- 要旨
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- 日経平均株価は先行き12ヶ月42,000程度で推移するだろう。
- USD/JPYは先行き12ヶ月150程度で推移するだろう。
- 日銀は12月に政策金利を0.50%に引き上げ、25年末までに1.0%への到達を見込む。
- FEDは9月に利下げを開始、FF金利は25年末に4.00%(幅上限)への低下を見込む。
金融市場
- 前日の米国市場は休場。為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは147近傍へと上昇。
注目点
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思い返せば2021年の総裁選は4名(岸田氏、河野氏、高市氏、野田氏)の候補者の内、3名(岸田氏、河野氏、高市氏)が金融所得の課税強化に言及し、株式市場は神経質となっていた。岸田首相は「令和版所得倍増計画」と称した政策パッケージの実行にあたって、いわゆる「1億円の壁」の是正が必要であるとして金融所得課税の強化を公約に掲げていた。「1億円の壁」とは、株式の譲渡所得等にかかる税率が一律20%(申告分離課税)であることから、高額の株式譲渡所得等を計上する富裕層の税負担率が1億円を境に低下していく現象であり、この解消を通じて格差縮小に繋げていくとの構想であった。しかしながら、首相就任後、株式市場で金融所得課税の強化などアベノミクス路線の修正に対する警戒感が燻ぶる中、株価が下落し、それが「岸田ショック」などと揶揄されたことを受け、すぐに同方針を事実上撤回した経緯がある。その後2023年に、所得が30億円を超える超富裕層に対して一定以上の税負担を求める、いわゆる「ミニマム課税」が創設されたことで「1億円の壁」はある程度是正されたが、これを以って課税強化の議論が終わったとは考えにくい。
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翻って2024年自民党総裁選。9月27日の総裁選に立候補している石破元幹事長は9月2日にBS日テレの番組「深層NEWS」で、金融所得課税の強化について「実行したい」と意欲を示し、「(岸田政権で)後退してしまった感がある。お金持ちが外に行ってしまうということで(主張を)抑えたのかもしれない」とした。石破氏は総裁候補として有力視されており、例えば市場関係者111名が回答したQUICK月次調査<債券>の問いでは、次期総裁候補として小泉進次郎元環境相の45%に次ぐ、2位で26%となっている。

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筆者の知る限り、現在のところ石破氏以外に金融所得課税の強化を掲げている候補者はいない。もっとも、総裁選が近づき政策の具体案が発表されていく過程で金融所得課税の強化を掲げる候補者が増していく可能性は高いだろう。2021年の総裁選で、拡張的な財政政策を掲げていた高市氏ですら条件付きで株式譲渡所得の税率引き上げに言及していたことを踏まえると、2021年と同様に株式市場では年末の税制改正大綱発表にかけて、金融所得課税の強化に対する警戒感が高まっていくのではないか。
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金融所得課税の強化は、新NISAが創設されたことで増税の網にかからない層が増していることから、必ずしも増税になるとは限らない。一方で株式投資に対する国民的な関心が高まる中、金融所得課税の強化は「増税色」を強めることを通じて自民党支持率回復の足かせとなる可能性があり、政治的に難しくなっている面もあるだろう。
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実際、小林鷹之氏は9月3日の午前8時に【金融所得増税よりも中間層の金融所得増を】と題した以下のメッセージをX(旧Twitter)に投稿し、金融所得課税の強化に距離を置く構えを示した。「自民党として新NISAの拡充などを進め、多くの中間層が金融所得による所得増の恩恵を得られるよう取り組みを進めてきました。ここで金融所得課税を強化することは、これまでの取り組みに逆行する上、物価高に苦労する中間層に対する増税となりかねず賛同しません。私はむしろ、iDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充など、中間層にさらに金融所得増の恩恵が届く施策を進めていくべきと考えています」
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金融所得課税の取り扱いが総裁選の一つの焦点になりつつある中、今後、小泉氏がどういった見解を示すのか、注目される。実際に課税強化となるかは予断を許さないが、何れにせよ当面の株式市場は金融所得の課税強化に神経質となりそうだ。
藤代 宏一
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