7月FOMCでのテーパリング評価開始決定も利上げ議論なし(21年6月15、16日FOMC)

~ドットチャート中央値は23年の利上げ開始を予想~

桂畑 誠治

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21年6月15、16日に開催されたFOMCで、FRBは政策金利であるFFレート誘導目標レンジの0.00~0.25%への据え置き、月額最低1,200億ドルの資産購入の継続のほか、政策金利、資産購入に関するフォワードガイダンスの維持を全会一致で決定した。
 公表された最新のドットチャートで、23年のFFレート誘導目標レンジ中央値が、0.625%と“前回3月予想の0.00-0.25%での据え置き”から25bpの利上げを2回行う水準に上方シフトした。経済・インフレ見通しの上方修正のほか、ワクチン接種の進展で下振れリスクがより低減したことで、FOMC参加者の利上げ見通しが前倒しされたようだ。ただ、パウエル議長は「ドットはすぐれた予測とは言えず、かなり割り引いて捉えるべき」とこれまでと同様の見解を示したうえで、「利上げの議論はしていない、極めて時期尚早」とテーパリングを始めてもいない段階で、ドットチャートの上方シフトに金融市場が過剰反応しないよう促した。ただし、FF金利先物は利上げの織り込み度合いを高め、長短利回りは水準を切り上げ、ドル高が進んだ。株価は一旦調整したが、持ち直した。
 パウエル議長は記者会見で、「月額1200億ドルとしている資産購入の規模を縮小する基準に向けて、経済がどの程度前進したかについての議論があった」とテーパリングについて今回のFOMCで議論したことを明らかにしたうえで、議長は「今回は議論することについて議論する会合だという考え方も可能」と説明、議論開始の環境が整ったか否かの確認が行われた。
 議長は、「一段と顕著な進展の達成はまだかなり遠いが、参加者は進展が継続すると見込んでいる」として、「次回7月のFOMCから進展の評価を開始する」と、次回7月FOMCからテーパリングに向けて評価を始めることを明言した。

FF金利先物(直近)
FF金利先物(直近)

FOMC声明文の景気の現状判断では、「ワクチン接種が進展したことで、米国での新型コロナウイルスの感染拡大は抑制された」と感染拡大が抑制されたことを指摘したうえで、景気判断は前回と同様に「こうした進展と強力な政策支援を背景に、経済活動と雇用に関する指標は力強さを増している。パンデミックで最も深刻な打撃を受けた部門は引き続き低迷しているが、改善が見られる」と判断を示す文言に変更がなかった。しかし、FRB議長は「経済は明らかに改善している」との認識を示した。
 インフレの現状判断について声明文では、前回と同様「インフレ率は主に一時的な要因によって上昇している」と大部分が一時的な要因による上昇との見方を維持した。また、議長も「インフレ圧力の上昇は一過性のものにすぎない」と金融緩和の縮小に影響するような持続的なインフレ率の上昇ではないとの認識を改めて強調したものの、「最近のインフレ率は予想を上回った」との認識を示した。

景気の先行きに関して、声明文では前回同様「経済の道筋はワクチン接種の進展など、ウイルスを巡る状況に大きく左右されるだろう」と見通しはワクチン接種、新型コロナウイルスの感染拡大やその対応で変化することを指摘するだけにとどめたが、見通しのリスクについて「予防接種の進展により、公衆衛生の危機が経済に与える影響は引き続き減少する可能性があるが、経済見通しに対するリスクは残っている」と前回の「現在進行中の公衆衛生の危機は引き続き経済に重くのしかかり、経済見通しに対するリスクは残っている」から、新型コロナウイルスによる経済への悪影響が弱まっていくとの見方を示し、下振れリスクが低下していることを指摘した。
 最新のFOMC参加者による経済・金利予測(中央値)では、21年の実質GDP予測(10-12月期の前年同期比)は+7.0%とワクチン接種の進展や大幅な行動制限の緩和を受け、前回3月予測の+6.5%からさらに上方修正された(詳細は3P)。インフレ見通し(10-12月期の前年同期比)は、4、5月の上振れによって、21年のPCEデフレーターが+3.6%(前回3月+2.4%)、PCEコアデフレーターが+3.0%(前回3月+2.2%)と大幅に上方修正された。22年以降は前年比+2%程度に落ち着くと予想された。

テーパリングについて、議長は「議論したが、目標までかなり遠い」との考えを改めて強調した。FRBは、完全雇用と物価安定目標に十分に近づくまで、米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券を月400億ドルのペースで購入するとしている。
 以上のような状況を踏まえ、今回のFOMCでFRBはこれまで実施・導入してきた大規模な金融・信用緩和策の継続、政策金利と資産購入のフォワードガイダンスの維持を決定した。

