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連続利下げに舵を切ったECB

~今後の連続利下げは約束しなかったが・・・~

田中 理

要旨
  • ECBは10月の理事会で25bpの連続利下げを決定。最近の一連の景気指標の下振れと物価指標の軟化を受け、慎重な利下げ姿勢を改めた。先行きの利下げ判断については、特定の政策パスを事前に約束することはせず、データに基づいて理事会毎に判断する姿勢を維持した。データ次第で12月の利下げ見送りや慎重な利下げペースに回帰する可能性を残すが、これまで底堅かったサービス業や雇用情勢にも減速の兆しが広がっており、筆者は12月以降も25bpの連続利下げを継続する展開を予想する。最終的な利下げの到達点は、中立金利とされる2%台前半をいったん想定するが、景気の下振れリスクを考えれば、中立金利を下回る利下げも視野に入る。

欧州中央銀行(ECB)は17日に終わった理事会で、25bpの連続利下げを決定した。ECBはインフレ率の鈍化を受け、6月に約5年振りに利下げを開始した後、翌7月は十分なデータが揃っていないことを理由に政策金利を据え置き、経済指標や金融環境などを精査したうえで翌9月に追加利下げを決定した。こうしたECBの慎重な利下げ姿勢やインフレ再加速への警戒トーンを反映する形で、当初、多くの市場参加者は、景気・物価動向を詳細に点検するスタッフ見通しの発表月(3・6・9・12月)に合わせて、四半期に1回程度の利下げを継続するとみていた。だが、9月後半から10月初旬にかけて発表された一連の景気・物価指標でそうした見方は一変し、筆者も今回の理事会に先駆けて次回の利下げ見通しを12月から10月に変更していた。

なかでもECBと市場参加者の景気・物価認識の再考を促したのは、ユーロ圏の購買担当者指数(PMI)と統一基準・消費者物価指数(HICP)とみられ、ラガルド総裁も理事会後の記者会見でしばしばこの2指標に言及した。9月のユーロ圏のPMIは、製造業の業況低迷が一段と加速するなか、これまで底堅く推移していたサービス業の業況改善にも翳りがみられ、製造業とサービス業を合成した指数で7ヶ月振りに好不況の分岐点である50を割り込んだ。パリ五輪特需や夏季休暇時期の旅行需要の盛り上がりが剥落したことを考慮しても、指数の落ち込みは顕著で、足許の景気が急速に冷え込んでいることが示唆される。また、9月のユーロ圏のHICPの前年比上昇率は、39ヶ月振りにECBが中期的な物価安定と定義する2%を割り込んだ。エネルギー価格の再下落がヘッドラインの上昇率鈍化の主因だが、高止まりが続いてきたサービス物価も僅かに水準を切り下げている。両指数はその後に発表された確報値で、PMIが上方修正、HICPが下方修正されたが、上述の基本認識を大きく覆すものではなかった。ECBは事前に幅広く予想されていた通り、従来の慎重な利下げ方針を改め、連続利下げを決定した。

ECBは今回の利下げ決定が、インフレ見通し、基調的なインフレ動態、金融政策の伝達の強さに関する最新の評価に基づくものであると説明した。なお、ラガルド総裁によれば、25bpの利下げ決定は全会一致によるものだった。インフレに関する新たな情報は、ディスインフレのプロセスが順調に進んでいることを示唆しており、最近の経済活動に関する指標が予想以上に下振れしていることもインフレ見通しに影響したと述べている。ECBは向こう数ヶ月のインフレ率がいったん再加速した後、来年中には目標値に向かって低下すると予想している。また、賃金の高止まりが続いているものの、労働コストの上昇圧力は徐々に緩和を続け、利益成長率が賃金上昇率を部分的に吸収し、インフレ率への影響を緩和するとの認識を示した。

そのうえで、今後の利下げ判断については、従前の通り、事前に特定の政策金利パスを約束することはせず、データに基づいて理事会毎に判断する方針を維持した。また、インフレ率が遅滞なく2%の中期的な目標に復帰することを確実にするために必要な限り、政策金利を十分に抑制的な水準に維持するとの文言を維持した。つまり、今回は連続利下げに切り替えたものの、今後も連続利下げを続けるかどうかについての明言を避けるとともに、引き続きインフレ再加速への警戒を怠らないことを示唆した。とは言え、足許の景気はこれまで底堅さを保ってきたサービス業や雇用情勢にも減速の動きが波及しつつあり、今後、一段とブレーキが掛かる可能性がある。米大統領選挙の結果次第で、貿易摩擦が激化する恐れもある。また、フランスやイタリアなどはEUの財政規律に基づく是正措置を求められているほか、ドイツは財政均衡規定に基づき、財政引き締めが必要な状況にあり、財政面からの景気のサポートは期待できない。足許の賃金上昇は過去の物価高が遅れて反映されたもので、労働需給が緩和に向かうなか、この先、沈静化に向かう可能性が高い。筆者は12月以降も25bp刻みの連続利下げを続けると予想する。最終的な利下げの到達点は、中立金利と目される2%台前半をいったん想定するが、このまま景気が一段と冷え込む場合、中立金利を下回っての利下げ継続も視野に入る。

以上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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