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- 2024年米大統領選の第1回TV討論会
2024年11月の米国大統領選に向けて、民主党で再選を目指すバイデン大統領と共和党で返り咲きを目指すトランプ前大統領がTV討論会に参加した(於ジョージア州アトランタ、CNN主催)。2020年9月に両者が対決したTV討論会ではトランプ氏がバイデン氏の発言を何度も遮ったこともあり、今回の討論会では発言中以外はマイクのスイッチが切られる運用となった。討論会は約90分間、2回の休憩を挟みながら無観客で実施された。
バイデン大統領は81歳という自身の高齢不安を払しょくできたとは言い難い。討論会序盤ではせき込むことや声が聞き取りにくいことがあったほか、言葉に詰まる場面もあった。また、発言中のトランプ大統領を口が半開きの状態で見つめるなど、力強さがない印象を残した。バイデン陣営の関係者は「(声が弱々しかったのは)風邪の影響」とコメントしているものの、一部の民主党関係者からは「候補者選びを再考すべき」との声が浮上している模様だ(注1)。
一方、トランプ前大統領は終始冷静に発言を続けるなど、表面的な印象のみを踏まえるとバイデン大統領に勝っていたとみられる。とはいえ、複数の質問に関しては直接的に回答しない場面が目立っており、こうしたディベートスタイルが無党派層にどう映ったのかに懸念が残る。例えば「2021年1月の議会襲撃事件の再来を懸念する有権者をどう思うか?」との質問に対しては、バイデン氏の就任後にアメリカ合衆国の評判が損なわれたと、質問とは関係ない回答をした。その後、司会者から再度同じ質問を受けると、自身が民衆を扇動したことを否定したうえで民主党のペロシ下院議長(当時)などに責任を転嫁した。
政策論争を巡っては特段目新しい内容はなかった。バイデン大統領はトランプ政権下の経済的混乱から雇用を創出したと主張したほか、6月に導入した大統領令によって不法移民の流入が40%減少していることをアピールした。税制を巡っては「年収40万ドル以下に増税を実施しない」と明言し、富裕層に絞った課税の見直し、及び医療費と養育費を削減する方針を示した。一方、トランプ前大統領はバイデン政権の経済・移民政策の失敗を強調した。黒人等の人種間格差や高騰するチャイルドケア費用などの社会保障の論点を巡っても、雇用・インフレの悪化や移民流入が根本的な原因とのスタンスを維持した。また、「関税引き上げはインフレを招かないか?」との質問には、「そうは思わない」と回答したものの、具体的な理由を説明しなかった。他方、ロシア・ウクライナ戦争に関しては、「責任はバイデン氏にある」とし、自身が当選した場合には2025年1月の大統領就任前に戦争を終わらせると主張した。
先行きを巡っては、まずバイデン氏の出馬を止める動きが民主党内部から強まるかが注目される。バイデン大統領は既に民主党予備選に勝利しているものの、8月19~22日に開催される民主党全国大会に向けて民主党内部から別候補を擁立する動きが浮上する可能性がある。一方、トランプ氏は7月11日に不倫口止め料に関する量刑が言い渡されるものの、今回のTV討論会のパフォーマンスを踏まえると、7月15~18日の党大会の際に共和党内部で「トランプ降ろし」の動きが強まる可能性は低い。
当面の両者の支持率を巡っては、今回のTV討論会のみならず、トランプ氏に対する量刑言い渡し、及び共和党副大統領候補の決定がどのような影響を及ぼすのかも注目される。
前田 和馬
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