株高不況 株高不況

工作機械受注が教えてくれる世界経済と日本株(24 年8 月)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000程度で推移するだろう。

  • USD/JPYは先行き12ヶ月145程度で推移するだろう。

  • 日銀は12月に政策金利を0.50%に引き上げ、25年末までに1.0%への到達を見込む。

  • FEDはFF金利を25年末までに3.50%、26年末までに3.00%まで引き下げるだろう。

目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+0.3%、NASDAQは+0.1%で引け。VIXは15.9へと低下。

  • 米金利はブル・スティープ化。予想インフレ率(10年BEI)は2.167%(+1.3bp)へと上昇。
    実質金利は1.583%(▲0.4bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+16.0bpへとプラス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは143後半へと上昇。コモディティはWTI原油が70.4㌦(▲1.6㌦)へと低下。銅は9548.5㌦(+72.0㌦)へと上昇。金は2628.6㌦(+6.2㌦)へと上昇。

米国イールドカーブ
米国イールドカーブ

米国イールドカーブ(前日差)
米国イールドカーブ(前日差)

米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国長短金利差(2年10年)
米国長短金利差(2年10年)

注目点

  • 8月の工作機械受注統計(日本工作機械工業会)は、単月の数値は期待外れであったが、大きくみれば生産・投資活動の拡大に期待を繋げる動きとなっている。8月の受注額(原数値)は1107億円、前年比伸び率は▲3.5%へとマイナス圏に押し戻された。筆者作成の季節調整値でみても8月は前月比▲7.6%と弱く、3ヶ月平均値でも▲1.9%と下を向いた。単月の内訳は「国内向け」の季節調整済み前月比が▲6.1%、前年比でも▲9.9%と弱さが残存。「外需」は前月比で▲8.2%、前年比では▲0.6%と突発的な弱さが観測された。8月の弱さは営業日要因など統計の技術的問題によって弱さが誇張されている可能性があり、額面通りに受け止める必要はないと思われる。もっとも、9月も弱さが続くようだとサイクル好転に黄色信号が灯る。

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注(内訳)
工作機械受注(内訳)

日本の工作機械受注は、そのサイクルがグローバル製造業PMIやアナリストの業績予想(TOPIX予想EPS)と連動性を有する。グローバル製造業PMIは8月に49.5となり2ヶ月連続で50を下回った。地域別では自動車生産の回復が進捗する日本が49.8と50に近付いた他、旺盛なEV需要を背景に中国も50.4と底堅かった。またIT関連財の生産集積地である韓国は51.9へと水準を切り上げ4ヶ月連続で50超を記録、台湾も51.5と5ヶ月連続で50超を維持した。その反面、ユーロ圏ではドイツが42.4、フランスが43.9と苦境が続き、米国は47.9へと不可解なほど弱い水準に落ち込んだ。6月までの6ヶ月間においてグローバル製造業PMIは50を超えて推移してきたが、ここへ来て世界の生産活動は再び鈍化している公算が大きい。もっとも、先行きは、利下げの景気浮揚効果が期待される米国で持ち直しが期待される。利下げが所期の効果を発揮すれば、住宅や自動車の販売回復を通じて世界経済を下支えするだろう。こうした下で日本企業の業績予想(TOPIX予想EPS)は資本効率の改善にも支えられ、上向きの曲線を描いている。今後、IT関連財市況の拡大がより明確化してくればその傾きは急になるだろう。

工作機械受注・グローバル製造業PMI
工作機械受注・グローバル製造業PMI

工作機械受注・予想EPS
工作機械受注・予想EPS

中国自動車販売台数
中国自動車販売台数

  • 工作機械受注サイクルの位置取りを確認するために縦軸に受注額の水準(36ヶ月平均値からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、最新値は右下局面(低水準・伸び率プラス)にある。左下局面(低水準・伸び率マイナス)からは脱却したものの、右上方向への動きは足踏みしており、これは(受注残高の)谷底の底辺が長いことを意味する。過去の経験則に従うなら今後は右方向へ推移した後、徐々に上向きの進路をとると予想される。

  • その点、国内の設備投資計画は心強い。日銀短観(6月調査、全規模・全産業)によれば設備投資計画は2024年度に前年度比+8.4%と強気な見通しが示されており、この強さは10月1日発表予定の9月調査でも引き継がれるだろう(例年のパターンなら上方修正される公算大)。海外では、米中の経済的分断が設備投資を抑制する懸念はあるが、それに伴うサプライチェーン再構築の需要が発現する可能性もあり、リスクは必ずしも下向きではない。日本や米国、欧州における半導体工場の新設もその一環と見做すことができるだろう。そうした下、株価はAI向け半導体需要の波及効果、資本効率の改善に対する期待などから既に上昇しているが、工作機械受注を見る限り梯子を外されるリスクは和らいでいると判断される。

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注・TOPIX機械
工作機械受注・TOPIX機械

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。