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外国人比率10%時代に向けた在留管理体制の構築(第3編・完)

~エストニア・デンマーク・オランダとの比較から考察する制度設計の方向性~

宍戸 美佳

要旨
  • 本編は、外国人比率10%時代を見据え、日本の在留管理制度の方向性を考察するものであり、エストニア、デンマーク、オランダの個人識別番号制度と行政機関間情報連携の仕組みを比較した。

  • エストニアでは、個人識別番号が、税務、医療、教育、社会保障、行政手続だけでなく、銀行・保険等の民間サービスにも共通して利用され、こうした情報が情報連携基盤を通じて安全にデータ交換されている。

  • デンマークでも、個人識別番号が税務、社会保障、医療保険、教育、選挙人登録等に共通して利用される。また、こうした情報がデータ配布基盤により統合・配信され活用されている。

  • オランダでも、個人識別番号が税務・医療・教育・社会保障の各制度に共通して使われるが、こうした情報連携の組み合わせが法令で限定的に規定されている。

  • 日本では、公共サービスメッシュを通じ、マイナンバーを「共通キー」として在留資格情報と税・社会保障データを連携させる構想が進んでいる。導入後は、在留資格の有効性確認や不正受給防止、雇用管理の効率化、統計整備の高度化が期待される。

  • 一方、在留資格失効情報が住民基本台帳と自動同期されていない現状や、制度拡張時における法的根拠の明確化、個人情報保護措置の整備が課題である。

  • 制度設計にあたっては、エストニア、デンマークおよびオランダの取組も参考に、透明性確保と権利保護を制度的に担保することが不可欠である。

  • 今後の在留管理体制は、利便性と公正性を両立させつつ、外国人と日本人が公平に行政サービスを享受できる仕組みとして整備することが求められる。

目次

1. はじめに

本レポートシリーズでは、外国人比率10%時代に向けた在留管理制度の構築をテーマに、現在進められている出入国在留管理制度に関する制度改正について考察する。これまで2編にわたり、特定在留カード、在留資格手続きにおけるマイナンバー利用および公共サービスメッシュについて確認した。最終編となる本レポートでは、海外における外国人への個人識別番号(注1)の付与と行政機関間の情報連携の実例について確認する。そのうえで、日本における出入国在留管理制度の方向性について考察する。

2. 海外における外国人への個人識別番号の付与と行政機関間の情報連携の実例

まず始めに、各国の外国人比率を確認する。資料1は、OECD加盟各国の総人口に占める外国で生まれた人の割合を示したものである(注2)。これによれば、日本は2023年時点で2.5%であり、加盟38か国中、36番目である(注3)。これに対して、OECD加盟国中、外国で生まれた人の割合が最も高いのはルクセンブルグ(51.2%)であり、次いでスイス(31.2%)、オーストラリア(29.5%)の順となっている。OECD加盟国の平均は14.7%で、これを上回る国は17ある。

次に個人識別番号の導入状況および外国人への付与を確認すると、全ての国で何らかの形で導入している。

そこで、 在留資格手続きにおけるマイナンバー利用と公共サービスメッシュの導入という日本の制度改正の方向性に鑑み、①外国人にも同一の個人識別番号体系を適用し、②在留管理と税・社会保障を同一の個人識別番号で統合、③行政機関間の情報連携のための基幹システムが確立され、④透明性や個人情報保護に配慮した制度運用実績がある、という4つの視点から日本への示唆を得ることを目的として、エストニア、デンマーク、およびオランダの3か国について制度を概観する。なお、エストニア、デンマークおよびオランダの情報連携基盤では、個人識別番号をキーとする情報連携が中核であるが、唯一のものではなく、法人番号、住所コード、地理情報コードなど、個人識別番号以外を基盤とする情報連携も含まれている。他方、日本については、現時点で公共サービスメッシュを通じて連携される情報は、番号法に基づきマイナンバーを共通キー(注4)とするものが中心で、これ以外については詳細が公表されていない。そこで、本レポートではマイナンバーを共通キーとした情報連携のみを取り上げて記述する。また、日本を含むより詳細な比較表は巻末に補足資料を収録しており、併せてご参照いただきたい。

