株高不況 株高不況

米利下げ観測でも円高にならない不気味(6月米雇用統計)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月41,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月150程度で推移するだろう。
  • 日銀は7月に追加利上げを実施するだろう(政策金利は+0.25%)。
  • FEDは9月に利下げを開始、FF金利は25年末に4.00%(幅上限)への低下を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+0.5%、NASDAQは+0.9%で引け。VIXは12.5へと上昇。

  • 米金利はカーブ全般で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.276%(▲0.2bp)へと低下。

実質金利は2.004%(▲7.9bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は▲32.9bpへとマイナス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが軟調。USD/JPYは160後半で推移。コモディティはWTI原油が83.2㌦(▲0.7㌦)へと低下。銅は9944.0㌦(+61.5㌦)へと上昇。金は2397.7㌦(+28.3㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)
米国 イールドカーブ、名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)、長短金利差(2年10年)

(%) 米国 イールドカーブ
(%) 米国 イールドカーブ

(bp) 米国 イールドカーブ(前日差)
(bp) 米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

注目点

  • 6月米雇用統計は雇用者数と平均時給の増勢鈍化を示し、Fedの利下げ観測を正当化。実際、9月FOMCまでの利下げ確率は8割程度まで高まった。筆者は9月FOMCにおける利下げ開始の予想に自信を深めた。

  • 雇用者数は前月比+20.6万人と市場予想(+19.0万人)を小幅に上回ったものの、過去2ヶ月の数値が11.1万人分下方修正されたため、均してみれば事前予想よりも弱い結果であった。同時に平均時給は前月比+0.3%、前年比+3.9%へと減速。「ラスト・ワンマイル」の段階にあるインフレ沈静化プロセスが前進したことに疑いの余地はない。

  • 雇用者数は+20.6万人と見た目は堅調な結果であったが、ここに政府部門の+7.0万人と異常的な伸びが含まれているため、民間雇用者に限ると+13.6万人まで減速している。この13.6万人という数値は、2023年以降に(不法)移民増加が年間330万人程度(0.95%の人口増に相当)まで急増していることを踏まえると、「弱い」と評価するのが妥当だろう。また企業が労働コスト増加に歯止めをかけようとする中、フルタイム労働者が頭打ちとなり、反対にパートタイムが増加していることも重要。企業は人手不足を認識しつつも、人件費増加には寛容でなくなりつつあるとみられる。

米国 雇用者数、米国 フルタイム労働者比率
米国 雇用者数、米国 フルタイム労働者比率

米国 雇用者数
米国 雇用者数

米国 フルタイム労働者比率
米国 フルタイム労働者比率

  • 失業率は4.1%へと0.1%pt上昇(小数点2桁では3.96%→4.05%)。失業者を広義の尺度で捉えて算出するU6失業率(フルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人を失業者と見なす)も7.4%と緩やかな上昇傾向にある。何れも景気後退を象徴するような水準には程遠いものの、じわりと上昇している。この間、週平均労働時間は低位で安定し、5月は34.3時間と比較的低水準にある。

米国 失業率、米国 週平均労働時間
米国 失業率、米国 週平均労働時間

米国 失業率
米国 失業率

米国 週平均労働時間
米国 週平均労働時間

  • 厚みを示す労働参加率は62.59%とほぼ不変であった(5月:62.53%)。高齢化等の影響からパンデミック発生前よりも低い水準にあるが、人口動態を加味した潜在的に達成可能な水準(CBOによる推計値)は凌駕している。6月は働き盛り世代の25-54歳(83.6%→83.7%)が小幅に上昇した反面、55歳以上(38.2%→38.2)は低水準横ばいであった。年齢の比較的若い移民が米国の高齢化を補う構図にある。

米国 労働参加率、米国 年代別労働参加率
米国 労働参加率、米国 年代別労働参加率

米国 労働参加率
米国 労働参加率

米国 年代別労働参加率
米国 年代別労働参加率

  • 賃金インフレの帰趨を読む上で重要な平均時給は前年比+3.9%(5月:+4.1%)へと鈍化。前月比では+0.29%(5月+0.43%)へと減速し、瞬間風速を示す3ヶ月前比年率は+3.62%(5月+3.99%)、同3ヶ月平均は+3.48%(5月+3.65%)と何れの尺度も下方屈折。求人件数の減少、自発的離職率(数値上昇は待遇改善を求めて労働者の転職活動が活発化していることを示す)の低下、CB消費者サーベイにおける雇用判断DIの低下、ISMやPMIの雇用項目の低下といった賃金インフレの沈静化を示すデータと整合的な動きであった。

米国 平均時給
米国 平均時給

  • なお、USD/JPYに関しては雇用統計が利下げ観測を高め、米金利がカーブ全般で低下したにもかかわらず、円高方向への動きは限定的であった。今後、Fedの利下げに伴って日米金利差が縮小すれば、円高方向の動きが加速するとの見方は据え置くが、雇用統計発表後の反応の鈍さを見る限り、145円という水準は修正の必要があると判断せざるを得ない。先行き12ヶ月のUSD/JPY予想を150円に修正する。

藤代 宏一


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