既往最高近辺で推移する「外需」

~見逃し配信 貿易統計と機械受注~

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年末までに資産購入を終了、23年後半に利上げを開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国市場は下落。NYダウは▲1.6%、S&P500は▲1.3%、NASDAQは▲0.9%で引け。VIXは20.70へと上昇。
  • 米金利カーブはツイスト・フラット化。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.241%(▲5.2bp)へと低下。実質金利は▲0.812%(▲1.6bp)へと低下。金利先物から逆算すると金融市場参加者は22年末までの利上げ開始、その後、23年末までに約4回(追加で3回)を織り込みつつある。

米国 イールドカーブ、ユーロドル金利先物
米国 イールドカーブ、ユーロドル金利先物

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

ユーロドル金利先物
ユーロドル金利先物

  • 為替(G10通貨)はUSDとJPYが強かった。USD/JPYは110近傍で一進一退、EUR/USDは1.18半ばへと低下。コモディティはWTI原油が71.6㌦(+0.6㌦)へと上昇。銅は9145.5㌦(▲170.0㌦)へと低下。金は1767.9㌦(▲5.9㌦)へと低下。ビットコインは下落。

注目ポイント

  • FOMCの陰に隠れてほとんど話題にならなかった日本の貿易統計と機械受注は、双方とも外需主導で日本経済が持ち直していることを示す結果であった。貿易統計の実質輸出、機械受注の外需は共に既往最高近辺にある。

  • 5月の実質輸出(当社作成)は前月比+1.5%と3ヶ月連続で増加(日銀算出値は▲0.2%と小幅減少)。水準は2019年12月を+13.9%上回り、既往最高を更新。地域別では、米国向けが+5.3%と強く伸び、ヨーロッパ向けも+4.8%と4ヶ月連続で増加。米国向けは2019年1月を+7.6%上回り、ヨーロッパ向けは▲4.5%まで戻している。他方、アジアは▲2.0%と減少、中国向けは▲3.8%であった。中国はコロナパンデミックからの回復が早かった分だけピークアウトも早く、ここへ来てやや増勢が鈍化しているようにも見えるが、水準は2019年1月を+12.6%も上回っており、均してみれば堅調と言える。中国側統計でも固定資産投資等の前年比伸び率は縮小傾向にある一方、(前月比変化を示す)PMIは製造業・サービス業ともに50を安定的に上回っている。

  • 品目別(対世界)では、電気機械が前月比+1.9%(2019年1月比+18.3%)、輸送用機械が+1.1%(同+4.7%)、一般機械が+0.2%(+9.4%)とそれぞれ伸びた。世界的なIT関連財需要の高まりと、米国における自動車需要の回復が強く効いており、そうした下で企業の設備投資意欲が復調しつつあるとみられる。

実質輸出
実質輸出

実質輸出
実質輸出

実質輸出
実質輸出

  • 次に機械統計に目を向けると、こちらも「外需」の強さが目を引いた。国内設備投資の先行指標であるコア民需(除船電)は+0.6%と増加したものの、外需ほどの力強さはなかった。資本財輸出の先行指標とされる外需は前月比+46.2%と大幅に増加。水準は大きな振れを伴いつつ着実に増加し3ヶ月平均値は既往最高を更新、2019年12月を+64.1%上回っている。

  • 株式市場との関連が深い「電子計算機等」の受注に目を向けると、季節調整値は▲1.9%と4ヶ月連続で減少したものの、前年比では+2.7%と堅調、水準は前サイクルのピークと同等を維持し、旺盛な半導体需要を映し出した。半導体製造装置の受注動向を示すとされるこの系列は、半導体関連銘柄(部材等を含む)を多く抱える日本株との連動性が強いことから、株式市場の方向感をつかむ際に重視すべき指標と言える。目下、グラフの波形は株価が大きく上方乖離しているが、これは半導体製造装置の受注がコロナパンデミックの影響をほとんど受けなかった(ベースエフェクトがない)ことで、株価上昇率(←ベースエフェクトあり)の強さが誇張されたようにみえ、だとしたら現在の株価水準にさほど違和感はない。なお、電子計算機等の受注額が機械受注(機種別)に占める割合は中長期的にみて上昇傾向にあり、その存在感は強まっている。

機械受注、機械受注 電子計算機等
機械受注、機械受注 電子計算機等

機械受注
機械受注

機械受注 電子計算機等
機械受注 電子計算機等

電子計算機等(機械受注)・日経平均、機械受注に占める電子計算機等の割合
電子計算機等(機械受注)・日経平均、機械受注に占める電子計算機等の割合

電子計算機等(機械受注)・日経平均
電子計算機等(機械受注)・日経平均

機械受注に占める電子計算機等の割合
機械受注に占める電子計算機等の割合

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。