“投資詐欺広告”
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日銀の政策金利見通し(0%~2%超)

次回利上げは7月に

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月41,000程度で推移するだろう。

  • USD/JPYは先行き12ヶ月145程度で推移するだろう。

  • 日銀は7月に追加利上げを実施するだろう(政策金利は+0.25%)。

  • FEDは9月に利下げを開始、FF金利は25年末に4.00%(幅上限)への低下を見込む。

目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。S&P500は+0.1%、NASDAQは+0.6%で引け。VIXは13.1へと上昇。

  • 米金利はカーブ全般で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.339%(▲1.7bp)へと低下。
    実質金利は2.054%(▲9.3bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は▲42.2bpへとマイナス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが全面安。USD/JPYは156前半へと下落。コモディティはWTI原油が74.2㌦(▲2.8㌦)へと低下。銅は10143.0㌦(+103.0㌦)へと上昇。金は2346.6㌦(+23.7㌦)へと上昇。

米国イールドカーブ
米国イールドカーブ

米国イールドカーブ(前日差)
米国イールドカーブ(前日差)

米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国長短金利差(2年10年)
米国長短金利差(2年10年)

経済指標

  • 5月ISM製造業景況指数は48.7と市場予想(49.2)に反して4月から0.5pt低下。ヘッドラインを構成する5つの項目は生産(51.3→50.2)が50超を維持し、雇用(48.6→51.1)は50超へ回復したものの、新規受注(49.1→45.4)が大幅に低下。その他ではサプライヤー納期(48.9→48.9)が不変、在庫(48.2→47.9)は減少した。ヘッドラインは2023年11月の46.6から回復傾向にあるとはいえ、過去数ヶ月は新規受注・在庫バランスが悪化方向にあるなど、再び生産活動が鈍化する可能性も示唆されている。類似指標の地区連銀調査や製造業PMIに比べて弱さが目立っていることから、この指標が弱さを誇張している可能性は否定できないが、企業業績の拡大基調が鈍化する可能性には留意が必要だろう。

米国製造業景況感
米国製造業景況感

注目点

  • 筆者は、日銀が7月に追加利上げを実施した後(政策金利は+0.25%)、2025年春頃までにもう一度利上げを実施し(同+0.5%)、そこで様子見姿勢に転じると予想している(確率55%)。インフレの背景に旺盛な個人消費がある米国とは異なり、日本は個人消費がマイナスで推移しており、お世辞にもデマンドプル型のインフレとは言い難い。インフレの根源を需要側と供給側要因に大別するならば、現在は供給側が強く効いており、そこに金融引き締めを講じる意味は乏しい。マイナス金利とYCCという極端な金融緩和に終止符を打った日銀は、恐る恐る政策金利を引き上げるものの、個人消費の弱さが足かせとなり、本格的な金融引き締めを躊躇すると思われる。

  • もっとも、目下の賃金・物価動向に鑑みると、政策金利の終点(ターミナルレート)が0.5%に留まるかは微妙なところがある。2024年度の名目賃金上昇率(現金給与総額)が3%程度に加速する蓋然性が高い中、2025年春闘に向けて賃金上昇率が2%超を維持するとの見通しが支配的になれば、持続的な賃金・物価上昇定着との判断から、2025年末頃までに政策金利が1.0~1.5%程度まで上昇する蓋然性はある(確率25%)。個人消費の弱さは気がかりだが、物価上昇率の高止まりを静観することには外圧がかかるだろう。住宅ローン金利の負担増による個人消費の下押し圧力が弱かったり、利息収入増加による個人消費の押し上げ圧力が生じたりすれば、その可能性は高まる。或いは金利上昇によって運用・貯蓄手段が復活することで将来不安が和らぐといった副次的効果が可視的なものとなれば、日銀は利上げを進め易くなるだろう。なお、植田総裁は4月26日の記者会見で「25年度、26年度と2%近い物価上昇率の見通しになっています。これが本当に実現していけば、持続的・安定的な2%の物価上昇の実現にかなり限りなく近づくということですので、見通し期間の後半に私どもの政策金利もほぼ中立金利の近辺にあるという状態にあるんだろうなという展望は持っています」と発言している(発言は筆者が一部修正)。中立金利は計算方法によってかなりの幅があるとはいえ、専門家(含む日銀)の中心的な推計値は「1~2%」に収まるのではないか。

  • ここへ来て、実現可能性が高まっていると思われるのは「もしトリ」。もしトリとは「もしも、物価の番人であり続けたトリシェ元ECB総裁が日銀総裁になったら」の略であり、日銀の政策態度が専ら物価によって決まることを示す。その場合、日銀は中立金利を明確に上回る利上げを講じる可能性あり、政策金利は2%以上となる(確率10%)。現在、先進国の中央銀行は物価のみならず景気に配慮して金融政策を決定するのが一般的であるが、日銀がかつてのECBのように物価に一点集中するのであれば、断続的な利上げに踏み切ることになる。為替・原油次第では2022年型の輸入物価上昇に見舞われる可能性もあり、もしそうなれば日銀は物価の番人に徹するかもしれない。現時点で、日銀が物価上昇の質を問わない政策態度を採る可能性は低いが、円安(≒輸入物価上昇)が国民的に嫌気されている現状を踏まえると、「とんでも予想」から「あり得る」に昇華(?)した印象がある。

  • このまま利上げが棚上げとなる(確率10%)。Fedが早期に利下げへ転じることで、円安基調が反転し輸入物価が落ち着けば、日銀は内需の回復をじっくりと待つことが可能になる。個人消費の回復を延々と待っている間に、賃金上昇率が明確に鈍化し、物価上昇率も低下する。日銀の政策変更を巡る思惑は「当分の間、動かない」に変化する。

  • なお、筆者は日銀の利上げ時期の予想を10月から7月に前倒しする。これまで10月としていた理由は、春闘反映後の賃金データ蓄積や定額減税の効果見極めなどがあったが、最近の一連の情報発信(内田副総裁、安達委員の講演や「主な意見」)に鑑みると、日銀の慎重姿勢はそれほど強くないと判断される。6月の金融政策決定会合では利上げの予告に近い情報発信があるのではないか。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。