株高不況 株高不況

遠ざかる「金融相場」 高インフレと景気のしぶとさが併存

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月137程度で推移するだろう。
  • 日銀は現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは年内に125bpの追加利上げを実施。利下げは早くても23年後半以降だろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。NYダウは▲0.2%、S&P500は▲0.4%、NASDAQは▲0.9%で引け。VIXは25.8へと低下。
  • 米金利カーブはツイスト・フラット化。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.510%(▲0.1bp)へと低下。実質金利は1.527%(▲0.4bp)へと低下。
  • 為替(G10)はUSDがやや軟調。USD/JPYは148前半へと低下。コモディティはWTI原油が88.4㌦(+1.8㌦)へと上昇。銅は7652.0㌦(+202.0㌦)へと上昇。金は1649.7㌦(+9.0㌦)へと上昇。

図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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注目点

  • 1日に発表された米JOLTS求人件数、ISM製造業景況指数は何れも景気のしぶとさを示す結果となり、Fedの金融引き締め終了、或いは金融緩和に転じるまでの時間的距離が長くなることを示唆した。いわゆる金融相場の到来が2024年以降にずれ込む可能性もある。

図表6
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  • 9月JOLTS求人件数は前月比+4.3%、1071万件と減少を見込んでいた市場予想(975万件)に反して増加。大きく見れば3月をピークに鈍化しているとはいえ、企業の人手不足感がなお強いことを浮き彫りにした。失業者数がパンデミック発生前の水準へと減少しているにもかかわらず、求人件数が歴史的高水準で高止まりしていることは労働市場の歪みが早期に解消するとの期待に疑問を投げかける。実際、失業者数に対する求人件数の割合は依然として異常値的領域で推移している。また平均時給の先行指標として有用な自発的離職率(3ヶ月平均)は2.6%と低下傾向を辿っているものの、直近の低下ペース等から判断するとパンデミック発生直前の2.2~2.3%程度へと回帰するには少なくとも半年程度の時間を要すると考えられ、その間、賃金上昇圧力は残存すると判断される。労働供給の早期回復が最も理想的であるが、アーリー・リタイアを決めた55歳以上の潜在的労働者は高インフレ・株価下落が進行する中でも、頑なに労働市場への復帰を拒んでおりそこに多くは期待できない。人手不足感の緩和を示すサーベイデータもあるが、求人件数の高止まりはなお多くの企業が労働力確保に苦悩し、背に腹は代えられない状況の中で不本意にも高賃金を労働者(求職者)に提示している現状を映し出している。飽くまでたった2つの経済指標、しかも単月の数値を以っての判断であるが、今回の結果は賃金インフレが早期に終息し、Fedがハト派転換するとの期待を打ち砕くものであった。

図表7
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図表8
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図表9
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図表10
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図表11
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  • また景気のしぶとさもFedのハト派転換に対する期待を萎ませる。10月ISM製造業景況指数は50.2へと9月から0.7pt低下し、好不況の分かれ目とされる50に接近したものの、市場予想(50.0)は上回っており、またヘッドラインを構成する5つの項目を仔細にみると企業が「金融引き締めに耐えている」様子が窺えた。内訳は生産(50.6→52.3)、新規受注(47.1→49.2)、雇用(48.7→50.0)が何れも回復。指数を下押ししたのは在庫(55.5→52.5)の減少とサプライヤー納期(52.4→46.8)の短縮であり、サプライヤー納期を除いて算出したヘッドラインは51.0と9月(同ベース50.5)から改善していた。素直に読めば、供給制約の解消を受けて企業活動が活発化していたことを示す結果であった。

図表12
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図表13
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図表14
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  • インフレ長期化と景気のしぶとさが併存する現在の状況は、資産価格(株式・不動産)にとって「冬の時代」が長く続くことを意味する。Fedの引き締め的な政策態度は企業収益の急激な悪化など、景気の急減速を示す事象が多発した際に終わりを迎えると考えられるが、マクロ指標が粘り強さをみせる中で、企業収益が急減を免れている(予想EPSは小幅低下)以上、Fedが引き締め的な政策態度を見直すとは考えにくい。11月FOMCを通過した後、政策金利の最高到達点(ターミナルレート)に関する予想は徐々にコンセンサスが形成されていくとみられ、そうした下で長期金利の上昇は一服し株式市場の逆風は弱まると期待されるが、高インフレと景気のしぶとさが長期にわたって併存すれば、将来的(≒2023年後半)な利下げ見通しが後退し、待望の金融相場はその到来時機が後ずれすることになる。

図表15
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藤代 宏一


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