イベントワクワク割の効果はGoToイベントを上回るか

~GoToイベントキャンペーンと同様に、大きな需要押し上げ効果は見込み難い~

小池 理人

要旨
  • コロナによって打撃を受けたイベント関連需要を喚起するため、イベントワクワク割の実施が検討されている。GoToイベントキャンペーンとの違いとしては、3回目のワクチン接種歴か陰性の検査結果が求められるなど、ワクチン接種率の向上を狙った設計となっている。
  • 過去に実施されたGoToイベントキャンペーンでは、実施時期が感染拡大時期と重なったことや認知度不足により、イベント関連需要を大きく押し上げる効果は確認できなかった。
  • イベントワクワク割もオミクロン株が広がる中で大幅な感染状況の改善は見込み難いこと、予算規模が388億円と小さいことなどから、大きな需要喚起効果は見込み難いと考えられる。
  • ただし、イベント関連産業に対する一定の支援は必要となると考えられる。その場合には、イベント需要を割引によって喚起するよりも、オンライン対応等への支援などを強化するなどの施策が必要となるだろう。

新型コロナウイルスの影響により、打撃を受けるイベント関連産業

新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな影響を受けている文化芸術・スポーツ等に関するイベントの需要喚起を目的に、イベントワクワク割の実施が検討されている。音楽コンサートやスポーツ観戦、遊園地・テーマパークなどが対象となり、チケット代金の2割相当分(上限額2,000円)が割引となる。2020年10月29日~2021年12月31日まで実施されたGoToイベントキャンペーン(以下GoToイベント)との違いとしては、3回目のワクチン接種歴か陰性の検査結果が求められる点が挙げられ、イベント関連の需要喚起に加え、ワクチン接種率の向上を狙った設計になっている。

新型コロナウイルスの感染拡大以降、消費者は余暇を自宅で過ごすことが多くなり、イベント関連産業は大きな打撃を受けている。日本生産性本部のレジャー白書によると、2020年の余暇活動は動画鑑賞や読書、音楽鑑賞がトップ3に入る一方で、映画、動物園、植物園、水族館、博物館など外出を伴うものについては、それぞれ順位を落としており、感染リスクを低減させるため、消費者が余暇時間の使う場を家の外から内に移していることが示されている。供給側の統計である第3次産業活動指数を見ても、音楽・芸術興行やスポーツ興行、遊園地・テーマパークはいずれも水準が低迷していることが示されており、新型コロナウイルスが確認されてから2年以上が経過した現在においても、外出や不特定多数の人との接触を伴うイベントに関して、コロナ前の水準に戻っていない。

余暇活動の参加人口
余暇活動の参加人口

盛り上がりに欠けたGoToイベントキャンペーン

2020年には、深刻な打撃を受けたイベント・エンターテイメント産業を支えるため、GoToイベントキャンペーンが実施された。しかし、実施されたGoToイベントがイベント消費を大きく押し上げたかというと、残念ながらそうなってはいない。GoToイベントが実施された2020年10月から2021年12月までの第3次産業活動指数の動きを見ると、大きな押し上げ効果は確認できない。とりわけ、GoToイベント開始直後については、逆に指数が低下しており、イベント関連の活動が低迷していることが示されている。

理由として挙げられるのが、感染状況の悪化だ。2020年10月から2021年1月にかけて、感染状況は大きく悪化しており、GoToイベントによる需要創出効果よりも、感染リスクによる需要抑制効果が上回ったことで、GoToイベントが実施される中であっても、イベント関連の第3次産業活動指数は低迷することとなった。当時はまだワクチンも普及していなかったこともあり、感染が急拡大することによって、人が集まることが前提となるイベントへの参加意欲を強く押し下げたものとみられる。GoToイベントの実施時期全体を見ても、感染状況悪化時には指数が低下し、改善時には指数が上昇する動きとなっており、割引よりも感染状況がイベント産業活動に大きな影響を与えていることが示されている。GoToイベント実施時に同指数が上昇する局面はあるが、その多くが感染状況が改善している時であり、GoToイベントがイベント関連の活動を押し上げたとは言い難い。

また、GoToトラベルやGoToイートと比較してGoToイベントの認知度が低かったことも、盛り上がりに欠けた要因であると考えられる。その結果、GoToイベント実施にもかかわらず、イベント関連需要は低水準での推移が続く結果となった。

イベントワクワク割の需要喚起効果にも疑問符がつく

では、実施が検討されているイベントワクワク割は、2022年のイベント消費を押し上げるのであろうか。筆者は2020年のGoToイベント実施時のように低迷には至らないまでも、大きな下支えとなることは期待できないとみている。その理由として、規模の小ささが挙げられる。イベントワクワク割の予算は388億円と小さく、需要喚起効果には疑問符がつく。日本イベント産業振興協会(JACE)によると、2020年のイベント消費規模は8兆6,649億円注1と推計されており、イベントワクワク割がイベント関連消費を大きく押し上げることは期待し難い。

感染状況の点からも懸念が残る。まん延防止等重点措置の解除によって、感染防止計画を定めるという条件の下ではあるが、人数制限も撤廃され、経済活動の制約が大きく緩和される点は好材料であると考えられる。しかし、感染状況はピークを越えたものの、依然として高水準で推移しており、予断を許さない状況が続いている。今後再び感染者数が増加に転じる可能性も否定はできず、仮にそうなった場合には、前回のGoToイベントと同様に、需要喚起が不発に終わる可能性もあるだろう。

なお、イベント関連産業は、今後も感染再拡大時に再び人数制限などの経済活動への制約が課される可能性があるため、一定のサポートは必要であろう。感染拡大時における強靭性を強化する観点からは、割引による需要喚起よりも、オンライン配信への対応が望ましいと考えられる。コンサートや舞台、お笑いなど幅広い分野でオンライン配信が実施されており、実際に売上を立てている。オンライン対応への支援策は既に実施されており、例えば、コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金がイベント・エンターテイメントに関する補助金として活用されている。同補助金が活用されることにより、イベント産業のオンライン配信等への対応に貢献しているが、2022年3月24日時点で予算消化率は73.1%に達しており、支援の継続が困難になってきている。今後は、同様の補助金を増額するなどして、ウィズコロナ時代に向けた投資を支援することも必要となるだろう。


注1 推計値にはイベントに対する様々な支出(出発前、交通費、宿泊費、会場内、会場外、イベント後)が含まれるため、この点については割り引いて考える必要がある。

小池 理人

小池 理人

こいけ まさと

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 日本経済短期予測、観光経済

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