(1)エストニア(外国で生まれた人の割合は17.7%、約24万人(2023年))

(ア)個人識別番号制度および個人に関する基幹レジストリ(注5)概要

Personal Identification Code、エストニア語ではIsikukoodと呼称される(注6)。エストニア国民、登録したEU市民、在留許可等を得た外国人は人口登録(Population Register)を行い、情報は人口レジストリと呼称される基幹レジストリに収録される(注7)。この登録により、個人識別番号が付与される。税務、医療、教育、社会保障、行政手続、銀行・保険等の民間サービスにも共通して利用される。

(イ)いつの時点で外国人に個人識別番号を付与しているか

在留許可等は警察・国境警備庁が所管。在留許可・短期就労登録等を得た時点で個人識別番号が付与され、こののち居住登録を行う。

(ウ)行政機関間の情報連携のための基幹システム

X-teeと呼ばれる、エストニア国内の政府機関および民間事業者が保有する各種レジストリ(注7、再度)の間で、安全かつ相互運用可能な形でデータを交換できる仕組みを構築(注8)。

中央省庁や地方自治体などの行政機関に加えて、銀行、保険会社、医療機関、公益事業者などの民間セクターも接続しデータを照会・共有している。

アクセスに伴う安全措置に関しては、X-tee上、接続する各組織間で相互認証を行い、やり取りするデータは暗号化され、さらに送信者が誰であるかを証明する電子署名が付与される。すべての通信は監査ログに記録され、後から追跡や検証が可能。この仕組みにより、公共部門と民間部門の双方で必要な情報を安全かつ効率的に共有できる基盤を実現。  

(エ)透明性の確保および個人情報保護

エストニア情報システム庁(Estonian Information System Authority, RIA)が情報連携基盤上で交換される情報・データベースの一覧(カタログ)を公開しており、どの機関が所有し責任を持っているか明記している。また、こうした責任機関を含むメタデータ(注9)の公開義務が法律で定められている。これにより、どの機関がどの法的根拠に基づきどのようなデータを扱っているかが明示され、透明性が制度的に担保されている。

個人情報保護に関しては、EUの共通規則である一般データ保護規則(GDPR、注10) に加えて国内法を制定し、合法性、目的制限、データ最小化、安全措置などを義務付けている。また、前述のとおりメタデータ公開により「どのデータを収集・処理しているか」「法的根拠は何か」が開示されることでプライバシー侵害リスクの可視化が促されている。加えて情報の公開にあたっては、個人の私生活やプライバシーを害することのないよう、必要に応じて制限や匿名化等の措置が講じられている。

(2)デンマーク(外国で生まれた人の割合は11.8%、約70万人(2023年))

(ア)個人識別番号制度および個人に関する基幹レジストリ概要

Central Person Register number(CPR number、以下「CPR番号」)と呼称される。原則としてデンマーク国民、北欧諸国民(注11)、EU/EEAおよびスイス市民、非EU市民で在留許可取得後3か月以上の在住を見込む外国人が付与の対象。行政機関が一度収集した市民・企業のデータは、原則として再度提出を求めない、というEUのOnce-Only Principle(注12)を支える重要な構成要素となっている。また、基幹レジストリとして位置付けられるのは、Det Centrale Personregister(Central Person Register、以下「CPRレジスター」)である。氏名、住所、国籍、婚姻状況、親子関係、出生・死亡情報などが法的根拠に基づいて一元的に記録される。CPRレジスターは行政機関間の情報共有の中心的基盤として位置付けられており、国家的に住民の基本情報を一元的に管理・提供する役割を担っている。CPR番号はこのCPRレジスターに登録されることで付与され、税務、社会保障、医療保険、教育、選挙人登録等に共通して利用される。

(イ)いつの時点で外国人に個人識別番号を付与しているか

在留許可等は移民・統合省(Ministry of Immigration and Integration)が所管。非EU市民の外国人の場合には、在留許可を取得し、住居登録後にCPR番号を申請し付与される。

