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ドイツ政局の今後の展開

~年内に信任投票、来年早々の総選挙も~

田中 理

要旨
  • 連立が崩壊したドイツでは、野党勢が早期の解散・総選挙を求めており、年内にショルツ政権の信任投票が行われる可能性が高まっている。連立崩壊後の各党の支持率調査に大きな変化はない。最大野党の保守政党が政権を奪還するとみられるが、単独での過半数獲得は困難。極右政党との連立を否定しており、連立の組み合わせとしては、現政権を率いる中道左派政党との「大連立」、環境政党との「黒緑連立」、両党が参加する「ケニア連立」が考えられる。

経済・財政運営を巡る意見不一致で連立政権が崩壊したドイツでは、ショルツ首相が来年1月15日の内閣信任投票を示唆したのに対して、野党勢は早期の信任投票実施を求めている。ショルツ首相としては、重要な立法作業を優先することで責任ある指導者であることを有権者にアピールするとともに、連立崩壊による政治的な打撃を和らげ、低迷する与党の支持回復に向けた時間を稼ぐ狙いがあるのだろう。だが、世論の多くは早期の解散・総選挙を求めており、ショルツ首相は10日、権力の座に固執している訳ではないとし、年内の信任投票実施を受け入れる意向を示唆している。但し、野党勢が即時の信任投票実施を求めているのに対し、与党側は重要立法作業を終えたうえでクリスマス前の信任投票実施をひとまず念頭に置いているようだ。

ドイツには首相発議の信任投票以外にも、野党発議による建設的不信任という制度がある。後者の手続きでは、不信任案が可決された場合も、議会の過半数の支持で新しい首相を選出しない限り、現首相が続投する。これは第二次世界大戦前のワイマール共和国下のドイツで、首相更迭後に後継首相が決まらない事態が多発し、ナチス台頭につながる議会を迂回した政治決定につながった歴史的な反省に基づく。連立崩壊で野党の総議席数が過半数を上回る状況だが、極右や極左を含む野党勢が後継首相候補の一本化でまとまる可能性は低い。結局、信任投票の実施有無や実施時期の判断は首相が握っている。

連立崩壊で少数与党となったショルツ政権が信任投票を乗り切る可能性は低い。信任投票の敗北後、大統領が21日以内に連邦議会の解散を決断し、解散から60日以内に総選挙が行われる。信任投票の年内実施で来年1月にも総選挙が実施されるとの見方も一部で浮上している。向こう1・2週間中に信任投票が実施された場合には年明け早々の選挙日程も不可能ではないが、信任投票が12月にずれ込んだ場合、クリスマス休暇中の選挙準備作業が滞ることもあり、1月の総選挙実施の日程はタイトとなる。議会の解散権を持つシュタインマイヤー大統領は、最大与党で閣僚や要職を歴任した元政治家だが、あからさまな党利党略で動く可能性は低いものの、選挙日程で多少の配慮をすることも考えられなくはない。

連立崩壊後の政党支持率に大きな変化はみられないが、緑の党、FDP、AfDが僅かに支持を伸ばしている。連立与党の支持は、ショルツ首相が率いる中道左派「社会民主党(SPD)」が16%前後、連立パートナーの環境政党「緑の党(Grüne)」が11%前後、連立を離脱したリベラル政党「自由民主党(FDP)」は議席獲得に必要な5%前後で低迷する(図表1)。最大与党の保守政党「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」が32%前後でリードするが、単独過半数には届かない。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が19%前後でSPDと第2党の座を争い、旧東ドイツの支配政党の流れを汲む極左政党「左翼党(Linke)」は3%前後で議席を獲得できない可能性が高い。左翼党の有力政治家が結党した新興左派政党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」が7%程度の支持を集めそうだ。

(図表1)ドイツ政党別の得票率と支持率
(図表1)ドイツ政党別の得票率と支持率

主要政党はAfDとの連立や閣外協力を否定しており、選挙結果が最近の世論調査に沿った内容となった場合、議会の過半数に届きそうな連立の組み合わせは多くない(図表2)。最大政党に復帰するCDU・CSUが主導し、①SPDとの間で「大連立」を組むか、②緑の党と「黒緑連立」を組むか、③2党で過半数に届かない場合、SPDと緑の党と「ケニア連立」(参加政党のイメージカラーがケニアの国旗の色と似ている)を組むかが考えられる。FDPが議席獲得に必要な5%の得票率に届く場合も、CDU・CSUとの2党では過半数に満たない。今回の連立離脱の経緯を考えても、FDPがSPDや緑の党とともにCDU・CSUが主導する「ドイツ連立」や「ジャマイカ連立」を結成する可能性は低い。9月に旧東ドイツで行われた州議会選挙で躍進したBSWは、州政府の発足に向けた協議で連立候補となっているが、連邦レベルでは支持を上積みしない限り、CDU・CSUとの2党では過半数に届かない。また、第一党の座を明け渡すSPDが、緑の党とBSWとともに左派勢力を総結集する場合も過半数に届かない。ただ、前回の連邦議会選挙では、選挙戦の開始後に各党の支持率が目まぐるしく変動した。今回の連立崩壊、各党の首相候補の発言や動静、景気低迷などが選挙結果にどのような影響を及ぼすかは予断を許さない。

(図表2)ドイツ連立組み合わせ別の得票率と支持率
(図表2)ドイツ連立組み合わせ別の得票率と支持率

CDU・CSUは欧州議会の最大会派に属し、二期目の続投を決めた欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長の出身母体でもある。また、フランスのバルニエ首相の出身政党(共和党)も、欧州議会で同じ会派に属する。ドイツでCDU・CSUが率いる政権が誕生すれば、EU運営でのリーダーシップ発揮や独仏間の連携強化が期待できる。

以上

田中 理


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