季節調整ガチャに攪乱された1月雇用統計 ただしFEDがきれいなデータを待つとは考えにくい

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを少なくとも2023年4月までは維持するだろう。
  • FEDは、2022年3月に利上げ開始、年後半にはQTに着手するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。NYダウは▲0.1%、S&P500は+0.5%、NASDAQは+1.6%で引け。VIXは23.20へと低下。
  • 米金利カーブはベア・フラット化。FF金利先物が織り込む6月FOMCまでの利上げ回数は3.2回へと上昇。7年10年金利差は逆イールド目前の2.2bpまで縮小。
  • 為替(G10通貨)はUSDが強く、USD/JPYは115前半へと上昇。コモディティはWTI原油が92.3㌦(+2.0㌦)へと上昇。銅は9841.5㌦(+9.0㌦)へと上昇。金は1806.6㌦(+3.6㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブと米国 実質金利(10年)と米国 長短金利差(7年10年)
米国 イールドカーブと米国 実質金利(10年)と米国 長短金利差(7年10年)

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

米国 長短金利差(7年10年)
米国 長短金利差(7年10年)

注目ポイント

  • 1月米雇用統計の雇用者数は前月比+46.7万人と市場予想(+12.5万人)を大幅に上回った。また過去2ヶ月分は+70.9万人と極めて大幅に上方修正され、直近3ヶ月の増加ペースは+54.1万人へと加速した。事前にFED高官や政府関係者から「1月雇用統計が弱くても不思議ではない」といった発言が多くあり、市場関係者はネガティブサプライズに身構えていたことから、色々な意味で意外感の強い結果であった。

  • 1月雇用統計は統計の年次改定(人口推計、季節調整)によって2021年12月速報値との連続性が失われている。そのため、結果を額面通り受け取ることは避けたい。季節調整の改定によって11・12月分が70.9万人も上方修正された反面、6・7月分が80.7万人も下方修正されるなど、季節調整による「ガチャ」が発生。こられを踏まえると過去2ヶ月分の上方修正が真に実勢を反映しているかは微妙。

  • それでも統計上は9月に失業保険の各種特別措置が終了した後、労働市場の回復ペースが強まったことが示された。業種別では飲食店等接客業(レジャー・ホスピタリティ)が+15.1万人、運輸が+5.4万人と堅調。レジャー・ホスピタリティは自発的離職率が高まる反面、好待遇の新規採用が盛んであることが示された。

  • 失業率は4.0%へと小幅に上昇。もっとも、労働参加率(61.91%→62.19%)の大幅な上昇を伴っており「良い失業率上昇」と言える。労働市場の「質」を見極めるために有用なU6(フルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人を失業者と見なした広義失業率)は7.1%へと0.3%pt低下し、パンデミック発生前の水準へ回帰した。相当な幅を持って解釈する必要があるものの、労働市場の質的改善は進んでいると判断される。

米国 雇用者数と米国 U6失業率・労働参加率
米国 雇用者数と米国 U6失業率・労働参加率

米国 雇用者数
米国 雇用者数

米国 U6失業率・労働参加率
米国 U6失業率・労働参加率

  • 平均時給は前月比+0.7%、前年比+5.7%であった。人手不足解消が企業の喫緊の課題となるなか、3ヶ月前比年率では+6.5%へと達した。他方、週平均労働時間は34.5時間に短縮。労働投入量が緩慢ながら充足されるなか、オミクロン株まん延の影響があったとみられる。これらの結果、名目総賃金(就業者数×時給×労働時間)は前月比+0.5%、前年比+9.6%と増勢維持。

米国 平均時給と米国 週平均労働時間
米国 平均時給と米国 週平均労働時間

米国 平均時給
米国 平均時給

米国 週平均労働時間
米国 週平均労働時間

  • 今回の結果は統計のテクニカル要因を多分に含んでおり、雇用統計単独の評価は難しい。ただしFED高官がどう判断するかは別問題。インフレ退治が最優先課題となるなか、データの蓄積を「待つ」選択肢は考えにくく、FED高官の認識に大きな影響を与えないだろう。年前半はインフレ集中対応期間として3月以降は連続利上げが見込まれる。筆者個人としては3月の利上げ幅は25bpとして、5月と6月に追加で25bpの利上げを敢行すると予想。

藤代 宏一

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