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BOEは追加利下げを見送り

~ややタカ派的な据え置き~

田中 理

要旨
  • 8月に利下げを開始したBOEは9月の追加利下げを見送った。前回MPC後に発表された経済データは限定的なうえ、サービス物価の高止まりが続いており(8月は変動の大きい航空運賃を中心に加速)、慎重な利下げ継続の方針を見直す必要性は見当たらない。ハト派のラムスデン委員が据え置き支持に回り、今回の利下げ見送りは8対1の賛成多数で決定された。政権交代後で初の秋季予算や米大統領選で景気・物価シナリオの大幅な見直しが必要にならない限り、四半期に1回の金融政策レポートの発表月(2、5、8、11月)に合わせて、25bp刻みの利下げを続けるのが基本シナリオとなろう。

前回8月の政策委員会(MPC)で約4年半振りに利下げを開始した英イングランド銀行(BOE)は19日、前日に終わった政策委員会(MPC)の結果を発表し、8対1の賛成多数で政策金利を5.0%に据え置いた。8月以前から利下げを主張していたディングラ委員とラムスデン委員のうち、ラムスデン委員が据え置き支持に回り、反対票を投じたのは25bpの追加利下げを主張した最ハト派のディングラ委員のみだった。今回から新たにMPCメンバーに加わったテイラー委員は、多数派と同じく据え置きに投票した。

前回の利下げは5対4の僅差で決まり、その後に発表された英国の経済指標は区々で、景気・物価判断の変更を促す新たな情報が確認されていないほか、MPCメンバーのハト派傾斜を示唆する発言もなく、今回の追加利下げ見送りに驚きはない。議事要旨では、月次指標の推移から判断して、7~9月期の成長率が下振れする可能性を認めたが、同時にこれは年前半の成長が上振れし、実勢に向けた減速であるとの認識を示唆した。また、サービス物価の高止まりが続いている点を引き続き懸念している。BOEが基調的な物価動向を判断するうえで最近注目する「物価に連動する費目や変動が大きい費目を除いた季節調整済みサービス物価の年率換算値は、8月までの3ヶ月間の平均値で4%程度と、2023年末の平均水準に近い水準にある」としている。但し、18日に発表された8月の消費者物価では、エネルギー価格が“前年の裏”で下振れした一方で、変動が大きい航空運賃が大幅に加速し、コア物価を押し上げた。8月のコア物価を押し上げた航空運賃は来月以降、下押しに転じる公算が大きい。また、賃金は引き続き高水準にあるが、BOEが英国企業を対象に実施するサーベイなどによれば、先行きの鈍化が示唆されるとしている。

金融政策スタンスの判断については、「インフレ率が中期的に2%の目標まで持続的に復帰するリスクがさらに解消するまで、十分な期間、引き締め的な政策を継続する必要がある。委員会はインフレが持続するリスクを注意深く監視し続け、各会合で金融政策の適切な引き締め度合いを決定する」との従来の文言を維持したうえで、「事態に重大な進展がなければ、引き締め的な政策を段階的に緩和するアプローチが正当化される」としている。なお、8月の消費者物価でサービス物価が上振れしたこともあり、前回の議事要旨にあった「インフレが持続するリスクの緩和に一定の進展があった」との文言が削除された。

米連邦準備理事会(FRB)による50bpの大幅利下げの直後だったが、BOEに追加利下げを急ぐ様子はみられない。景気や物価を取り巻く環境に大きな変化が見られない限り、四半期に1回の金融政策レポートの発表月(2、5、8、11月)に合わせて、25bp刻みの利下げを続けるのが基本シナリオとなろう。当面の景気・物価シナリオに大きな影響を与え得るイベントとしては、政権交代後で初となる10月30日の秋季予算発表と11月5日の米大統領選挙が考えられる。財政運営や通商環境を巡るシナリオの想定が大きく崩れない限り、11月7日に結果が発表される次回MPCでは、25bpの追加利下げが決定される可能性が高い。

なお、今回のMPCでは、10月から向こう1年間の量的引き締め(QT)の方針が発表され、9月末までの過去1年と同様に年間1000億ポンドの国債保有を減額することが示された。満期償還を迎えるBOEの保有国債(パッシブな国債減額)が過去1年の500億ポンドから向こう1年は870億ポンドに増加することが見込まれ、満期前の国債売却(アクティブな国債減額)は500億ポンドから130億ポンドに縮小する。今後も段階的且つ予測可能な方法で量的引き締めを進めるとしており、国債市場の動揺は回避されよう。

以 上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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