FRBは利上げ休止決定も小幅の追加利上げの可能性を示唆 (23年6月13、14日FOMC)

~FOMC参加者は23年後半に25bpの利上げを2回実施することが適切と予想~

桂畑 誠治

23年6月13、14日に開催されたFOMCで、FRBは予想通り政策金利であるFFレート誘導目標レンジを5.00~5.25%に据え置くことを全会一致で決定した。強い労働市場、高いインフレが続いているものの、これまでの大幅かつ迅速な利上げのほか、銀行破綻による信用状況の引き締まりの影響を確認するために、FRBは据え置きが適切と判断した。

声明文で「今回の会合で目標レンジを据え置いたことで、委員会は追加の情報を評価することができる」と急速な利上げによって政策金利が引締め的な水準に引き上げられたため、これらの影響や米中堅銀行の破綻による信用収縮の影響を見極める必要があり、FRBが景気動向により慎重になっていることを示唆した。

また、パウエルFRB議長は、「利上げ停止は引き締めペース鈍化の継続」との認識を示し、10会合連続で利上げを行ってきた段階から、利上げの間隔をあけることで、さらに利上げペースを鈍化させたとの考えを示した。議長は引締め過ぎの回避を目指す段階に入ったことも指摘した。

今回公表されたFOMC参加者による最新の経済・金利予測では、23年10-12月期の実質GDP成長率が上方修正されたほか、PCEコアデフレーターが4月までの鈍い低下を受け+3.9%に上方修正された。このようなファンダメンタルズの見方の変化を受け、23年末の政策金利見通しの中央値が5.625%(前回5.125%)に上方シフトした。年内予定されている4回の会合のうち2回で25bpの利上げが適切と予想している。12人が年末までに政策金利を5.5~5.75%以上に引き上げることが適切とした。4人が年内に1回25bpの利上げを想定。2人が年末までの政策金利の据え置きを予想した。この予想を受け、パウエル議長は記者会見で、「参加者のほぼ全員が年末までに金利をある程度さらに引き上げることが適切になるとみている」とした。ただし、7月の利上げがFOMCのコンセンサスになっているわけではないことを指摘した。また、議長は、「FOMC参加者の見通しは計画や決定ではない」と改めて指摘したうえで、今後も会合ごとにデータで判断していく方針であることを強調した。

今後の金融政策運営では、信用状況の引き締まりの影響など毎会合データで追加の利上げが必要か否か判断を行う方針を維持した。このような中、銀行破綻をきっかけとした銀行の融資基準厳格化の経済への影響が限定的なものとなり、労働市場の逼迫や、コアインフレの鈍い低下が継続すれば、FRBは7月に25bpの追加利上げを実施すると見込まれる。

金融市場では、ドットチャートで23年後半に2回の追加利上げが適切との予想が公表された直後、株価は下落した。金利は上昇し、ドル高が進んだ。しかし、パウエル議長が今回の決定がスキップではないと発言したほか、7月の会合について何も決まっておらず、データ次第であることを強調したこと等を受け、株価が持ち直した。また、金利は低下に転じ、ドルは弱含み水準をやや回復した。  

FF先物市場は、今回のターミナルレートの上方シフトやパウエル議長の早期の利下げ否定発言を受けても、23年に25bpの利上げ1回程度の織り込みにとどまったほか、24年の利下げを織り込んでいるように、市場はFRBの予想と異なり景気の悲観的な見方を維持した。

FF金利先物イールドカーブ
FF金利先物イールドカーブ

銀行破綻の影響について声明文で前回同様「米国の銀行システムは健全で強じん」と銀行システムへの懸念を否定したうえで、前回同様「家計と企業の信用状況の引き締まりは経済活動、雇用、インフレを下押しする可能性が高い」と信用状況が引き締まったことを指摘した。ただし、「こうした影響の程度は依然不透明」との見方を示したうえで、「委員会は引き続きインフレリスクを注視している」と現時点では金融不安の影響以上にインフレの高止まりを警戒していることを強調した。

