株高不況 株高不況

米雇用統計 平均時給は「良い鈍化」

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月128程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年は毎FOMCで利上げを実施するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。NYダウは▲0.1%、S&P500は▲0.1%、NASDAQは+0.1%で引け。VIXは24.6へと低下。
  • 米金利はベア・フラット化。堅調な雇用統計を受けて利上げ観測が再び高まった。債券市場の実質金利は0.700%(+5.7bp)へと上昇。
  • 為替(G10)はUSD安基調。USD/JPYは136前半で一進一退。コモディティはWTI原油が104.8㌦(+2.1㌦)へと上昇。銅は7805.5㌦(▲17.0㌦)へと低下。金は1742.3㌦(+2.6㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ(前日差)
米国 イールドカーブ(前日差)

米国 予想インフレ率(10年BEI)
米国 予想インフレ率(10年BEI)

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

注目点

  • 6月米雇用統計によると雇用者数は前月比+37.2万人と、5月と同程度の伸びとなり市場予想(+26.5万人)を上回った。新規失業保険申請件数やISM製造業・非製造業景況調査など複数の雇用関連指標が悪化方向にあったたため、既に労働市場の改善ペースが鈍化しているとの見方が生じていたが、今回の結果はそうした懸念を払拭するものであった。もっとも、雇用は本来、景気の遅行指標であり先行きを予測する上でさほど有用ではない。したがって、今回の雇用統計を以って景気後退が避けられると判断するのは余りにも早計であろう。

  • 雇用者数を業種別にみると、レジャー・ホスピタリティ(宿泊飲食店等接客業)は+6.7万人と回復傾向を維持し、教育(+9.6万人)と専門職(+7.4万人)が続いた。運輸(+3.5万人)、製造業(+2.9万人)も底堅さを保った。雇用者数の水準は2020年1月対比で99.9%となり、量的回復は一つの節目にほぼ到達した状況にある。

米国 雇用者数
米国 雇用者数

米国 雇用者数
米国 雇用者数

米国 業種別雇用者数
米国 業種別雇用者数

  • 失業率は4ヶ月連続で3.6%であった。もっとも、労働参加率(62.34%→62.17%)の低下を伴った点はネガティブ。就業率(就業者数÷人口)は59.93%へと0.15%ptも低下した。企業の人手不足感が著しく、求人件数が高止まりする中、労働市場へ(再)参入する動きが一服したことは供給制約の長期化を懸念せざるを得ない。特にアーリー・リタイア勢が多く含まれる55歳以上の労働参加率低下はネガティブである。他方、失業者を最も広義な尺度で捉えて算出するU6失業率(フルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人を失業者と見なす)が6.7%へと大幅に低下したことは好感される。空前の人手不足下における労働需給のミスマッチが緩和している可能性がある。

米国 失業率
米国 失業率

米国 失業率
米国 失業率

米国 労働参加率・就業率
米国 労働参加率・就業率

米国 年代別労働参加率
米国 年代別労働参加率

  • 平均時給は前月比+0.3%、前年比+5.1%と市場予想(前月比+0.3%、前年比+5.0%)に概ね一致。3ヶ月前比年率では+4.22%、同3ヶ月平均では+4.33%と下方屈折。賃金の瞬間風速は減速基調にあり、間もなく前年比伸び率のピークアウト感は鮮明化が予想される。賃金上昇については、購買力が「インフレ負け」しないとの視点でみればポジティブだが、そもそものインフレの原因が賃金上昇にあるとの見方に基づけばここまで極端な上昇はネガティブである。前年比5%超の伸びは2019年対比で明確に高く、正常な状態とは言い難い。その点において今回の結果は「良い鈍化」と捉えて差し支えない。

  • 週平均労働時間は34.5時間と前月比横ばいであった。パンデミックの回復初期局面にあたる2020年後半は少ない人手で生産活動を支える構図にあり平均労働時間は著しく長期化したが、労働市場の量的回復が進んだことで、パンデミック発生前のレンジ上限へと短縮化した。これらの結果、名目総賃金(就業者数×時給×労働時間)は前年比+9.34%へとピークアウトし、3ヶ月前比年率(3ヶ月平均)では+7.1%へと減速した。

米国 平均時給
米国 平均時給

米国 平均時給
米国 平均時給

米国 週平均労働時間
米国 週平均労働時間

  • なお、13日発表の6月CPIは前年比+8.8%が予想されており、インフレのぶり返しが懸念される状況にある。コアCPIは前年比+5.7%へと0.3%ptの減速が予想されているとはいえ、Fedが金融引き締めの手を緩める直接的な材料になるとは考えにくい。高インフレと景気拡大が併存する下、Fedは7月FOMCで75bpの利上げを実施した後、9月FOMCは50bpに利上げ幅を縮小、その後11月と12月FOMCで各25bpの利上げを決め、FF金利(誘導目標上限値)は3.5%になると予想される。もっとも、その時々の状況で「既に景気後退入り」との判断が下されれば、果敢な利上げ計画が即座に修正される可能性もある。

藤代 宏一


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