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BOEも利下げを開始

~追加利下げは慎重に判断~

田中 理

要旨
  • BOEは8月のMPCで約4年半振りとなる利下げを決定。決定は5対4の僅差、今回利下げに転向した委員の一部は「利下げ/据え置き」が際どい判断だったことを認めている。最近の物価上振れが一過性の要因によるものか、物価や賃金を取り巻く構造変化の可能性も見極めが必要。同時に発表された金融政策レポートでのインフレ率の最頻値見通しは、年2~3回の利下げを織り込む市場金利を前提とした場合、2026年4~6月期に2%の物価目標を下回り、1.5%程度に収斂すると予想する。追加利下げを見送った場合の景気の腰折れや中期的な物価の下振れリスクにそこまでの切迫感はなく、追加利下げを急ぐ様子はみられない。当面は四半期に1回の金融政策レポートの発表月に合わせて、追加利下げの是非を判断する意向とみられる。

英イングランド銀行(BOE)は1日、前日に終わった政策委員会(MPC)の結果を発表し、5対4の賛成多数で政策金利を5.25%から5.0%に引き下げた。利下げは2020年3月以来、約4年半振りとなる。過去数回のMPCで利下げを主張していたハト派のディングラ委員とラムスデン委員に加えて、これまで金利据え置きを主張してきたベイリー総裁とブリーデン副総裁が利下げ支持に回り、今回のMPCから加わったロンバルデリ副総裁も利下げを主張した。一貫してタカ派のマン委員、ハスケル委員、グリーン委員に加えて、2021年秋の就任以来、ベイリー総裁と同じ投票をしてきたチーフエコノミストを務めるピル委員が据え置きを主張した。

利下げ派の5人の委員は、①過去の外的ショックを通じた影響が和らぎ、インフレが持続するリスクの緩和に一定の進展がみられること、②インフレ期待の正常化が進み、サーベイ調査などフォーワード・ルッキングな指標類が賃金・物価上昇圧力の弱まりを示唆していること、③最近のサービス物価の強さの一部は変動の大きい費目によるものであること、④成長率が想定を上回ったものの、金融政策の引き締め的なスタンスが実体経済を下押しし、労働市場の需給緩和をもたらし、インフレ圧力を押し下げていることを背景に、利下げを主張した。但し、新たに利下げ派に加わった一部の委員は、インフレの持続性が完全に解消した訳ではなく、先行きのインフレに上振れリスクが残っていることを認め、今回の決定が利下げと据え置きの間で際どかったことを認めた。

据え置き派の4人の委員は、①サービス物価と成長率が5月の金融政策レポートの見通し対比で上振れしたことに加えて、賃金の高い伸びが続いており、最頻値見通しが想定する以上に二次効果が賃金や物価決定に大きな影響を及ぼしている、②これまでヘッドラインのインフレ率低下で主要な役割を果たしてきたのは、国際的な食料品やエネルギー価格などの外的要因で、より根本的な国内のインフレ圧力が定着していると指摘し、③均衡失業率の上昇、潜在成長率の低下、中立金利の上昇など、より持続的な構造変化が国内インフレの持続性に寄与するリスクが高く、こうした上昇圧力が現実化しない確証が得られるまでは、現行の政策金利水準を維持することを主張した。

声明文では、「インフレ率が持続的に2%の中期目標に戻るうえのリスクがさらに解消するまで、十分に長い間、金融政策を引き締め的な状態を維持する必要がある」とし、追加利下げの是非については慎重に判断することを示唆、「今後もインフレ持続のリスクを注意深く観察し、会合毎に金融政策の適切な引き締め度合いを決定する」とし、会合毎に判断する方針を示唆した。

今回のMPCに合わせて発表された8月の金融政策レポートでは、政策金利を利下げ後の5.0%に据え置いた場合、2025年10~12月期以降のインフレ率の最頻値見通しが2%の物価目標を下回り、2026年10~12月期以降は1%未満に転落する(図)。年内に1回(以下、0.25%刻みの利下げを想定)、2025年中にさらに3回(合計4回)、2026年中にさらに2回(合計6回)の追加利下げを想定する市場金利を前提とした最頻値見通しでは、インフレ率が2026年4~6月期に2%を下回り、最終的に1.5%程度に収斂する姿が描かれている。こうした見通しからは、2%の物価安定を達成するには、市場予想をやや上回るペースでの利下げが必要であることが示唆される。

ひとまず利下げを開始したBOEだが、今回の決定は5対4の僅差だったうえ、利下げを支持した委員の一部は「利下げ/据え置き」が際どい判断だったことを認めている。最近のサービス物価の上振れが一過性の要因によるものかどうか、物価や賃金を取り巻く構造変化の可能性など、見極めが必要な要素も多い。追加利下げを見送った場合の景気の腰折れや中期的な物価の下振れリスクにそこまでの切迫感がなく、追加利下げを急ぐ様子はみられない。今後の経済指標を見極めつつ、当面は四半期に1回の金融政策レポートの発表月(2・5・8・11月)に合わせて、追加利下げの是非を判断する意向とみられる。

(図)英8月の金融政策レポートのインフレ率見通し
(図)英8月の金融政策レポートのインフレ率見通し

以上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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