今後の金融政策運営に関して、前回同様「インフレ率を徐々に2%に戻すために、どの程度の追加的な政策引き締めが適切となり得るかを決定するうえで、委員会は累積した金融政策引き締め、金融政策が経済活動とインフレに及ぼす遅行効果、経済・金融の動向を考慮する」と、今後はこれまでの大幅利上げの累積的な効果、経済活動やインフレに遅れて顕在化する影響、景気動向や金融環境の引き締まりなどを考慮して、追加利上げがどの程度必要かを判断し、ターミナルレートを探る方針を維持した。

利下げの可能性に関して、FRB議長は「年内利下げ予想は適切ではない、それを想定したメンバーは1人もいない」と年内の利下げをこれまでと同様に否定した。さらに、パウエル議長は「利下げは2年ほど先の話」とドットチャートで示された24年の利下げ見通しとは異なる見解を示し、早過ぎる利下げ期待の修正を促した。

バランスシートの縮小策について、一部で停止期待が高まっているが、以前に発表した計画通り保有証券の圧縮を月間上限額950億ドルで継続する方針が確認された。内訳は、米国債の上限が600億ドル、エージェンシー債、政府支援機関保証付き住宅ローン担保証券の上限が350億ドル。金融政策の方向性が変わるほどの経済環境の変化が生じなければ、継続される可能性が高い。

FOMC声明文の景気判断は、今回「最近の指標では経済活動が緩やかなペースで拡大し続けていることが示されている」と前回「経済活動は1-3月期に緩やかなペースで拡大した」とほぼ変わらず、米経済が緩やかに成長しているとの見方が維持された。雇用情勢についての判断は前回同様「ここ数カ月、雇用は堅調に伸びており、失業率は低いまま」と労働市場の堅調との判断が維持された。同様に、パウエル議長は労働者の需要は依然として供給を大きく上回っており、労働市場は過度に引き締まっているとの認識を示した。

インフレについて声明文で、前回同様「インフレは高止まりしている」との判断が維持された。また、パウエル議長もインフレは幾分和らいだものの依然高すぎ、目標の2%に抑えるまでの道のりは長いと改めて指摘した。

リスクとして、前回同様「委員会はインフレリスクを注意深く観察している」とFRBが信用状況の引き締まりの悪影響よりも現時点ではインフレ動向を注視していることを強調した。

【FOMC参加者による経済・金利予測:23年6月】

FOMC参加者による経済・金利予測(中央値)では、実質GDP予測(10-12月期の前年同期比)は23年+1.0%(前回+0.4%)と上方修正された。一方、24年+1.1%(前回+1.2%)、25年+1.8%(前回+1.9%)とそれぞれ引き下げられた。

失業率予測(10-12月期の平均値)は、23年4.1%(前回4.5%)、24年4.5%(前回4.6%)、25年4.5%(前回4.6%)と下方シフトした。労働市場は23年の逼迫した状態が継続し、24年に悪化するとの予想に変更された。

インフレ見通し(10-12月期の前年同期比)では、23年のPCEデフレーターが+3.2%(前回+3.3%)と下方修正された。24年+2.5%(前回+2.5%)、25年+2.1%(前回+2.1%)と変わらず、25年まで目標の+2%を上回り続けると予想されている。一方、PCEコアデフレーターは23年+3.9%(前回+3.6%)と上方修正された。24年は+2.6%(前回+2.6%)と変わらず。25年は+2.2%(前回+2.1%)とインフレの緩やかな低下が予想されている。

FOMC参加者の経済金利予測:23年6月(前回23年3月)
FOMC参加者の経済金利予測:23年6月(前回23年3月)

ドットチャート(FFレート誘導目標レンジの中央値、年末)では、23年5.625%(前回5.125%)とターミナルレートの予想が上方シフトした。堅調な景気や逼迫した労働市場の継続を受けFOMC参加者の見方が強まった。24年は4.625%(前回4.250%)、25年は3.375%(前回3.125%)と上方シフトしたが、利下げを予想していることが示された。FOMC参加者の予想通り低成長にとどまり、労働市場が悪化すれば、24、25年に利下げが適切になると予想された。その場合でも、25年末で3.375%(前回3.125%)と中立金利とFOMCが推測する2.5%を上回る金融引締め水準が適切とされた。長期は2.5%(前回2.5%)と中立金利の見方に変化はなかった。

FOMC委員のFF金利予想
FOMC委員のFF金利予想

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桂畑 誠治


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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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