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2024.06.24
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ベトナム共産党、1年半で政治局員の辞任が7人目の異例の事態
~政治不安がドン相場の足かせとなり、経済に悪影響を与える可能性にも要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- ベトナム共産党は21日に開催した中央委員会総会で党政治局員のズン氏の辞任を明らかにした。ここ数年の同党内ではチョン指導部による「反腐敗・反汚職」を名目にした派閥争いが激化している。2021年のチョン体制3期目入りを経て落ち着きを取り戻すとみられたが、昨年以降も国家主席や国会議長が相次いで解任、引責辞任に追い込まれている。結果、この1年半で党政治局員の辞任が7人目となる異例の事態となっている。先月始まった国会では国家主席と国会議長の人事を決定して政治不安の払しょくに動いたが、あらためて政治不安が意識されるなかで通貨ドン安圧力が強まることが懸念される。政治を巡る問題が経済の足を引っ張る可能性にこれまで以上に注意を払う必要性が高まっている。
ベトナム共産党は21日に開催した中央委員会総会において、最高指導部の党政治局員であるディン・ティエン・ズン氏について、「党規則に違反するとともに、党の威信を傷つけた」ことを理由に同氏の辞任を承認したことを明らかにした。具体的な辞任理由については明らかにされていないものの、ここ数年の党最高指導部人事を巡っては解任、引責辞任される動きが相次いでおり、ズン氏についても事実上の解任とみられている。2011年に発足したチョン体制下の同党内においては、党内保守派の筆頭に当たるチョン氏が旗振り役となる形で「反腐敗・反汚職」を理由とする派閥争いの動きが激化しており、急進派が放逐される動きがみられる。2021年にチョン体制は異例となる3期目入りを果たしたことにより、派閥争いの動きは一巡したかにみられたものの、現実にはその後も党中央を巻き込む形で不正入札や贈賄事件などが相次いで発覚しており、党最高指導部人事にも影響を与える事態に発展している。昨年初めにはコロナ禍対応を巡って党中枢や政府内で汚職が相次いだ責任を取る形で国家主席であったグエン・スアン・フック氏が事実上更迭された。さらに、今年3月にはフック氏の後任の国家主席であったボー・バン・トゥオン氏がかつての部下などが汚職を理由とする逮捕、起訴されたことを受けて引責辞任に追い込まれる異例の事態に発展した。そして、翌4月にも国会議長であったブオン・ディン・フエ氏も部下が汚職容疑で逮捕、起訴されたことを受けて事実上の引責辞任に追い込まれるなど、党最高指導部の四柱(トロイカ)を構成する党中央委員会委員長(党委員長)、国家主席、首相、国会議長の間で引責辞任が相次いできた。他方、この1年半ほどの間に四柱以外にも党中央政治局員の解任、引責辞任が相次いでおり、今回のズン氏の辞任で7人目となる異常事態にあると捉えられる。先月開幕した国会(第15期第7回国会)では国家主席にトー・ラム公安相(ベトナム人民公安大将)、国会議長に副議長で議長代行を務めるチャン・タイン・マン氏を昇格させる人事を決定しており、党内人事を巡る不透明感を理由とする政治不安の払しょくを図る動きをみせた。しかし、ズン氏の辞任により反腐敗・反汚職を旗印にした派閥争いの動きの行方が一段と見通せない状況に陥っている可能性があるほか、あらためて政治不安が懸念される事態となる可能性が高まっている。なお、ズン氏は国家会計監査委員長や財務相を歴任するなど党中央政治局員のなかでは経済通として知られる一方、今回の辞任の理由とされる汚職容疑は同氏の財務相在職時に発生したとされる。こうしたことから、中央委員会総会を前にハノイ市党委員会書記を辞職しており、党政治局員の辞任も既定路線であったと捉えられる一方、今後も政治局員の辞任が相次ぐ事態となれば政治不安が一段と深刻化することは避けられない。先月の人事ではチョン氏の下で反腐敗・反汚職の実働部隊を担ってきたラム氏が将来的なトップ(党委員長)を見据える動きがみられたことを受けて、今後も反腐敗・反汚職の動きが一段と加速する可能性が指摘されている。こうしたことに加え、内政においては経済政策を中心にいろいろな面で党による統制の動きが広がることも予想されるなど、ここ数年は反腐敗・反汚職の背後で党や政府内での意思決定の遅れが頻発するとともに、投資環境に悪影響を与える動きがみられたなかで一段と厳しい状況に追い込まれることが懸念される。国際金融市場では米ドル高の動きが意識される形で通貨ドン安圧力が掛かりやすくなっているが、政治不安の再燃も重なる形でドン相場の上値が抑えられることは避けられなくなっている。足下では食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とする物価上昇を反映してインフレが加速する動きがみられるなか、先行きはドン安による輸入インフレに加え、ラニーニャ現象による農作物の不作が食料インフレを招く懸念もくすぶる。政治不安が経済の足かせとなり得る可能性にこれまで以上に注意を払う必要性は高まっている。


西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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