9月テーパリング開始決定のハードルは高い

~雇用統計は決定打にならない見込み~

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年末までに資産購入を終了、23年後半に利上げを開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株市場はまちまち。NYダウは▲0.1%、S&P500は+0.0%、NASDAQは+0.3%で引け。VIXは16.10へと上昇。
  • 米金利カーブはブル・フラット化傾向。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.341%(+0.3bp)へと上昇。長短金利差(5年10年)の縮小傾向は一服しつつある。
  • 為替(G10通貨)はUSDが軟調。USD/JPYは110近傍で一進一退。コモディティはWTI原油が68.6㌦(+0.1㌦)へと上昇。銅は9335.5㌦(▲184.5㌦)へと低下。金は1813.8㌦(▲2.0㌦)へと低下。

図表
図表

図表
図表

図表
図表

図表
図表

図表
図表

経済指標

  • 米新規失業保険申請件数(季節調整値)は34.0万件と前週比1.4万件減少。原数値も27.5万件へと減少し、双方ともパンデミック発生以降の最低を更新した。パンデミック発生前の20万件前半と比較すればなお高水準だが、正常化に近づきつつある。継続受給者数は274.8万人へと前週比▲16万人減少。共和党色の強い半数近くの州で失業保険の特例措置が打ち切られた影響もあって減少基調にある。9月6日には残りの半数の州でも特例措置が打ち切られるため、その前後に失業保険受給者数は更なる減少が期待される。

図表
図表

図表
図表

図表
図表

注目ポイント

  • 本日発表される8月米雇用統計は9月FOMC(22日)におけるテーパリング開始決定に繋がる可能性がある。ただし、その条件としては雇用者数が前月比100万人を明確に上回る増加を示すなど「非の打ち所がない」結果が必要になるだろう。

  • テーパリング開始の条件は、物価安定と最大雇用というFEDの目標の実現に向けた「顕著なさらなる進展(substantial further progress)」とされている。それは単一の指標ではなく総合的判断に基づくとされているが、最重要指標は雇用統計だろう。

  • 現時点で雇用者数のコンセンサスは前月比+72.5万人、失業率は5.2%へと0.2%pt低下。振れの大きい雇用統計の性質上どんな数字が出てくるかは未知数。正直なところ結果は蓋を開けてみなければわからないが、上下双方にサプライズがあり得ることは認識しておきたい。

  • ここで前回7月FOMC以降のFEDの情報発信を再確認する。7月FOMCではテーパリング開始について具体的な「検討」を開始したことが声明文に示された(口頭では6月FOMC後のパウエル議長記者会見にて言及あり)。声明文にはテーパリング開始の条件となる「最大雇用と物価安定の目標に向けたさらなる著しい進展」について「経済は(中略)前進している」との記載があった。当該部分は市場関係者にテーパリング開始決定が近いことを伝える狙いがあったと思われる。その上で「今後数回の会合(”in coming meetings”←複数形)」においてその進展度合いの評価を重ねるとの記載が加わった。複数形を用いたのは、9月FOMCではなく11月以降のFOMCまで決定を待つことをほのめかす意図があったとみられる(※8月と10月はFOMC開催なし)。

  • その後8月6日に発表された7月雇用統計の雇用者数は+94.3万人とテーパリング開始の条件を十分に満たす強い結果であった。また8月18日に公開された7月FOMC議事要旨には「大半の参加者(most participants)が今年中に購入額の減額を始めることが適当」との記載があり、年何すなわち9、11、12月の何れかのFOMCにおけるテーパリング開始決定の可能性が大幅に高まった。その後8月27日のジャクソンホール会議で、パウエル議長はテーパリング開始決定の時期について明確なヒントを与えず、それまでの見解を繰り返し、今日に至る。その間、経済指標は概ね好調を維持し、株価は高値更新を連発。一方で最近は変異株の脅威が米国に迫り、たとえばフロリダ州では一日あたりの死亡者数が過去最高で推移するなど、今後の経済活動に重要な影響を及ぼしかねない要素も出てきている。

  • これらに鑑みると、9月FOMCにおけるテーパリング開始決定には8月の雇用者数が100万人を明確に上回る増加を示し、なおかつ他の尺度(失業率、労働参加率、平均時給、労働時間など)も強さを示すといった高めのハードルをクリアする必要があるだろう。パウエル議長の姿勢がFOMC参加者の中心的見解よりもハト派寄りであることを踏まえると、9月FOMCにおけるテーパリング開始決定の可能性は低いと判断される。

藤代 宏一

Recommend

おすすめレポート