(ウ)行政機関間の情報連携のための基幹システム

CPRレジスターをはじめとする各種レジストリ間の情報連携を可能にする基幹システムとして、Datafordeler(デンマーク語名称) を整備。この基盤で各基幹レジストリからデータを取得、統合し、配布。原則として公共機関が利用対象だが(注13)、銀行や保険会社など一部の民間事業者は法律に基づく認可を受けた場合に直接利用が可能。

アクセスに伴う安全措置に関しては、行政機関や民間事業者が共通の認証・アクセス制御基盤を利用して接続している。通信は暗号化され、電子署名付き証明書で送信者を確認。すべての取引はログに記録され、監査が可能である。

(エ)透明性の確保および個人情報保護

公共機関(注14)がデータを共有・利用する際の原則や標準的枠組みを公開しており、横断的な連携・データ共有・再利用を支える制度的なインフラが整えられている。また、情報公開法制を通じて、国民が行政機関の保有情報を閲覧請求できる仕組みも整備されており、透明性が制度上確保されている。

個人情報保護に関しては、EU一般データ保護規則(GDPR)に加えて国内の個人データ処理法が制定されており、合法性・目的制限・データ最小化・安全措置などの制度的義務が定められている。加えて、アクセス・訂正などの市民権利が保証されており、行政機関等が個人データの処理内容について説明を行うための制度的枠組みが整えられている。

(3)オランダ(外国で生まれた人の割合は15.8%、約278万人(2023年))

(ア)個人識別番号制度概要

オランダ語でBurgerservicenummer(以下「BSN番号」)と呼称される。基幹レジストリはBasisregistratie Personen(英語ではBasic Registration of Persons、以下「BRP」)であり、氏名、生年月日、性別、出生地、国籍、住所、家族関係等を法的根拠に基づき一元管理する。4か月以上の滞在予定者は市区町村でBRPに居住登録し、4か月以内の滞在者や国外居住者は非居住者記録(RNI)に登録することで、いずれもBSN番号が付与される。BRPは行政機関間の情報共有の基盤であり、これに基づくBSN番号は税務・医療・教育・社会保障の各制度における共通の個人識別番号として利用される。

(イ)いつの時点で外国人に個人識別番号を付与しているか

オランダに4か月以上滞在する外国人は市区町村に居住登録を行う必要があり、この登録と同時にBSN番号が付与される。また、4か月未満の短期滞在の外国人についても、税務上の理由などで非居住者登録される場合にはBSN番号が付与される。

(ウ)行政機関間の情報連携のための基幹システム

法律で交換可能な組み合わせを規定。データ交換のための中枢システム基盤は設置せず、分散的な基盤で行う。

アクセスに伴う安全措置に関しては、暗号化・擬名化、アクセス制御、認証、監査ログ、可用性・復旧確保などが講じられている。

(エ)透明性の確保および個人情報保護

政府や各省庁が、どのような目的で個人データを扱い、どの程度の期間保存し、誰と共有するのかを「プライバシー宣言」という形で国民に明示することで、自分のデータがどのように扱われているのかを知ることができる。また、オランダ個人情報保護機関が、法令に基づいて政府のデータ処理を監督し、違反があれば是正を求める仕組みを構築。透明性を「外部のチェック」により担保するとともに、次に述べる個人情報保護の観点でも監督するなどの役割を担っている。

個人情報保護の観点では、GDPRに加えて国内法を制定し、合法性、目的制限、安全性、個人の権利を定めている。また、データは必要な期間だけ保存し、不要になれば削除しなければならないというルールを設け無制限に個人情報をため込み続けることを防いでいる。

以上のとおり、エストニア、デンマークおよびオランダについて、個人識別番号の概要を確認したが、3国とも外国人を含む住民に個人識別番号が付与され、税、社会保障、医療、教育などの行政サービス全般で共通して利用されていることが確認できる。

なお、個人識別番号を共通して利用することで得られるさまざまな情報が、どのように在留資格の更新や在留管理に活用されているかについては、3国とも公表していない。この点については個人情報保護、在留資格制度運用の柔軟性、あるいはセキュリティ上の理由などから当然の対応であると理解できる。しかし、個人識別番号は3国においては税務、雇用(注15)、社会保険加入状況などに関する広範な項目で共通IDとして活用されている。在留資格の延長や更新に際して求められる、安定した就労、納税義務の履行、社会保険加入といった要件と、個人識別番号により参照可能な情報とは一致する部分が多い。したがって、当局がこれらのデータを間接的に活用して在留資格審査を行っている可能性が高いと推測される。