政策金利のフォワードガイダンスに関しては、新しい長期目標と金融政策戦略に基づき「労働市場環境が委員会の考える最大雇用に整合する水準に達するとともに、インフレ率が2%に達し、2%をやや上回る水準で当面推移する見通しになるまで、この目標レンジを維持することが適切になると想定している」と2%をやや上回る水準で当面推移する見通しとなるまで事実上のゼロ金利政策を維持する方針が示されている。
 資産購入のフォワードガイダンスについては、「FRBは目標である最大雇用と物価安定に向けてさらに大きな進展が見られるまで、米国債を少なくとも月800億ドル、モーゲージ担保証券を少なくとも月400億ドルのペースで増やし続ける」と資産購入を雇用の大幅な回復が確認されるまで続ける方針を示している。
 今後の金融政策に関して、FRBは声明文で引き続き「利用可能なあらゆる手段を必要な期間だけ用いることに強くコミットメント」し、今後も「経済見通しに影響を及ぼす情報を注視し、目標の達成を阻害するようなリスクが生じれば、金融政策スタンスを適切に調整していく用意がある」と追加の金融緩和に柔軟な姿勢であることを強調している。
 一方、テーパリングについてパウエル議長は、FRBは政策転換を巡る事前の通知を行うとしたうえで、「そのタイミングは言うまでもなく、その進捗ペースに依存しており、いかなる暦に依存しない」と経済情勢次第であることを強調した。

弊社の当面の経済・金融政策見通しについては、1.9兆ドル規模の経済支援策の効果のほか、ワクチン接種の進展による行動規制の緩和などもあり、21年4-6月期の実質GDPの水準は、個人消費主導でコロナ危機前のピークを上回るだろう。21年後半以降の経済成長は、経済支援策の効果が弱まること等によって、年前半からやや鈍化するものの、多くの米国民のワクチン接種完了により堅調さを持続し、21年の実質GDP成長率は前年比+6.5%と高成長が見込まれる。22年は前年比+4.1%成長が予想される。
 FRBは、6月分の雇用統計を含む経済指標で現在の回復ペースの継続が確認されることで、7月のFOMCでテーパリングに向けての経済情勢の評価を開始しよう。その後、経済情勢の改善ペース等に大きな変化が見られなければ、9月のFOMCで現在の資産購入のフォワードガイダンスの変更を行うと予想される。22年1-3月期から10-12月期にかけてテーパリングが行われるとみられるが、既に市場が織り込んでいるほか、22年もFRBのバランスシートの拡大が続くこと、22年のインフレ率が低下する可能性が高いことから、経済の拡大や金融市場の安定は維持されると見込まれる。

FOMC参加者による経済・金利予測:21年6月

FOMC参加者による経済・金利予測(中央値)では、21年の実質GDP予測(10-12月期の前年同期比)は+7.0%と大型の経済支援策の成立を受け、前回3月の+6.5%からさらに上方修正された。22年は+3.3%(前回+3.3%)と変わらず、23年は+2.4%(前回+2.2%)に小幅上方修正された。失業率の予測(10-12月期の平均値)は、成長率見通しの上方修正にもかかわらず、21年4.5%(前回4.5%)、22年3.8%(前回3.9%)、23年3.5%(前回3.5%)と微修正にとどまった。
 インフレ見通し(10-12月期の前年同期比)は、21年にPCEデフレーターが+3.4%、PCEコアデフレーターが+3.0%と大幅に上方修正された。22年はともに+2.1%に小幅上方修正され、23年はPCEデフレーターが+2.2%と小幅上方修正された。

ドットチャート(中央値)では、大部分のFOMC参加者が22年末までは前回と同様に現在のFFレート誘導目標レンジである0.00-0.25%(ドットチャートでは0.125%)を維持することが適切と予想している。しかし、23年の中央値は今回0.625%と前回0.125%から上方シフトした。
 また、人数別にみると、据え置きを予想する人数は、21年末で18人(前回3月18人)と変わらなかったが、22年末は18人中11人(前回14人)、23年末は18人中5人(前回11人)に減少した。23年に1回以上の利上げを予想している人は、13人に増加した。

(図表)FOMC参加者の経済金利予測:21年6月
(図表)FOMC参加者の経済金利予測:21年6月

FOMC委員のFF金利予想(2021年3月→6月)
FOMC委員のFF金利予想(2021年3月→6月)

【為替】ドル・円、ユーロ・ドル、米ドル・豪ドル、ポンド・ドル
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NASDAQ、ラッセル3000
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【金利】米10、2、30、5年国債利回り
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【商品】原油先物、金光物
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【金利】米10年国債利回り
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桂畑 誠治

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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