①待ちに待ったジャクソンホール講演は小イベントに ②サービス業PMI は内需停滞を浮き彫りに

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年末までに資産購入を終了、23年後半に利上げを開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国市場は上昇。NYダウは+0.6%、S&P500は+0.8%、NASDAQは+1.2%で引け。VIXは18.60へと上昇。
  • 米金利カーブは中期ゾーンを中心に金利上昇。他方、超長期は低下。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.264%(▲3.1bp)へと低下、過去数ヶ月のレンジ下限付近にある。
  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは109後半で越週。コモディティはWTI原油が62.3㌦(▲1.4㌦)へと低下。銅は9037.0㌦(+143.0㌦)へと上昇。金は1781.0㌦(+0.8㌦)へと上昇。

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注目ポイント①

  • 8月26-28日はジャクソンホール会議が催される。注目のパウエル議長講演は日本時間27日(金)の23時に開始予定(変異株の感染拡大によって8月20日に急遽オンライン開催への変更が決定された)。題目は「経済見通し」とされており、目先の金融政策運営、すなわちテーパリングについて何らかの言及がある見込み。

  • 現在、市場関係者の間では9月3日に発表される8月雇用統計が6・7月並みに強い結果となれば、9月21~22日のFOMCでテーパリング開始が決定されるとの見方がある。もっとも筆者は、労働市場の十分な回復が実績値として確認できていない現状に鑑みて、その可能性は低いと判断している。失業給付の特例措置が期限切れとなり、これまで「休み得」とも言える状態にあった人々が復職を果たすと期待される9月のデータを待ってから判断する方がより合理的と考えられるためだ。

  • また変異株の感染拡大も重要。死者数、感染者数は依然ピーク時を下回るものの、足もとでは急激な増加基調にあり、今後、冬の訪れを見据えれば、経済活動が再び制限される可能性も否定できなくなってきた。米国のコロナ感染者数の約3割を占めるフロリダ州とテキサス州を中心に感染が爆発し、フロリダ州の死亡者数は1月のピーク時を大幅に超えている。この2州はワクチン接種率こそ全米平均と同程度であるが、マスク着用などコロナ感染対策に消極的とされており、行動変容が起きにくいとの指摘が多い。現在のところ経済活動に目立った影響は確認されていないが、このまま感染拡大が止まらなければ、経済活動に何らかの制限が加わる恐れがある。

  • 変異株の感染拡大についてはタカ派寄りのカプラン・ダラス連銀総裁も警戒姿勢を示した。同総裁は9月FOMCにおけるテーパリング開始決定を支持するなど最もタカ派的に分類される存在であるが、20日の講演では「デルタ変異株の感染拡大が長引く、ないし状況が英国やインドで見られたものと異なった形で展開し、需要への影響開始といった点でより厳しい状況になるようであれば、私はこれまでの見解に固執することなく柔軟な姿勢で機動的に対応したい」としてタカ派的見解を修正する用意があることを示した。こうした状況下、ハト派寄りの見解を有するパウエル議長がジャクソンホール講演で9月のテーパリング開始決定を明示的に示唆する可能性は低いのではないか。

注目ポイント②

  • 本日発表された日本の8月PMIはネガティブ。通常、市場関係者の注目度が高い製造業PMIは52.4と強さを保った反面、サービス業PMIは43.5へと落ち込み、総合PMIは45.9へと低下した。製造業は半導体不足に加え、中国の景気減速が新たな懸念材料として浮上するといった懸念材料もあったが、よく持ち堪えた印象。そうした中でサービス業PMIは20年4~5月の緊急事態宣言を除くとパンデミック発生後の最低を更新した。度重なる緊急事態宣言の延長・拡大によって対面型サービス業を中心に内需が停滞、消費者の将来不安が高まるなか、「し好的サービス」を中心に苦境が続いたとみられる。需要者としてのサービス業が停滞すれば、やがて製造業の業績も蝕んでしまう恐れがあり、共倒れが懸念される。株式市場目線では、欧米株対比で日本株が遅れをとっている理由として、このサービス業不況が重要だろう。

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藤代 宏一


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