株高不況 株高不況

はがれ始めた粘着インフレ(米6月CPI)

ジャクソンホールは利下げ予告の舞台に?

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月44,000程度で推移するだろう。

  • USD/JPYは先行き12ヶ月150程度で推移するだろう。

  • 日銀は7月に追加利上げを実施するだろう(政策金利は+0.25%)。

  • FEDは9月に利下げを開始、FF金利は25年末に4.00%(幅上限)への低下を見込む。

目次

金融市場

  • 前日の米国株は軟調。S&P500は▲0.9%、NASDAQは▲2.0%で引け。VIXは12.9へと上昇。

  • 米金利はブル・スティープ化。予想インフレ率(10年BEI)は2.250%(▲3.2bp)へと低下。実質金利は1.960%(▲4.2bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は▲30.7bpへとマイナス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はJPYが最強。USD/JPYは158近傍まで下落。コモディティはWTI原油が82.6㌦(+0.5㌦)へと上昇。銅は9786.5㌦(▲118.5㌦)へと低下。金は2421.9㌦(+42.2㌦)へと上昇。

米国イールドカーブ
米国イールドカーブ

米国イールドカーブ(前日差)
米国イールドカーブ(前日差)

米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国長短金利差(2年10年)
米国長短金利差(2年10年)

注目点

  • 6月CPIは米国のインフレ退治が仕上げ段階に入ったこと示し、9月FOMCにおける利下げを大きく前進させる結果であった。なお、政府は米CPIの公表に合わせて為替介入に踏み切ったとみられる。神田財務官は為替の急激な変動の「直後」に「財務省内」で取材に応じた。介入の有無について明言を避けたが、市場関係者の間では為替介入との見方が多い。

  • 6月CPIは前月比▲0.1%、前年比+3.0%となり、どちらの尺度も市場予想を下回った。食料が前月比+0.2%、前年比+2.2%と低位安定を維持する中、エネルギーが前月比▲2.0%、前年比+1.0%と減速した。食料・エネルギーを除いたコアCPIは前月比+0.1%、前年比+3.3%であった。瞬間風速を示す尺度は前月比年率が僅か+0.8%に減速し、3ヶ月前比年率は+2.1%、その3ヶ月平均は+2.8%と何れも明確に下方屈折した。

米国CPI
米国CPI

米国コアCPI
米国コアCPI

  • 6月はコア財が前月比▲0.1%、前年比▲1.%と低下基調を辿り、コアサービスは前月比+0.1%、前年比+5.1%と減速基調を強めた。コア財では、中古車価格が前月比▲1.5%の下落。コアサービスでは、帰属家賃が+0.28%、民営家賃が+0.26%へと明確に鈍化した。そしてFedが重視している、コアサービスから家賃を除いたいわゆるスーパーコアは前月比▲0.1%、前年比+4.7%であった。瞬間風速は3ヶ月前比年率が+1.3%、その3ヶ月平均が+3.9%とどちらも減速基調にあり、サーベイ指標で観測されるインフレ基調と整合的な水準に落ち着いた。過去数ヶ月、台風の目となっていた自動車保険は前年比でみれば依然として20%程度の上昇だが、前月比では5月に▲0.1%となった後、6月は+0.9%と落ち着きつつある。

米国コアCPI
米国コアCPI

米国スーパーコアサービス・PMI
米国スーパーコアサービス・PMI

米国家賃
米国家賃

米国自動車保険
米国自動車保険

  • ここでインフレの基調を決める賃金動向を読むために、7月9日に発表された6月のNFIB中小企業調査に目を向けると、3ヶ月先の計画は人件費と雇用が共に小幅反発も低水準を維持した。労働市場データに目を向けると、求人件数が減少基調にあり、自発的離職率も低下している状況下、雇用統計で示される平均時給は鈍化が鮮明化している。こうした労働市場の軟化を示すデータから判断すると、賃金由来のインフレ圧力が再加速する兆しは乏しい。

NFIB中小企業調査
NFIB中小企業調査

  • パウエル議長は9日の議会証言で「金融引き締めの縮小が遅すぎたり少なすぎたりすれば、経済活動や雇用を不当に弱める可能性がある」、「米国経済はもはや過熱していない」と言及し、利下げ時期が近づいていることを仄めかした。さすがに7月の利下げは非現実的だが、9月の利下げ開始を念頭に8月下旬のジャクソンホール・シンポジウムでは利下げの予告に近い発言があるのではないか。7月FOMC後の記者会見もハト派になろう。

藤代 宏一


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