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ECBが更なるタカ派シフト

~長期戦を覚悟、利上げの最終到達点はより高く~

田中 理

要旨
  • ECBは12月の理事会で利上げ幅を50bpに縮小したものの、今後も当面は50bp利上げを継続する姿勢を示唆。賃上げや価格転嫁の動きを反映し、エネルギー価格の沈静化後も物価は高止まりし、新たなスタッフ見通しでは、2%の物価目標への収斂は2025年後半にずれ込むと予想する。ターミナル・レートは市場コンセンサスを上回る3%台半ばを想定している模様。また、来年3月から月額150億ユーロの規模で、APPの資産縮小を開始。量的引き締めにも着手する。

過去2回連続で75bpの大幅利上げを繰り返してきたECBは、15日の理事会で利上げ幅を50bpに縮小した一方で、インフレ率を2%の中期的な目標に適切な時期に復帰させるためには、金利が十分に引き締め的な水準に達するまで、今後も政策金利を安定的なペースで大幅に引き上げる必要があるとの判断を示した。今回の利上げで下限の政策金利である預金ファシリティ金利が2%に到達し、過去にECB高官が中立金利と発言した水準に近づいている。足許でインフレ率のピークアウトや景気後退の兆しが広がっていることを受け、今回の理事会での利上げ幅縮小は、今後の利上げ打ち止めの布石であるとの見方も一部にあった。だが、ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、「現時点で入手可能なデータに基づけば、安定的なペースでの大幅利上げとは、50bpの利上げをしばらく続けることを意味する」、「今後の道のりは長く、我々は長期戦にある」、「市場が想定するターミナル・レートは2%のインフレ目標への復帰に十分ではない」と発言し、今後も当面は50bp利上げを続けることを示唆した。

こうしたECBの政策方針は、同時に発表されたスタッフ見通しからも裏付けられる。これまでユーロ圏のインフレ率は2024年央に2%近くに収斂すると予想されてきたが、新たな見通しでは、2024年を通じて3%台で高止まりし、2%への収斂は2025年後半に後ずれする形に改められた(図表1)。予測の前提となる原油や天然ガス価格の見通しが下方修正された一方、コア物価や雇用者報酬の上振れが予想されており、インフレ見通しの上方修正は、価格転嫁や賃上げの動きを反映したものと考えられる(図表2)。スタッフ見通しの短期金利や長期金利の想定は、11月23日までの先物金利から計算している。12月に50bpに利上げ幅を縮小した後、来年前半にかけて75~100bp程度の追加利上げを実施し、預金ファシリティ金利のターミナル・レートは2.75~3.0%程度とみられていた。その程度の追加利上げでは2024年中の物価目標の達成が困難であることをスタッフ見通しは示唆しており、今回のラガルド総裁の発言と併せて考えると、ECB理事会の大勢意見は3%台半ばのターミナル・レートを想定している可能性がある。筆者は、来年2月と3月の理事会で50bp、5月と6月の理事会で25bpの追加利上げを行い、3.5%の預金ファシリティ金利で利上げ打ち止めと考える。物価沈静化で景気への下押し圧力が弱まること、当面は物価目標を上回るインフレ率が続くことから、早期の利下げ転換は予想していない。

図表1
図表1

図表2
図表2

ECBは量的引き締めも開始する。コロナ以前から続けていた資産買い入れプログラム(APP)については、7月に新規の資産買い入れを終了した後も、満期を迎えた債券の再投資を通じて、量的緩和の度合い(バランスシートの水準)を維持してきた。今回の理事会では、来年3月から一部の再投資を打ち切り、6月末までの間、月平均150億ユーロ程度のペースで保有資産の縮小を開始する方針を発表した(図表3)。再投資を停止する資産の内訳などの詳細は2月の理事会で公表する。7月以降の資産縮小ペースは追って決定する。保有資産の縮小ペースは、金融政策の全般的な戦略や姿勢、市場機能の維持、短期金融市場の動向などに基づき、定期的に見直す。市場の動揺が生じない場合、筆者は7月以降、資産縮小の規模を段階的に拡大し、年末までにAPPの再投資を完全に停止すると予想する。コロナ危機時に導入し、3月末に新規の買入を終了したパンデミック緊急資産買い入れプログラム(PEPP)については、少なくとも2024年末まで再投資を続ける方針を維持している。

図表3
図表3

以上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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