2024年3月末の個人株主数は前年差+36.2万人の1,525.9万人

~外国人保有比率(時価総額)は31.8%と過去最高、個人は16.9%と下げ止まりの動き~

佐久間 啓

要旨

日本取引所グループ(以下、「JPX」)から「2023年度株式分布状況調査」が公表されている。2023年度に7兆6,906億円と、3年ぶりの買い越しとなった外国人の保有比率(時価総額ベース)は、前年比+1.7ptの31.8%となり、2014年度の31.7%を抜いて過去最高を更新した。 一方、新NISA始動で注目される個人は、2023年度に▲3兆8,165億円と、3年ぶりの売り越しとなり、保有比率も前年差▲0.7ptの16.9%となった。個人は2014年度以降、保有比率16.5%~17.6%の範囲内でほぼ横ばいの動きが続いている。投資信託は同+0.8ptの10.4%。2013年度の4.8%から順調に拡大し、銀行、保険といった金融機関を上回る存在感を示している。また、自社株買いの拡大で、安定的な「買い手」となった事業法人であるが、持合い株式の削減が続いており、同▲0.3ptの19.3%と既往最低を更新している。 株式保有を単元株ベースでみると、外国人が27.2%(前年差+1.6pt)、個人が22.6%(同▲0.1pt)、投資信託が8.4%(同+0.9pt)、事業法人が21.7%(同▲1.3pt)となる。

JPXの投資家別売買動向をみると、2023年度のグロス取引高のうち、個人が26.2%、外国人が66.7%、合わせて92.9%と圧倒的な売買シェアを占めていることが分かる。そこで今回のMarket Side Mirrorでは、「株式分布調査」を中心に、外国人、個人の投資行動を確認し、合わせて、証券保管振替機構(以下、「保振」)のデータから個人投資家の実像を探っていきたい。

なお、「株式分布調査」における投資家属性、保有比率計算方法等の詳細については、JPXのリリース資料を確認いただきたいが、本調査での、「外国人」は“外国法人等”であり、外国法人と外国籍の個人を含んでいる。また、「個人」は“個人・その他”であり、日本国籍を持つ個人及び法人格を持たない国内の団体である。本レポートの文中では、それぞれ外国人、個人と表記して取り扱うので留意いただきたい。

外国人は精密機器、医薬品、電気機器で40%を超える単元株を保有

外国人の業種別保有持株比率(単元株ベース)の状況をみると、2023年度末で外国人保有比率が大きい業種は、精密機器46.0%、医薬品44.7%、電気機器42.8%。逆に低い業種は、空運業14.0%、水産・農林業16.7%、パルプ・紙17.5%となっている。2023年度が3年ぶりの買い越しとなったこともあり、33業種中28業種で保有比率が上昇している。最も上昇したのは海運業の+4.9pt。続いて、医薬品が+4.3pt、その他製品が+4.1pt、証券・商品先物取引業が+3.6ptとなっている。

直近1年の動きは上記のとおりであるが、少し長め、2015年度末の姿と比べると、保有比率が増えたのが17業種、減ったのが16業種と、跛行色が色濃く出ていることがわかる。最も保有比率が増えたのは医薬品の+12.6pt。そして、精密機器が+9.7pt、その他製品が+7.5pt、電気機器が+7.2ptと続いている。減ったのは、鉱業が▲13.6pt、輸送用機器が▲7.4pt、食料品が▲6.5ptとなっている。全体では、この間、主に製造業での持株比率の上昇が目立つが、非製造業でも、卸売+5.7%、サービス業+3.4%、保険+3.1%、と外国人保有持株比率が上昇している業種もある。

外国人 業種別保有比率(単元株ベース)
外国人 業種別保有比率(単元株ベース)

次に、外国人の業種別保有金額比率(時価総額ベース)をみると、電気機器21.2%、化学7.3%、医薬品7.2%、輸送用機器6.9%、と製造業が60.5%、非製造業が39.5%を占める。2023年度末の東証プライム市場の時価総額は製造業が54.0%、非製造業が46.0%なので、外国人の保有は製造業の大幅オーバーウェイトが特徴と言える。

