工作機械受注が教えてくれる景況感

~サイクルは後半へ~

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月31,500程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年央に資産購入を終了、22年終盤に利上げを開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。NYダウは▲0.4%、S&P500は+0.1%、NASDAQは+0.5%で引け。VIXは17.70へと低下。
  • 米債市場は休場。
  • 為替(G10通貨)はUSDが全面高。USD/JPYは114近傍で推移。コモディティはWTI原油が81.6㌦(+0.3㌦)。銅は9633.5㌦(+100.5㌦)へと上昇。金は1863.9㌦(+15.6㌦)へと上昇。

注目ポイント

  • 10日発表の10月工作機械受注は前年比+81.5%へと伸び率を高め、単月の受注額は1492億円と約3年ぶりの高水準に到達。筆者作成の季節調整値は前月比+11.1%、1517億円であった。国内向けは季節調整済み前月比+0.8%、前年比+74.0%、外需は季節調整済み前月比+16.2%、前年比+85.5%であった。

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

  • 外需は夏場に伸びが鈍化したものの、ここへ来て増加に転じた。地域別詳細は確報を待つ必要があるが、9月までの傾向から判断すると米国向けと欧州向けが高水準を維持する下で、中国が回復した可能性が高い。中国は生産活動が鈍化するなかで投資活動も下火になっていたが、東南アジアのコロナ感染状況が好転したこともあり、投資活動が再開された可能性が指摘できる。一部には納期延長を見越し、受注を前倒する動きもあったとみられる。その他では、韓国と台湾向けが旺盛なIT関連財需要を背景に好調を維持した可能性が高い。また米国向けはISM製造業景況指数が60前後で推移するなど生産活動の回復が顕著になる下、省力化目的もあり投資活動が復調しているとみられる。欧州向けは自動車生産の停滞にもかかわらず復調している。

  • 国内向けはここへ来て回復が鮮明化してきた。一般機械、金属機械、電気機械、精密機械、鉄鋼など多くの業種で回復し、単月の受注額は2ヶ月連続で500億円を超えた。自動車からの受注は9月時点で前年比+43.7%となお鈍いものの、回復基調は確りしてきた。半導体不足によって生産が停滞するなか、モデルチェンジの遅れもあって投資は盛り上がりを欠いていた模様だが、自動車生産の足かせとなってきたアジアからの部品不足は正常化に向かい工場稼働率の回復が期待される。自動車大手が12月以降の挽回生産を計画しているとも伝わっており、今後は投資活動も回復力を増していくと予想される。

工作機械受注「外需」(地域別)と工作機械受注「国内向け」(需要業種別)
工作機械受注「外需」(地域別)と工作機械受注「国内向け」(需要業種別)

工作機械受注「外需」(地域別)
工作機械受注「外需」(地域別)

工作機械受注「国内向け」(需要業種別)
工作機械受注「国内向け」(需要業種別)

  • 工作機械業界は、その受注サイクルが世界経済の包括的指標であるOECD景気先行指数と連動するほか、アナリスト予想(TOPIX予想EPS)とも一定の連動性を有する。決して大きくはない業界規模でありながら世界経済の動向を掴むうえで優れた指標と言える。

工作機械受注と工作機械受注・OECD指数
工作機械受注と工作機械受注・OECD指数

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注・OECD指数
工作機械受注・OECD指数

  • そこでサイクルの位置取りを確認するために縦軸に工作機械受注の水準(36ヶ月平均からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、現在は右上領域を左方向に進んでおり、増加サイクルの後半にあると判断される。過去の経験則に従うなら、今後は高水準を維持するも回復モメンタムは弱まると予想される。
    工作機械受注
    工作機械受注

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。