3. 海外における行政機関間の情報連携から得られる日本への示唆

ここで改めて、前章で確認したエストニア、デンマークおよびオランダにおける個人識別番号を軸とした省庁間等の情報連携をイメージ化して確認する(資料2)。そのうえで日本への示唆について考察したい。

資料2は、エストニア、デンマークおよびオランダについて、行政機関間の情報連携のための基幹システムを活用して、個人に関する基幹レジストリを含む各種レジストリがどのように連携されているかを、筆者がイメージ化したものである。

まず、エストニアは、省庁などの行政機関のレジストリと民間事業者のレジストリとが分散しており、これらを統一規格の高速道路で結んでいる。そして情報にアクセスすることを許可された行政機関や民間事業者の間を、超高速の自動運転車が行き来している。これにより、分散したデータを安全にリアルタイムで相互利用可能にしていると表現できる。

次に、デンマークは、Datafordelerとデンマーク語で呼称される、いわば巨大な中央配送センターに例えられる国家的な配布基盤を整備し、人口、法人、住所、建物・不動産、地理情報など複数の基幹レジストリに格納された最新の基本データを統合し、行政機関向けに一元的に配信している。すなわち、アクセスを許可された行政機関や一部の民間事業者に対して、高速の自動運転車が巨大なセンターから配送しているイメージである。これにより、各機関は重複してデータを収集することなく、共通の最新データを利用できる仕組みとなっている。

最後にオランダはどうか。複数の基幹レジストリ間の情報交換の組み合わせが制度上定められており、許可された行政機関はその範囲内で最新の情報を参照できる。デンマークのように、Datafordelerと呼称されるいわば巨大な配送センターから一元的に配布する仕組みではなく、定められた組み合わせに従って分散的に基幹レジストリ同士を結び、必要な情報を利用する仕組みとなっている。

では、現在開発が進められている日本の公共サービスメッシュは、この3国のうちのいずれに近いのであろうか。現時点で公表されている情報では「行政機関間のAPI連携共通基盤(注16)」と位置づけられており、技術方式では3か国と同じである。しかし、マイナンバー(個人識別番号)の利用範囲を法令で社会保障、税、および災害対策に限定し、規定されていない目的ではマイナンバーを利用できないという点に鑑みれば、オランダに類似したモデルになると推測される。ただし、現時点で公開されている情報に基づく筆者の推測である。

4. 公共サービスメッシュの活用で在留管理はどのように変わるか

最後に、公共サービスメッシュを通じた行政機関間の情報連携の導入により、在留管理がどのように変わる可能性があるのか考察したい。なお、本レポートでは、在留管理に主眼を置いているが、まず何よりも行政サービスの利便性を大幅に向上させることが公共サービスメッシュを通じた情報連携の導入の主目的であることを忘れてはなるまい。国や地方自治体がそれぞれ保有するデータを安全かつ効率的に連携させることで、住民は複数の窓口を回らずに済み、一度で手続きを完了できるようになる。この利便性の改善は、日本人住民にとっても外国人住民にとっても共通のメリットになる。

そのうえで、①在留資格の有効性確認、②不正受給防止(社会保障・税)、③就労資格と雇用管理、④資格外活動・不法滞在の把握、および⑤統計・政策立案という5つの視点で、前章で確認した日本の現状、課題、および公共サービスメッシュ導入によりどのように変わると期待されるか、エストニア、デンマーク、オランダの制度を参照しつつ考察する。

(1)在留資格の有効性確認

まず、エストニア、デンマークおよびオランダとも、住民に関する基幹レジストリと当局の在留情報とが、法令に基づき個人識別番号を基軸にして連携している。また、いずれの国においても、在留資格に関する情報が更新されると、税・社会保障・統計などの関連分野に反映される仕組みが整っている。

