株高不況 株高不況

適温の雇用統計 9月FOMC は様子見へ

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月34,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月138程度で推移するだろう。
  • 日銀は2024年後半にマイナス金利を撤回するだろう。
  • FEDはFF金利を5.50%(幅上限)で据え置くだろう。利下げは24年4-6月を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。S&P500は+0.2%、NASDAQは▲0.0%で引け。VIXは13.1へと低下。
  • 米金利はベア・スティープ化。予想インフレ率(10年BEI)は2.257%(+2.0bp)へと上昇。
    実質金利は1.917%(+5.2bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は▲70.4bpへとマイナス幅縮小。
  • 為替(G10通貨)はUSDが最強。USD/JPYは146前半へと上昇。コモディティはWTI原油が85.6㌦(+1.9㌦)へと上昇。銅は8500.5㌦(+78.0㌦)へと上昇。金は1948.4㌦(+1.4㌦)へと上昇。

図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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注目点

  • Fedの利上げ終了時期を予想する上で重要な判断材料となる8月米雇用統計は「適温」であった。緩やかに増加する雇用者数、小幅に上昇する失業率、下向きの曲線を描く平均時給、はっきりと上昇した労働参加率。ソフトランディングを「緩やかな景気減速とインフレ沈静化」と定義するならば、8月雇用統計はそれに合致する結果であり、今回の結果はFedに利上げを終了を促したと判断される。また同日発表された8月ISM製造業景況指数は47.6へと1.2pt改善し、底打ち感を強めた。株価は金利上昇が重荷となり強弱まちまちの結果であったが、雇用統計それ自体はFedの引き締め観測を弱める結果であったと言えよう。

  • 8月の雇用者数は前月比+18.7万人と市場予想よりもやや強めの結果であった。もっとも、統計の年次改定の影響もあって過去2ヶ月分は11.0万人分が下方修正され、雇用者数の3ヶ月平均値は+15.0万人へ減速。企業の採用意欲が下火になる中、増加ペースは鈍っている。

  • 失業率は3.8%へと0.3&pt上昇。依然として低水準を維持しているとはいえ、さすがに既往の景気減速が労働市場に波及してきた格好。失業者を広義の尺度で捉えて算出するU6失業率(フルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人を失業者と見なす)は7.1%へと0.4ptも上昇した。失業率(家計調査)で見る限り、労働市場の過熱感は和らいでいる。

図表6
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図表7
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図表8
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  • 注目の労働参加率は62.8%(62.58%→62.8%1)と明確に上昇した。労働市場の「厚み」を示す労働参加率は働き盛り世代の25-54歳(83.4%→83.5%)がパンデミック発生前を凌駕した水準で推移する中、55歳以上(38.6%→38.8%)がレンジを上抜けた。この間の移民流入数回復も相俟って労働市場の歪み解消が期待される。

図表9
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図表10
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図表11
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  • 賃金インフレの帰趨を読む上で重要な平均時給は前月比+0.2%(0.24%)、前年比+4.3%(+4.29%)へ減速。瞬間風速を示す3ヶ月前比年率も+4.50%へと減速(7月+4.89%)。同3ヶ月平均の伸びは+4.76%と高止まりしているが、9月以降は減速する公算が大きい。求人件数の減少や、自発的離職率(上昇は待遇改善を求めて転職活動が活発化していることを示す)の低下といった賃金インフレ沈静化を示すデータと整合的で安心感のある結果であった。これら8月雇用統計が内包していた一連の内容はFedに安心感をもたらせた公算が大きい。

図表12
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  • また同日発表された8月ISM製造業景況指数は47.6へと1.2pt改善し、6月の46.0を底に2ヶ月連続で上昇。ヘッドラインを構成する5つの項目は新規受注(47.3→46.8)が低下した反面、生産(48.3→50.0)と雇用(44.4→48.5)が改善。サプライヤー納期(46.1→48.6)は押し上げに、在庫(46.1→44.0)は下押し寄与した。1~3カ月先の生産を読む上で有用な新規受注・在庫バランスは改善傾向を強め、生産活動の持ち直し持続を示唆。景気後退の回避をより明確に印象付けるという視点において安心感のある結果であった。

図表13
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図表14
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図表15
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藤代 宏一


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