株高不況 株高不況

泰平の眠りを覚ます利上げ たった0.25%なら夜は寝られる?

藤代 宏一

日銀は金融政策決定会合で利上げを決定。政策金利(無担保コール翌日物)は+0.25%とされ、2008年12月以来の水準に回帰した。植田総裁が就任して以降、政策変更がある場合は事前(10日程前)に観測記事やリーク報道が相次ぎ、会合直前には大方の内容が判明していることが多かったが、今回は当日の午前2時まで核心的な報道はなかった。15bpの利上げなら実体経済に与える影響は限定的との見方が多い中ではあるが、日銀内部では最後の最後まで議論が続いていたのかもしれない。

利上げの背景説明としては、声明文よりも、同時に発表された参考資料の方が本音に近い印象を受けた。筆者が注目したのは「輸入物価は再び上昇に転じており、先行き、物価が上振れするリスクには注意」という一文がスライド上部(=通常は最も強調したいことが記載される)にあったこと。足もとの輸入物価は契約通貨建てでみれば、さほど上昇していないので、これは事実上、円安を警戒する文章と読み替えることができる。輸入物価上昇が国内に価格転嫁され、家計の実質的な購買力を蝕み、個人消費の停滞に繋がることに対しての警戒感が浮き彫りになっていたように思える。

2024年7月金融政策決定会合での決定内容①:金融市場調整方針の変更
2024年7月金融政策決定会合での決定内容①:金融市場調整方針の変更

長期国債の買入れ方針については現在の5.7兆円を毎四半期4,000億円ずつ減額し、2026年1月以降は3兆円程度に減額する方針が示された。2年後に3兆円というのは概ね事前予想に一致するが、向こう1年程度の減額ペースは予想(4兆円)対比で緩やかであり、この点はハト派的な印象を受けた。予定通りに減額が進捗する場合、名目GDPを600兆円強とすれば、年間での長期国債買い入れ額はGDP比で6%程度に落ち着くことになり、異次元緩和導入以前の状態に近くなる。いわゆる成長通貨(経済成長率見合いで供給する通貨)としての供給という位置付けだろう。

次に展望レポートに目を向けると、物価見通しは2024年度が+2.5%、2025年度が+2.1%、2026年度が1.9%とされた。2024年度が0.3%pt下方修正された一方、2025年度が+0.2%pt上方修正された。主因は政府による電気・ガス代の緊急支援とされており、その他条件は前回の見通しから大きな変化はないと推測される。 

展望レポートの結び、すなわち「金融政策運営」の段落は以下のとおり4月対比でタカ派な表現となった。

「引き続き政策金利を引き上げ」という文言が挿入される一方で「緩和的な金融環境継続すると考えている」という文言が削除されたことには一定の意味があろう。「緩和的な金融環境」が中立金利以下の領域に政策金利を維持することを意味していたのだとすれば、中立金利以上への引き上げも視野に入っている、という含意があると考えるのが自然だろう。中立金利の推計値は相当な幅があるため、雲を掴むような感覚もあるが、民間エコノミストの中心的な推計を参考にすれば、1%超への政策金利引き上げを示唆しているようにもみえる。

なお、筆者の政策金利見通しについては、この後の植田総裁の記者会見等を踏まえて更新する。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。