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オーストリアで極右排除の連立協議が決裂

~極右政権誕生に近づく~

田中 理

要旨
  • 昨年9月の総選挙で極右政党・自由党が第一党となったオーストリアでは、極右を除く3党による連立協議が行われてきたが、年明け直後に決裂。連立協議を率いてきたネーハーマー首相が首相並びに中道右派の国民党党首の辞任を発表。国民党の後継党首は自由党が主導する連立協議に応じる姿勢を示しており、オーストリアでも極右政権が誕生する可能性が高まった。新たな連立協議が不調に終わった場合も、選挙後の世論調査で自由党が4割近くまで支持を伸ばしている。再選挙となった場合、自由党が更に議席を上積みし、同党抜きの連立は益々困難になりつつある。

2025年の欧州のレポート第一弾は、残念ながら明るいニュースではない。昨年9月末の国民議会選挙で極右政党・自由党(FPÖ)が第一党となったオーストリアでは、キックル党首が率いる自由党との連立を残りの政党が拒んだ結果、中道右派の国民党(ÖVP)、中道左派の社会民主党(SPÖ)、リベラル政党の新オーストリア自由フォーラム(NEOS)が政権発足に向けて連立協議を続けてきた(図表1)。ところが、年明け早々の3日、NEOSが連立協議を打ち切ることを表明。続く4日に、組閣要請を受けていたネーハーマー首相が、主要政策を巡る意見不一致から連立協議が決裂したことを表明し、首相並びに国民党の党首を辞任する意向を伝えた。ネーハーマー首相によれば、社会民主党の急進勢力が連立交渉で優位に立ち、国民党としては社会民主党が提案する経済計画を受け入れることが出来なかったと伝えている。自由党を連立相手から除外する限り、NEOSの代わりに環境政党・緑の党が連立に加わったとしても、国民党と社会民主党が手を組む以外に過半数に届く連立の組み合わせはない。

図表
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社会民主党を率いるバブラー党首は、連立協議を打ち切った国民党の決断を遺憾であると述べるとともに、国民党の後継党首が自由党との連立に傾く危険性があると警笛を鳴らしている。自由党はナチス関係者などが第二次世界大戦後に結党した政党で、反移民、反イスラム、EU批判、親ロシア、反ウクライナ支援の立場を取る。キックル氏は自らを「国民の首相」と呼び、オーストリアの自由、安全、繁栄、平和を取り戻すと訴え、有権者の支持を集めた。ネーハーマー首相は陰謀論者であるとしてキックル氏が率いる自由党との連立を否定するが、両党は過去に連立を組んだ経験がある。キックル氏は党首辞任を否定し、自由党が連立を主導する場合、自身が首相に就任すると主張する。国民党は5日、ストッカー事務局長を暫定的な党首に選出した。同氏は従来、自由党との連立を否定するネーハーマー首相の立場に同調してきたが、暫定党首就任後に発言を撤回。最多得票を得た政党が連立協議を主導すべきであるとし、自由党が率いる連立協議に応じる方針を示唆している。自由党と国民党との2党が連立を結べば、議会の過半数を上回る。首相の任命権を持つファン・デア・ベレン大統領は、総選挙後にキックル氏が連立協議を主導することを否定していたが、6日にキックル氏と面会する。自由党に連立協議を主導するように要請する公算が大きい。

自由党と国民党による新たな連立協議が不調に終われば、再選挙となる可能性が高まる。昨年9月の選挙後、国民党の支持率が急落しており、自由党に一段と支持を奪われている(図表2)。議会選挙で28.8%の支持を集めた自由党は、最近の世論調査で30%台後半の支持を集めている。このままの勢いで再選挙となれば、自由党は単独過半数にこそ届かないが、定数183の国民議会で70議席前後を固める可能性がある。自由党を排除して議会の過半数を確保するには、今回と同様に国民党と社会民主党の二大政党に加え、NEOSか緑の党が連立に加わる必要がある。自由党が議席を上積みする結果、自由党を除く4党による連立が必要になる可能性も出てくる。連立協議は今回以上に難しくなる恐れがある。連立協議が再び不調に終われば、4割近くの支持を集める自由党を排除すること自体が有権者の批判に晒される恐れが高まる。極右排除は益々困難となりつつある。

図表
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以上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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