エストニアでは、在留許可失効時には即時に情報が更新され、税・社会保障や統計に反映される仕組みが整っている。デンマークも同様に、移民庁(The Danish Agency for International Recruitment and Integration)の情報が情報交換基盤を経由して各機関に配信されている。オランダでは、住民に関する基幹レジストリと移民庁(Immigration and Naturalisation Service)のデータが法令に基づき連携しており、在留情報が税・社会保障制度のデータと照合できるようになっている。なお、これらの仕組みは在留管理側で確定した情報を他制度が参照・活用する構造が中心であり、税や社会保障側の情報が在留管理情報に自動的に反映される仕組みについては公的資料からは確認されていない。

これに対し日本では、現状、外国人住民も住民基本台帳に記録され、マイナンバーが付与されている点は共通するものの、出入国在留管理庁が保有するデータベースの情報と住民基本台帳との自動・即時の同期は実装されていない。住民基本台帳に記録される項目には在留資格や在留期間が含まれるが、これは本人が提示した在留カードに基づいて自治体が記録するものであり、出入国在留管理庁のデータベースと自動的に同期されているわけではない(注17)。そのため、資格の有効性が常に最新の状態で保証されているわけではなく、行政手続や雇用時の確認においては、最終的に本人の在留カード提示に依拠せざるを得ないのが実情である。

公共サービスメッシュ導入後は、住民基本台帳に記録されている情報と在留情報とがマイナンバーを共通キーとして連携し、本人同意または明確な法的根拠の下で、有効性の有無をオンラインで照会可能となることが見込まれる。なお、現行制度においては、在留資格を有する外国人数と住民基本台帳に記録された外国人住民数の間に一定の乖離が生じている。これは、出入国在留管理庁の統計が在留資格の有効期間を基準として集計される一方、住民基本台帳は転入届出をもって登録される制度であり、両者の基準が異なるためである。この乖離についても、在留資格情報と住民基本台帳情報とがマイナンバーを共通キーとして連携することにより、出入国や転入・転出等に伴う情報更新の遅延が縮減され、在留資格の有効性や居住実態に関する情報がより正確に把握できるようになることが期待される。

(2)不正受給防止(社会保障・税)、および就労資格と雇用管理

現状、日本では社会保障や税のシステムは住民基本台帳の情報を基盤として運用されているが(注18)、この住民基本台帳の在留資格情報自体が前述のとおり本人提示に基づき登録されるものであり、出入国在留管理庁のデータベースと自動連携していない。そのため、在留資格失効の情報が社会保障や税に直ちに反映される仕組みにはなっていない。

社会保障制度においては、外国人に限らず日本人も含めた制度上の課題として、受給者本人の死亡後に不正に年金を受給する、資格喪失後も健康保険証を提示して自己負担分以外の医療給付を不正に受ける、不正に高額療養費等を受け取る、介護保険や雇用保険について虚偽の申請や資格要件を満たしていないのに受給するといった不正受給が指摘されている。また、健康保険証の提示による不正利用(いわゆる使いまわし、あるいはなりすまし)については、従来型の健康保険証には顔写真やICチップがなく、本人確認の強度が十分でないことに起因する課題ではあるが、不正受給の例として挙げられる(注19)。

一方の税の不正受給については、消費税の輸出免税制度(注20)を悪用し、輸出していないにも関わらず輸出書類を偽造して申告し、還付金を不正に受け取る、あるいは国内販売を輸出に見せかける事例が指摘されている。また、国外扶養親族の申告については、一般に適正な確認が求められるとの指摘があり、税務当局は必要に応じて確認を行っている。

公共サービスメッシュ導入後は、出入国在留管理庁の在留資格情報と、年金機構・健康保険組合・税務当局が持つ社会保障・税情報の間で、所管規程・告示の整備に応じて対象手続から順次、照会・突合および添付書類の省略が可能となる見込みである。これにより、資格喪失後の不整合を早期に把握でき、不正受給の余地を縮減できる。さらに、社会保障のうち雇用保険については、加入時には外国人の就労資格の有無を確認する必要があるが、これをオンラインで照会できる仕組みが整えば、不適法な雇用を未然に防止し、雇用状況の正確な把握にも資することになる。