ただ、製造業でも、電気機器は+5.4ptのオーバーウェイト、輸送用機器は▲4.2ptのアンダーウェイト。非製造業種は総じてアンダーウェイトであるが、情報通信のみ若干のオーバーウェイト。先にみたように、このところ持株比率を上げている、卸売、保険も足元ではアンダーウェイトとしている。

外国法人等業種別保有金額vs東証プライム市場
外国法人等業種別保有金額vs東証プライム市場

外国人は、2023年度末、時価総額ベースで31.8%を保有し、単元株ベースで27.2%の議決権を持ち、過去5年のグロス売買シェアが68.4%を占めている。株式市場は、外国人が買うから上がり、売るから下げた、と言われるほど圧倒的な存在感だ。また、足の長いポートフォリオ投資家、様々な取引手法でリターンを稼ぐヘッジファンド、アクティビストと言われる株主還元強化や経営へのコミットメントを求める投資家、等々、多様な投資スタイルを持った投資家が多い投資主体だ。加えて、実に合理的だ。だからこそ、時にネガティブな形容詞を付けて語られたりもするが、日本の株式市場にとっては最大の投資家だ。彼らの、基本的な投資基準や投資判断のポイント、投資行動を知ることは、日本の株式市場参加者にとっても重要だろう。引き続き市場での売買動向や保有持株比率、業種ごとのオーバーウェイト、アンダ-ウェイトの変化には注目していく必要がある。

個人は、安定した業績、安定した配当(累進配当)、株主優待制度充実の業種で高い保有比率

個人の業種別保有持株比率(単元株ベース)の状況をみると、2023年度末で個人保有比率の大きい業種は、空運業48.3%、証券・商品先物取引業28.7%、水産・農林業28.3%。逆に低い業種は、精密機器10.1%、鉱業10.3%、輸送用機器10.5%となっている。外国人の保有比率最下位の空運業が個人の保有比率最上位というのは、個人投資家を象徴しているのかもしれない。航空会社については航空法で外国人の保有規制(上限3分の1)が設けられていること、株主優待制度のある銘柄への個人の選好が相当に強いことが相まって、こうした保有構造になっているものと考えられる。2023年度が3年ぶりの売り越しとなったこともあり、33業種中26業種で保有比率が低下している。上昇(含む横ばい)した7業種は、金属製品、鉄鋼、食品、繊維製品、機械、情報・通信業、鉱業。保有比率の低下は、海運業で▲14.1ptと大きいが、2021年度から2022年度で+12.3ptと大きく上昇した反動(利食いの売却)という面が大きい。

個人についても、2015年度末からの動きをみると、保有比率が増えたのは21業種、減ったのは12業種となっている。増えたのは鉄鋼+8.5pt、食料品+6.7pt、情報・通信+5.4pt、その他金融+5.1pt。それ以外にも増えた業種の上位をみると、安定した業績、配当(累進配当)、魅力的な株主優待制度を備えた企業が多い業種が並ぶ。保有比率を落としている業種は、外国人が保有比率を上げている業種が多い。

個人 業種別保有比率(単元株ベース)
個人 業種別保有比率(単元株ベース)

次に、個人の業種別保有金額比率(時価総額ベース)をみると、外国人とは様子がかなり違う。個人投資家の選好度合いがよくわかるグラフである。

個人・その他 業種別保有金額vs東証プライム市場
個人・その他 業種別保有金額vs東証プライム市場

2024年3月末の個人株主は、1,525.9万人、10年間で230.8万人増加

「株式分布調査」では、個人株主数の集計も行っており、2023年度は前年比+462万人の7,445万人となっている。本調査では株主数の集計においては、株主の名寄せができないため、各上場企業の2023年度中に到来した最終決算期末現在の株主名簿記載者を合算している。つまり一人で5社の株式を保有している場合、本調査では5人とカウントされている。個人株主数が7,445万人と言われても今一つピンとこないのはそういうことだ。

一方、保振では、「株式分布調査」とは集計範囲、集計方法が異なるものの、直近6か月の期間に決算期日又は中間決算期日が到来した銘柄について、それらの銘柄の株主を銘柄横断的に名寄せし、個人と法人に分けて、株主数と銘柄ごとに合算した延べ株主数を月次で公表している。

