株高不況 株高不況

耐えた製造業 日銀短観(6月調査)

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月41,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月145程度で推移するだろう。
  • 日銀は7月に追加利上げを実施するだろう(政策金利は+0.25%)。
  • FEDは9月に利下げを開始、FF金利は25年末に4.00%(幅上限)への低下を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。S&P500は▲0.4%、NASDAQは▲0.7%で引け。VIXは12.4へと上昇。

  • 米金利はベア・スティープ化。予想インフレ率(10年BEI)は2.292%(+2.7bp)へと上昇。
    実質金利は2.107%(+8.2bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲35.9bpへとマイナス幅縮小。

  • 為替(G10通貨)はUSDが堅調。USD/JPYは160後半へと上昇。コモディティはWTI原油が81.5㌦(▲0.2㌦)へと低下。銅は9599.0㌦(+83.5㌦)へと上昇。金は2339.6㌦(+3.0㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ(前日差)
米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

米国 イールドカーブ、イールドカーブ(前日差)、名目金利・予想インフレ率・実質金利、長短金利差
米国 イールドカーブ、イールドカーブ(前日差)、名目金利・予想インフレ率・実質金利、長短金利差

経済指標

  • 5月米PCEデフレータは前月比+0.0%、前年比+2.6%。コアPCEデフレータは前月比+0.1%、前年比+2.6%と何れも市場予想に一致。3月データの段階でコアデフレータの3ヶ月前比年率の伸びは加速傾向にあったが、4・5月データの更新後は下方屈折している。

PCEコアデフレーター
PCEコアデフレーター

注目点

  • 日銀短観(6月調査)によると業況判断DIは、大企業製造業が+13と前回調査対比2pt上昇し、市場予想(+11)を上回った。一部メーカーの認証不正によって自動車の停滞が継続したものの、関連業種への波及は限定的であった。大企業非製造業は+33と前回調査対比1pt低下したものの、1991年以来の高水準を維持した。GDPベースの個人消費がマイナス基調で推移しているにもかかわらず、インバウンドの本格的再開、企業の旺盛なDX投資等(含む生成AI関連投資)が支えになったとみられる。先行き判断DIは大企業製造業が+14への改善を見込む一方、大企業非製造業は+27と現況対比で慎重な見通しであった。製造業は自動車生産の回復が背景にあるとみられる。非製造業は内需の停滞が懸念されているのもかもしれない。

日銀短観 業況判断DI(大企業)
日銀短観 業況判断DI(大企業)

  • 業種別にみると、大企業製造業では自動車(3月調査:+13→6月調査:+12)が2回調査連続で低下。その波及効果もあったとみられ鉄鋼(+16→+0)が大幅に低下したものの、窯業・土石製品(+29→+35)、はん用機械(+23→+27)、化学(+2→+10)、業務用機械(+16→+22)が改善するなど強弱区々であった。他方、半導体市況が好転する中でも、電気機械(±0→+1)の改善は限定的でやや期待外れであった。もっとも、先行きについては+9と明るい兆候がみられている。値上げ効果の浸透などから業況が改善傾向にあった食料品(+24→+21)は小幅に低下した。製造業全体としては当面、自動車生産の本格再開と半導体関連の回復によって底堅い推移が期待される。

  • 大企業非製造業は宿泊・サービス(+52→+49)が異例の強さを維持した他、卸売(+31→+32)と対個人サービス(+33→+29)が高水準で推移した。こうしたBtoC業種の強さは実質消費支出がマイナス傾向にあるのと整合しないが、値上げによって名目値の収益目標が確保できているためか、企業景況感は良好に推移している。もっとも、小売(+31→+19)は大きめの低下を示しており、個人消費の足取りの鈍さを浮き彫りにしているように思える。この間、不動産(+52→+50)の強さは続き、建設(+26→+25)、物品賃貸(+28→+29)も良好な水準を維持した。企業のDX投資等に支えられ、情報サービス(+54→+54)、対事業所サービス(+40→+40)は高水準が継続した。

  • 労働集約的な非製造業においては人手不足が足かせになっていると伝わっているものの、全体として企業景況感は良好である。なお雇用人員判断DI(全規模・全産業)は▲35へと1pt上昇。製造業の▲21に対して非製造業は▲45であった。

雇用人員判断DI(全規模・全産業)
雇用人員判断DI(全規模・全産業)

  • TOPIX構成銘柄と属性の近い大企業全産業の業況判断DIは+22と3回調査連続で横ばいであった。またTOPIXの予想EPSと密接に連動する売上高経常利益率の年度計画は+8.83%と高水準を維持。限界的な改善こそ一服しているものの、好調な企業収益を示唆する領域にある。円安による業績嵩上げ効果の他、米国経済が底堅さを維持していることが背景にあるとみられる。この間、企業の物価見通し(全規模・全産業)は、販売価格見通し(≒自社製品・サービスの価格設定スタンス、1年先)が物価見通し(≒日本の物価上昇率、1年先)を上回る傾向が続いている。これはコロナ期前には観察されなかった傾向であり、来期も積極的な価格転嫁が続き、収益を確保する動きが続く可能性を示唆している。

大企業業況判断DI・TOPIX予想EPS
大企業業況判断DI・TOPIX予想EPS

売上高経常利益率・TOPIX予想EPS
売上高経常利益率・TOPIX予想EPS

大企業業況判断DI・TOPIX予想EPS、売上高経常利益率・TOPIX予想EPS
大企業業況判断DI・TOPIX予想EPS、売上高経常利益率・TOPIX予想EPS

日銀短観 企業の物価見通し(1年後)
日銀短観 企業の物価見通し(1年後)

  • なお日銀短観の調査は、前月からの変化を問うPMI等と異なり、比較時点を問わない形式であるため、回答にあたって自社の収益計画を基準にしている企業は多いと考えられる。したがって、自社計画を満たしていれば「良い」「さほど良くない」「悪い」の3択から「良い」を選択するはずである。そうであれば業況判断DIの改善は業績上方修正の余地と考えることができる。短観とアナリスト予想の方向感が一致するのはそうした背景があるからではないか。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。