株高不況 株高不況

「良い景気後退」の訪れを待つ ISM製造業の50 割れに注目

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月137程度で推移するだろう。
  • 日銀は現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは年内に125bpの追加利上げを実施。利下げは早くても23年後半以降だろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。NYダウは▲0.3%、S&P500は▲0.8%、NASDAQは▲0.6%で引け。VIXは30.0へと低下。
  • 米金利カーブはベア・スティープ化。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.493%(+5.4bp)へと上昇。実質金利は1.729%(+3.9bp)へと上昇。
  • 為替(G10)はUSDが中位程度。USD/JPYは150前半へと上昇。コモディティはWTI原油が86.0㌦(+0.4㌦)へと上昇。銅は7560.5㌦(+174.0㌦)へと上昇。金は1630.8㌦(+3.3㌦)へと上昇。

図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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経済指標

  • 9月米中古住宅販売件数は前月比▲1.5%、471万件と市場予想に概ね一致し8ヶ月連続で前月比マイナスとなった。中古住宅販売に対して1~2ヶ月の先行性を有する中古住宅販売成約指数の低下に歯止めがかかっていないことを踏まえれば、今後も更なる減少が予想される。なお販売中央価格は住宅在庫の回復もあり、前年比+8.4%まで上昇率が鈍化している。

図表6
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図表7
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図表8
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  • 10月フィラデルフィア連銀製造業景況指数は▲8.7と9月から小幅改善も2ヶ月連続でマイナス圏推移。ISM製造業のウェイトを用いてISM製造業に換算した数値は50.7へと2.7pt改善。出荷(+8.8→+8.6)と新規受注(▲17.6→▲15.9)は冴えなかったが、雇用(+12.0→+28.5)が急回復した。

図表9
図表9

注目点

  • FF金利先物が織り込む年内の利上げ幅は11月FOMCが75bp、12月は9月CPIが公表されるまでは50bpへの利上げ幅縮小が予想されていたが徐々に水準を切り上げ、今や75bpが優勢となっている。現時点で予想されている年末時点のFF金利(誘導目標上限値、25bp刻み)は4.75%となっている。2023年入り後は5月までに累積25bp~50bpの利上げが織り込まれており、予想ターミナルレート(政策金利の最終到達点)は5.00~5.25%で付近で推移している。筆者は引き続き12月FOMCの利上げ幅が50bpに縮小されるとの予想を据え置くがその不確実性は大きい。

図表10
図表10

  • 11月FOMCの予想利上げ幅が75bpで固まっている現状、12月FOMCに向けて注目すべきはそれまでに景気後退の兆候がどれほど出現するかであろう。その点、米景気の先行指標として代表的な存在であるISM製造業景況指数は重要な役割を担うと考えられる。9月に50.9まで低下し既に節目の50割れが視野に入っているISM製造業景況指数が12月までに50を割れるようなことがあれば、Fedの政策態度に一定の影響を与えるだろう。ISM製造業の先行指標として有用なフィラデルフィア連銀製造業景況指数とNY連銀製造業景況指数は10月に強弱区々となり、10月ISM製造業が50を僅かに上回る現在の水準を維持することを示唆したが、Fedの金融引き締めによって住宅市場を中心に広範な経済活動が減速していることを踏まえると、11月分(12月2日公表)が50以下の領域に転落することは十分に考えられる。もちろんインフレ退治を最優先課題とする現在のFedがISM製造業の50割れを以って金融引き締めを停止するとは思えないが、金融引き締めの度合いを調整する材料としては十分だろう。端的に言えば、ISM製造業の50割れが利上げ幅縮小(75bp→50bp)の理由になり得ると筆者は考えている。そうなった場合、ターミナルレートの予想は安定し、長期金利の上昇圧力は一服するだろう。市場参加者はISM製造業の50割れを「良い景気後退」と見做すだろう。

図表11
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藤代 宏一


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