保振のデータによれば、2024年3月末の個人株主数は、前年から36.2万人増の、1,525.9万人。延べ株主数は8,694.9万人なので、一人当たり5.7社ほどの株を保有している計算になる。総務省のデータでは2024年3月末の15歳以上の人口は10,995万人なので、そのうち13.9%の方がどこかの株主と言うことだ。2014年3月の個人株主数は1,295.1万人だったので、この10年間で230.8万人増加している。投資家別売買動向では、この間、個人は売り越し基調であったが、2014年から(旧)NISA制度も始まり、“株式投資”はジワリジワリと裾野を広げてきたと言えるだろう。

個人株主数
個人株主数

2023年12月末時点での個人株主数は、1,500.3万人。直近では2024年6月末のデータまで公表されている。それによれば、6月末で個人株主数は1,531万人となり、新NISAが始まった2024年1月~6月で+30.7万人だ。前年2023年1月~6月の増加が+14.8万人なので、ほぼ2倍のペースで拡大していることになる。市場環境が良かったこともあるが、やはり新NISAの影響が大きいと言えるだろう。個人の金融資産選択で、「貯蓄から投資へ」は、着実に進んでいる。

2024年6月末、60歳以上が株主数で49.5%、保有金額(時価総額)で69.1%を占める

保振のデータでは、個人株主の年齢別の分布状況も分かる。2024年6月末で、個人株主1,531万人のうち、年齢不詳の208.9万人を除いた1,322.1万人についてみると、30歳未満が6.0%、30代が10.3%、40代が15.1%、50代が19.1%、60代が18.1%、70代が18.0%、80歳以上が13.4%。依然、60歳以上が49.5%と半分を占めているが、2014年3月には、54.1%だったことを考えると、この10年間で株主数が拡大する中、比較的若い世代の株主数が増えていることになる。

一方、年齢別の株式保有金額(時価総額)分布状況をみると、株主数の分布に比べるとだいぶ様子が異なる。60歳以上が占める比率は株主数では49.5%だが、時価総額では69.1%に拡大する。2014年3月時点でも67.5%を占めていたので、ほとんど動いてないということだ。2024年6月の年齢別保有金額を株主数で割った、1株主あたりの保有金額をみると、30歳未満は百万円に届かず、30代で3.4百万円、40代で9.3百万であるが、50代で16.9百万円、60代で23.3百万円、70代で26.3百万円、80歳以上で19.5百万と、50歳以降の保有金額が圧倒的に大きいことが分かる。

株式投資には、単元株制度により、一定の最低投資金額が要求されていることもあり、ある程度、手元にまとまった資金がないと投資しにくい面があるのは事実。また、比較的まとまった資金があれば、銘柄の分散、相場が下げた場合の追加での買入れもやり易い。こうした要因から、株式投資が比較的高年齢層に偏っているということだろう。

投資家別売買動向によれば、個人投資家は、1985年度以降、年度ベースでは売り越しが常態化。買い越しとなったのは、2021年度以前は、1990年度、2008年度の2回のみ。それが2021年度、2022年度と2年度連続で買い越しを記録した。2023年度は3年ぶりに売り越しとなったものの、ようやく、“売り越し当たり前”の世界からは抜け出したように見える。

コーポレート・ガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードの導入に加え、東証の、市場再編に続く「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を強く求める動きもあり、株式市場の質的変化は大きい。そうした中、配当金、自社株買いの拡大もあり、今や東京市場の総還元率「(配当期+自社株買い)/時価総額」は3%を超えている。

そうした市場の変化もあり、個人は、「貯蓄から投資へ」着実に動きだしている。2024年1月からの新NISAは“ブーム”と言ってもいいほど順調過ぎる滑り出しだ。ただ、投資の世界で、参加者全員が笑顔でいられる時間が永遠に続くわけではないのも事実。投資家にとって、市場から資金を引き上げたいような局面も必ず来る。引き続き、市場関係者には、良いときは当然、悪いときも、悪いなりに資金が証券市場に残り、次につながる取組が求められていると言えるだろう。

以上

佐久間 啓


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。