注意すべき「金融緩和縮小の動きにつながることはない」

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月28,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月117程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年は毎FOMCで利上げを実施、年央にはQTに着手するだろう。

本日の金融政策決定会合では金融政策の現状維持を決定。一方、声明文では個人消費の基調判断を引き下げた。1月の段階では「サービス消費を中心とした下押し圧力が和らぐもとで、持ち直しが明確化している」としていたものを「サービス消費を中心とした下押し圧力の強まりから、持ち直しが一服している」へと変更。輸出、生産は「増加を続けている」、設備投資は「持ち直している」で据え置き。リスク要因には、ロシアのウクライナ侵攻に伴う国際金融資本市場や資源価格に与える影響が加わった。国内景気の先行き判断部分は「資源価格上昇の影響を受けつつも回復していくとみられる」と資源価格への言及が追加された。

注目は黒田総裁の記者会見。最近の物価上昇、円安について質問が集中しよう。それに先立って本日発表された2月の消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年比+0.6%。携帯通信料の引き下げ影響を除くと実質的に2%程度の上昇であった。日銀が理想とする賃金上昇に起因する内生的インフレではないものの、輸入物価主導で2%の物価上昇が実現している。2月の輸入物価は円ベースが前年比+34.0%、契約通貨ベースが+25.7%と、それぞれ2008年と同等ないしは上回る伸び率であった。輸入物価上昇の過半は国際商品市況の上昇で説明できるが、円安が輸入インフレを助長するという意味において「悪い」側面を有することは事実。実質実効為替レートの下落が進むなか、USD/JPYが120に接近している現状、これまで「円安は日本経済にプラス」との見解を繰り返してきた黒田総裁がどのように見解を変化するのか注目したい。

輸入物価
輸入物価

とはいえ、円安抑制を目的に日銀が緩和策の修正に動く可能性は低い。緩和策の修正があるとすれば、その理由は「悪い円安」の文脈ではなく、世界的なインフレ高進で、金融引き締め方向に舵を切る海外主要中央銀行の説明を借りる形になるだろう。米国や英国、直近では台湾中銀が「インフレ退治」を理由に金融引き締めを実施した。日銀がそうした流れに追随する形を取れば、自然な流れを演出でき、従来から指摘されていた副作用の問題も同時に解決できる。副作用とは、金融機関収益の圧迫や年金・保険の運用難を通じた国民の資産形成阻害などが累積的に拡大していることである。

なお、黒田総裁は最近の物価上昇が「金融緩和縮小の動きにつながることはない」との見解を繰り返しているが、黒田総裁(日銀)が言うところの「緩和縮小」はその定義に注意を払いたい。仮に長短金利水準の引き上げ、長期金利操作の撤廃、長期金利の操作対象年限短縮化といった一般的に金融引き締めと理解される政策変更があったとしても、日銀が「金融引き締めや緩和縮小の意図はない、寧ろ長期にわたって緩和的な金融環境を作り出すための措置」と説明すればそれまでであり、「2%の物価目標達成まで金融緩和を継続する。必要なら追加的な緩和措置を講じる」との姿勢に対して齟齬は生じないことになる。2021年3月のETF買入れ基準厳格化の際もそのように説明した経緯があり、これがマイナス金利撤回を含むYCC修正の際にも適用される可能性がある。筆者は2023年4月まで現在のYCCが続くとの予想を維持するが、緩和修正の可能性は一定程度意識しておきたい。

藤代 宏一

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