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- 相次ぐ不祥事で党内外の支持を失った英国のジョンソン首相が辞任を表明した。近く後継党首の選出手続きが開始され、秋までには後継党首が選出され、新首相が誕生する。世論調査でリードするのは、ジョンソン首相に近いウォレス国防相。財政運営を巡ってジョンソン首相に反旗を翻したスナク前財務相がこれに続く。首相交代に伴う政策面での変化としては、財政運営とEU関係に注目が集まる。物価高騰による家計負担軽減措置の強化やEUとの関係改善に期待する声も多いが、こうした問題に対する後継党首候補の立場は今のところ必ずしも明確ではない。
2日間で50人以上の閣僚が辞任し、閣内からの支持を失った英国のジョンソン首相は7日、首相官邸前で記者会見を開き、辞任の意向を表明した。膠着するブレグジット協議をまとめて英国のEU離脱を成し遂げ、2019年末の総選挙で保守党を地滑り的な勝利に導いたジョンソン首相だが、新型コロナウイルスの行動制限期間中に政府関係者が飲食・飲酒を伴うパーティーを開催した問題では首相自らも罰金を科され、最近では性的不祥事を起こした院内幹事長代理が過去に同様の事件を起こしていた事実を隠していたことが明るみになり、党内外から厳しい批判に晒されていた。5日にジャビド保険相とスナク財務相の重量級閣僚が辞任したのに続き、首相に辞任を進言した盟友のゴーブ平準化・地域活性化担当相を更迭、自身に近い閣僚からも首相辞任や党首不信任を求める声が相次いでいた。議会任期固定法の廃案で手にした解散カードをちらつかせたほか、後任閣僚を次々と指名し、続投に意欲をみせたが、党首不信任手続きの前倒しを可能にする党ルールを変更する動きもあり、このまま首相の座に居座っても、与党党首の座を追われるのは時間の問題だった。ジョンソン首相は党首を辞任するが、後継党首が選出されるまでの間、暫定的に首相にとどまる。
来週にも後継党首の選出手続きが開始される。正式な党首候補となるには、保守党所属の下院議員8名以上が支持する必要がある。3人以上の党首候補がいる場合、保守党所属の下院議員による投票で、2人に絞り込まれる。初回投票では獲得票が5%未満の候補が脱落、二回目の投票ではこれが10%に引き上げられ、三回目以降の投票では最下位の候補が脱落する。投票は通常、火曜日と木曜日に行われるが、議会会期が終わる7月21日までに議員投票を終えるため、別の曜日にも投票が設定されることも考えられる。候補者が2名に絞り込まれた後、全ての保守党党員を対象とした郵送での投票が行われ、その勝者が後継党首に選出される。党員投票前には2候補による遊説などが行われ、通常1ヶ月程度を要する。各候補は議員投票・党員投票の何れの段階でも自ら立候補を取り下げることが出来る。立候補の取り下げで候補者が1名となった場合、党員投票を待たずに後継党首が選出される。党員投票が回避されれば7月中にも、党員投票が行われる場合、8月下旬から9月初旬にかけて後継党首が選出される模様。保守党は議会の過半数の議席を持つため、総選挙は行われず、後継党首が首相に任命される。2019年の前回の党首選出では、5月24日にメイ首相が6月7日に党首を辞任する意向を表明、同月10日に立候補者の届け出が締め切られ、13日に初回投票、18日に二回目の投票、19日に三回目の投票、20日に四回目と五回目の投票が行われ、候補者が2名に絞り込まれた。7月22日に党員投票が締め切られ、23日にジョンソン氏が新たな党首に選出された。2016年の党首選出では、6月24日にキャメロン首相が辞意を表明、30日に立候補者の届け出が締め切られ、7月5日に初回投票、7日の二回目投票で候補者が2名に絞り込まれたが、対立候補が11日に立候補を取り止めたため、党員投票が行われないまま、メイ氏が新たな党首に選出された。
今のところ、ブレーバーマン法務長官とトゥゲンハート外務委員会委員長が後継党首選に立候補し、シャップス交通相とジャビド前保険相も立候補の意向が伝えられる。保守党党員を対象に7月6・7日に行われた世論調査では、ウォレス国防相を筆頭に、モーダント国際貿易相、スナク前財務相、トラス外相、ゴーブ前平準化・地域活性化担当相(出馬しない意向)、ラーブ副首相兼司法相(出馬しない意向)、トゥゲンハート外務委員会委員長(出馬の意向)、ハント元保険相、ザハウィ財務相、ジャビド前保険相(出馬の意向)などの名前が上位に挙がる。各社によって多少の変動はあるが、ブックメーカーの掛け率でも、ウォレス国防相が後継首相の最有力候補とされ、これをスナク前財務相、モーダント国際貿易相、トゥゲンハート外務委員会委員長、ジャビド前保険相、トラス外相、ハント元保険相、ザハウィ財務相が追う。議員投票は首相選出後の閣僚人事などの党内力学にも左右される。軍出身のウォレス国防相はジョンソン首相に近い人物。ジョンソン首相に反旗を翻したスナク前財務相は、コロナ危機対応での堅実な手腕が評価されるが、財政規律重視の姿勢が党内でどう受け止められるか、インドの大富豪の娘である妻の脱税疑惑も打撃。
首相交代に伴う政策面での変化としては、今後の財政運営とEU離脱問題への対応に注目が集まる。相次ぐ政権のスキャンダルで失った国民の信頼回復に向けて、物価高騰による家計負担の軽減措置を強化することや、景気悪化を食い止めるため、来年に計画する法人税増税を撤回するとの見方も浮上している。この点は、後継首相とともに次期財務相が誰になるかが影響しよう。減税を巡ってジョンソン首相とぶつかったスナク前財務相が首相の座を射止める場合、財政規律を重視し、比較的慎重な財政運営が行われる可能性がある。他の候補が後継首相となる場合、スナク前財務相よりもやや拡張的な財政運営となる公算が大きい。ただ、首相交代のタイミングを考えると、次期政権の財政運営が本格的に反映されるのは来年以降とみられる。EU離脱後の北アイルランドでは、英国本土との間の物流混乱や英国との一体性維持を求めるユニオニスト住民の間で不満が高まっている。北アイルランド議定書の見直しを巡るEUとの交渉が膠着するなか、ジョンソン首相は先月、議定書を変更する法案を議会に提出した。EU側はこうした英国の一方的な動きに反発を強め、法的措置を開始するとともに、法案を撤回しなければ関税賦課などの対抗措置を取る可能性を示唆している。ジョンソン首相の退陣でEUとの関係改善に期待する声もあるが、次期首相の最有力候補のウォレス国防相はジョンソン首相に近い人物として知られ、強硬姿勢を続ける可能性もある。
田中 理
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