株高不況 株高不況

ISM製造業の再放送と中国・台湾製造業指標

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月34,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月138程度で推移するだろう。
  • 日銀は2024年後半にマイナス金利を撤回するだろう。
  • FEDはFF金利を5.50%(幅上限)で据え置くだろう。利下げは24年4-6月を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国市場は休場。為替(G10通貨)はJPYが最弱。USD/JPYは146半ばへと上昇。

注目点

  • 8月1日、雇用統計の裏番組となりあまり注目されなかった8月ISM製造業景況指数を改めて振り返っておきたい。株式市場との関連が深いこの指標は現在、サイクルの転換期にあるとみられ、ある意味で雇用統計よりも重要な存在と言える。まずヘッドラインは47.6へと1.2pt改善した。6月の46.0を底に2ヶ月連続で上昇し、潮目の変化を感じさせる動きとなっている。次にヘッドラインを構成する5つの項目に目を向けると、新規受注(47.3→46.8)が低下した反面、生産(48.3→50.0)が50を回復し、雇用(44.4→48.5)も大きめの改善を示した。サプライヤー納期(46.1→48.6※納期は長期化)はヘッドラインを押し上げに寄与、在庫(46.1→44.0)は下押しに寄与した。この結果、1~3カ月先の生産を読む上で有用な新規受注・在庫バランスは改善傾向を強め、生産活動の持ち直し持続を示唆。この間、サプライチェーンの修復を背景にインフレ関連項目(仕入価格)は低水準を維持しており、在庫減少とインフレ沈静化が併存する望ましい構図が構築されつつある。

ISM製造業・製造業PMI
ISM製造業・製造業PMI

ISM新規発注・在庫バランス
ISM新規発注・在庫バランス

ISM製造業・製造業PMI、ISM新規発注・在庫バランス
ISM製造業・製造業PMI、ISM新規発注・在庫バランス

ISM製造業
ISM製造業

  • ここでISM製造業景気指数と米国株(S&P500)の6ヶ月前変化を同じグラフに描くと、ISM製造業が改善傾向にある時、米国株が上昇するという非常にシンプルな関係が見て取れる。米国株の上昇はやや行き過ぎている印象はあるが、それでも方向感は一致している。製造業の回復が続くならば、先行きはファンダメンタルズの改善を伴った株価上昇が期待される。

ISM製造業・S&P500
ISM製造業・S&P500

  • この間、中国と台湾からも製造業の改善を示す指標が届いている。8月に中国の製造業PMI(財新)は51.0と2023年入り後で2番目に高い水準に切り返し、一先ず不動産問題が実体経済を広範に蝕んでいるとの懸念を和らげた。そうした折、8月に金融当局は事実上の政策金利に位置付けられている1年物ローンプライムレートを小幅引き下げた上に、既存の住宅ローン金利引き下げを認めるといった金融緩和策を講じた。それらの直接的効果は限定的とみられるが、かつての日本のように不動産市場の崩壊がその他セクターの成長を阻害するとの不安を一定程度和らげたとみられる。またIT関連財の生産集積値である台湾も在庫調整が進展する下で製造業PMIが下げ止まった。スマホ、PCの販売低迷を背景にIT関連財の出荷・在庫バランス(両者の前年比差分から算出)はなおマイナス圏にあるが、在庫の伸び率がマイナス圏に転じたことで、方向感は明確に改善している。在庫の伸び率は2021年11月に70%を超えた後、徐々に伸び率は低下し、2023年5月に漸くマイナス圏に突入した。世界経済の先行指標として知られている台湾の製造業PMIの下げ止まりは、在庫調整が最終段階に入りつつあることを示唆しているようにみえ好感される。先行きについて、生成AI向け半導体の需要爆発はその直接的効果は限定的かもしれないが、その分野における開発競争激化が喚起する需要を踏まえれば、IT関連財全般に相応の需給引き締め効果を生むと期待される。これは同じくIT関連財を手掛ける企業を多く抱える日本にとっても朗報であろう。

中国 製造業PMI
中国 製造業PMI

台湾 製造業PMI
台湾 製造業PMI

中国 製造業PMI、台湾 製造業PMI
中国 製造業PMI、台湾 製造業PMI

台湾 電子部品 出荷・在庫バランス
台湾 電子部品 出荷・在庫バランス

藤代 宏一


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