なお、健康保険証の提示による不正利用(いわゆる使いまわしやなりすまし)については、宍戸(2025a)で紹介した特定在留カードや、これを選択しない場合にはマイナンバーカードが保険証として利用されることで不正利用を抑止されることが期待される。ただし、あくまで現場での本人確認に依拠している。

他方、税に関する不正受給については、現時点で公表されている情報に基づけば不正還付の自動検知の実装計画は公表されていない。将来的な制度拡張が前提であるが(注21)、仮に、税務情報の実績内容まで公共サービスメッシュを通じて連携できるようになれば、個人単位で不自然な還付や虚偽申告を把握できる可能性がある。また、通関実績や法人情報は公共サービスメッシュを通じた情報連携の対象に含まれる旨の公表は確認できない。したがって、法人については、引き続き税務当局による税関や法務局との情報連携に依拠することになると考えられる。ただし、行政で共通利用される基礎情報全般である「ベース・レジストリ」(注7)の整備が現在進められており、商業・法人登記情報や法人番号も含まれる。今後の課題認識によっては、こうした情報や通関実績も情報連携の対象に加えることが検討されるべきであろう(注21)。

(3)資格外活動・不法滞在の把握

現行制度では在留資格情報と社会保障・税務データを自動的に突き合わせ、不自然なパターンを検出する仕組みは実装されていない。前述のとおり行政は本人の在留カード提示や、事業主による雇用状況届出といった手作業の確認に依拠している。

在留資格の目的から逸脱した資格外活動が行われているケースがあると指摘されるもののひとつに「経営・管理」がある。この「経営・管理」とは、外国人が日本で事業を開始または経営を行うことを目的とする在留資格であり、在留を許可されるためには、事業所の設置、適切な資本金規模や事業計画など、安定的かつ継続的な事業運営が見込まれることが要件とされている。ただし、実際の運用においては、事業実態や経営の安定性が十分でない事例も見られ、①許可・届出を欠く事業、②小規模で継続性のない活動、③実体のない法人、④経営ではなく単純労働に従事している、といった指摘があり、審査の厳格化が課題とされてきた。もっとも、これらのうち②~④については、2025年10月に出入国在留管理庁が基準を明確化したことで、是正される方向にある(注22)。具体的には、オフィス要件や事業実態の調査強化、財務要件・事業計画の実現可能性の審査厳格化、単純労働従事の排除などが審査で重点化されることとなった。しかし、他の在留資格に係る資格外活動については、依然として公共サービスメッシュ導入後の情報連携による改善余地が残されている。

また、不法滞在については、在留期間を過ぎても更新や変更を受けずに残留するオーバーステイや、不法入国・不法上陸のうえ在留している状態などが該当する。転居届出の遅延や未届は、必ずしも不法滞在ではないものの、こうした転居届の遅延や未届、郵便物の返戻(宛所不明)、あるいは実際の居住地と大きく離れた場所での医療機関受診など、住民基本台帳上の住所と現実の居所が一致しない事態は、行政上「所在不明事案」とされ得るものであり、不法滞在の典型的な兆候の一つとされている。

このような課題に対して、公共サービスメッシュ導入後は、在留資格の有効・失効の別、雇用や教育機関における在籍の有無、税・社会保険料の提出や納付の有無といった最小限の事実をオンライン照会し組み合わせることで、本来の活動目的と実際の状況が一致していないと疑われるケースや不法滞在の兆候を早期に把握できる可能性がある。ただし、不法滞在の兆候とされる住所や在籍の不一致には正当な理由も含まれるため(注23)、検知された場合には本人通知や自発的是正を優先し、重大かつ継続的な不整合のみを在留管理措置につなげる制度設計が不可欠である。

さらに、公共サービスメッシュを通じてどのデータを収集し、どのように使用するか、またどの項目・どの水準でアラートを立てるかという具体的な制度設計に依存するが、制度拡張を行うことで、住民基本台帳に登録された住所と社会保険料の納付拠点や郵便物の送付結果、さらには医療機関や教育機関の利用状況といった情報まで自動的に突合できる可能性がある。このような拡張が実現すれば、例えば事業を営んでいるはずが社会保険料や納税の実績がない、といった不自然なデータパターンを検出でき、調査・監督の効率化につながりうる。また、郵送不達が繰り返される場合や、住所と利用状況が大きく乖離するケースを兆候として早期に把握できるかもしれない。

