦境が続いた。政治的混迷が深刻さを増す中、エネルギーコストの高止まりが打撃となり企業活動は停滞している。新車販売台数はコロナ期に生じた断層が埋まる気配が感じられない。

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  • 先行きは欧米中銀の利下げや中国の経済対策による政策効果の発現が期待される。利下げが所期の効果を発揮すれば、住宅や自動車の販売回復を通じて世界経済を下支えするだろう。中国は不動産市場が直ちに快方に向かうとは考えにくいものの、一連の景気刺激策は少なくとも短期的には中国経済に恩恵を及ぼすと期待される。そうした下で日本企業の業績予想(TOPIX予想EPS)は円安や資本効率の改善にも支えられ、はっきりとしたプラス圏にある。

  • 工作機械受注サイクルの位置取りを確認するために、縦軸に受注額の水準(36ヶ月平均値からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、最新値は右下局面(低水準・伸び率プラス)を上方向に進んでいる。過去の経験則に従うなら今後は右方向へ進んだ後、上向き方向に進路をとると予想される。

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  • その点、円安と地政学的リスクに対応したサプライチェーン再構築の動きが相俟って、国内の設備投資加速が望まれる。日本企業は成長の源泉を海外に求め、海外現地生産を加速させたり、M&Aに資金を振り分けたりするなどしてきた結果、国内の設備投資は停滞した。2000年を起点にすると対外直接投資残高は2023年までに9.5倍、国内企業設備残高は1.2倍と大きな乖離が生じている。米中の経済的分断が深刻化する懸念は一段と高まっているが、それはサプライチェーン再構築の需要を誘発する可能性もあり、リスクは必ずしも下向きではない。日本や米国、欧州における半導体工場の新設もその一環と見做すことができる。そうした下、株価は既に上昇しているが、工作機械受注を見る限り梯子を外されるリスクは和らいでいると判断される。

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本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。