オーストラリア:金融政策(23年10月)

~市場予想通り据え置きの継続を決定、ブロック新総裁は従来の政策スタンスを踏襲~

阿原 健一郎

要旨
  • 10月3日、RBAは政策金利の据え置き(4.10%)を決定。据え置きは市場予想通り。据え置き は4会合連続。
  • ブロック新総裁の初の決定会合であるが、声明文は大きな変化がなく、従来の政策スタンスを 踏襲することが確認された。据え置きの背景は、今回の決定によりこれまでの金利上昇の影響と 経済見通しを評価するためのさらなる時間が得られる、と金融引き締めの効果を見極めるとした。 先行きは、RBAの想定する経済見通しから大きく乖離しない限り、据え置きを継続する模様。
  • 据え置きを受けて、豪ドルは対米ドル、対円いずれも一時減価した。

10月3日、オーストラリア準備銀行(RBA)は政策金利(オフィシャルキャッシュレート)の据え置き(4.10%)を決定した。据え置きは市場予想通り(+25bps:2/32人、据え置き:30/32人、ロイター調査)。据え置きは4会合連続。8月の消費者物価指数は、原油価格上昇を受けて総合CPIが前年比+5.2%と前月(同+4.9%)から伸びが再加速したものの、市場予想通りの推移であったことに加え、「価格変動の大きい品目と旅行費を除いた CPI」が引き続き前月から鈍化したこともあり、市場では大半が据え置きと予想していた(図表1)。また、今回の決定会合は、ブロック新総裁の初の決定会合だったが、声明文にほとんど変化が見られなかったことから、「RBAは政策スタンスを変えず、ロウ前総裁の路線を踏襲する」ということを確認する結果にもなった。

【図表1】政策金利とインフレ率
【図表1】政策金利とインフレ率

据え置きの背景について、RBAは引き続き、「政策金利の上昇により、経済における需要と供給の持続的なバランスが確立されている」、「今回の決定により、これまでの金利上昇の影響と経済見通しを評価するためのさらなる時間が得られる」としている。

インフレ率の評価については、サービス価格が依然として高い水準にあることや、燃料価格の上昇に触れつつも、インフレ率が引き続き低下し、25年後半にインフレターゲットのレンジに収束するというメインシナリオに変更はなかった。

インフレ見通しの不確実性についても大きな変更はなく、引き続きリスクは高いとしている。不確実性の要因として、サービス価格の高止まりや、金融政策の波及効果のラグ、労働市場が逼迫しているもとでの景気減速に対する企業の価格設定や賃金の反応、不動産市場を中心とした中国経済の見通しが挙げられている。サービス価格の高止まりはインフレ率の上振れリスク、金融政策の波及効果のラグや中国経済の減速は、国内経済を想定以上に下押しするインフレ率の下振れリスクであり、インフレ率の変動リスクは上下双方向にある。

先行きについても、「適切な期間内にインフレ率が目標に戻ることを確実にするためには、金融政策の更なる引き締めが必要になるかもしれないが、それはデータとリスク評価がどう推移するかに依る」と、利上げの可能性を残すスタンスに変化はない。利上げの可能性として新たに考えられるのは、原油価格上昇を受けた国内の燃料価格の上昇リスクである。8月は総合CPIを再加速させるにとどまったが、仮に、燃料価格の上昇が長期化することで、他の財・サービスへの価格上昇圧力が高まり、インフレ基調が再び加速し出すようなことになれば、RBAは再度利上げに踏み切る可能性はある。

なお、今回の政策決定を受けて、豪ドルは一時、米ドル、日本円に対していずれも、約▲0.6%減価した(図表2、3)。従来の政策スタンスを踏襲することが明らかになり、追加利上げの可能性後退が意識され、豪ドルが売られたとみられる。

図表2、図表3
図表2、図表3

【図表2】為替レート(対米ドル、10/3日)
【図表2】為替レート(対米ドル、10/3日)

【図表3】為替レート(対日本円、10/3日)
【図表3】為替レート(対日本円、10/3日)

阿原 健一郎


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阿原 健一郎

あはら けんいちろう

経済調査部 主任エコノミスト
担当: アジアパシフィック経済、世界経済

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