株高不況 株高不況

石破政権でむしろ低金利政策が長く続く

藤代 宏一

  • 9月27日に自民党総裁選で石破氏が勝利した。「高市ラリー」によって前日比903円高で大引けを迎えていた株式市場は石破氏の勝利を受けて反落。日経平均株価先物は米国時間で2000円を超す下落となった。総裁選に出馬した9名の候補者の中で、決選投票に残った石破氏と高市氏の経済政策に対する考え方は両極におり、石破氏は「財政規律重視、金融緩和は節度を持って」、高市氏は「拡張的財政政策が必要、金融緩和は積極的に」という具合であった。決選投票に進んだ時点で高市氏の勝利を見込み、円安株高で反応した金融市場の動きはコンセンサス・トレードであった。

  • もっとも、石破氏は金曜から日曜にかけて登場した複数のテレビ番組(テレビ東京、フジテレビ、NHK)で、賃上げに成功しつつある岸田内閣の経済政策を基本的に引き継ぐと強調。金融所得課税については「貯蓄から投資の流れは決して止めてはならない」とした。また金融政策に関しては「緩和の方向性は維持しなければならない」、「金融政策は日銀に任せる」という趣旨の発言を繰り返した。石破氏の勝利直後には、日銀の早期利上げが一部の海外投資家の間で意識され、「10月会合の利上げも」などといった憶測もあったようだが、そもそも石破氏は金融政策に対する強いこだわりがない、というのが市場関係者の平均的な見方であろう。

  • とはいえ、石破氏の勝利後に円高が進行したのは事実。海外投資家の日本株売却に伴う為替ヘッジ解消(円買い)に加え、石破政権の下で日銀が利上げを進めるとの思惑が生じたものと思われる。その点、筆者は緩和に積極的でない政権が誕生した方が、利上げは緩やかになるとみている。この金曜からの動きがそうであるように円安が抑制され、輸入物価に下押し圧力が加わることで、日銀は物価の基調を見極める際の「時間的余裕」が増す。特にこのところの日銀は為替従属の色彩を強めているので、円高になれば利上げを待つ時間が増えると考えられる。仮に高市氏が総裁に選出されていた場合、日銀に緩和を続けるよう圧力をかけるのは必至であった。その場合、円安が急加速し、輸入物価の上振れリスクが高まることで、寧ろ利上げに追い込まれる可能性が高まっていたのではないか。USD/JPYが再び160円を超すような事態となれば、日銀は(政権からの圧力があっても)追加利上げに踏み切っていたと思われる。今回の総裁選は、過度な円安が遠のくことで、低金利政策が長く続く結果をもたらしたと筆者は考えている。

藤代 宏一


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