(4)統計・政策立案への反映

現状、日本では外国人に関する統計は各制度や所管ごとに独立して作成・集計されており、利用者が必要に応じて複数の統計を統合して分析する必要がある。例えば、出入国在留管理庁による「在留外国人統計」、総務省統計局による「国勢調査」「住民基本台帳人口移動報告」、厚生労働省による「被用者保険の被保険者数」「年金受給権者数」「介護保険事業状況」「雇用保険被保険者数」、国税庁による「申告所得税標本調査」「民間給与実態統計調査」などが制度別に収集・公表されている。このため、在留資格と社会保障・税のデータを横断的に結び付けて分析できる公的統計は現行制度には存在しない。したがって、外国人の社会保険料納付状況や税負担と給付の関係を包括的に把握するには、行政内部の利用者や研究者が複数統計を突き合わせる作業を要するのが現状である。

公共サービスメッシュ導入後は、在留資格別に「社会保険加入の有無」「税務申告の有無」「給付受給の有無」といった基本的な事実を横断的に集計できる仕組みが合理的に想定される。これにより、例えば特定技能外国人の保険加入率といった政策課題を統計的に検証できるようになると考えられる。さらに、擬似匿名化や項目最小化を徹底した形でデータを連携すれば、社会保障や税制度の効果を迅速に評価し、国際比較可能性の高い統計整備を進めることが可能になると期待される。

もっとも、現行の番号法は利用範囲を「社会保障・税・災害」に限定しているため、在留資格情報を含めた恒常的なデータ連携を実現するためには、目的を持った制度設計と、必要に応じた法改正を伴うことが前提となる。今回比較のため取り上げた、エストニア、デンマーク、およびオランダの実例にも鑑みても、利用目的を法令上明確に位置づけ、厳格なアクセス管理と記録保持を行うことが不可欠である。

ここまで、①在留資格の有効性確認、②不正受給防止(社会保障・税)、③就労資格と雇用管理、④資格外活動・不法滞在の把握、⑤統計・政策立案の5つの視点から、現状の整理と公共サービスメッシュ導入後に合理的に想定される変化を示した。重要なのは、ここで述べた連携の多くが日本人住民にも同様に適用され、行政手続の簡素化・効率化という共通の便益をもたらす点である。しかし、そうした便益の一方で、個人の情報を扱うという制度設計にあたっては、プライバシーや人権の保護を前提に、個人情報へのアクセス履歴の本人による確認、行政による利用範囲の明確な限定、差別や不当な排除を防ぐ監査体制等、透明性と利用目的の限定を徹底することが不可欠である。前章で確認したエストニア、デンマークおよびオランダの事例を踏まえると、具体的に以下のような項目を制度設計に取り入れることが考えられるのではないだろうか。

  • 情報連携基盤を通じて交換される情報、情報システムやデータベースの責任主体・法的根拠・共有の範囲などを一覧(カタログ)化し、開示する

  • 法律で透明性義務と公開義務を規定し、かつその公開を制限可能な例外(プライバシー侵害や国家安全保障上の懸念がある場合など)を明確にする

  • 個人の権利保護と監査制度を強化し、共有プロセスにおける技術的・組織的安全措置とともに、ログ・アクセス記録・通知義務等を含めて制度化する

  • 省庁等による情報の共有・利用実績や監査報告等を定期的に公開し、透明性を確保する

  • 個人が自己に関する情報を閲覧し、誤りがある場合に修正を求める権利を明示する(注24)

こうした透明性と法令に基づく厳格な制約という設計が、利便性と安心感の両立の鍵となる。

5. おわりに

ここまで3編にわたり、特定在留、在留資格手続きにおけるマイナンバー利用および公共サービスメッシュを通じた行政機関間の情報連携、そしてこうした制度改正後の出入国在留管理制度について考察してきた。改めてこれらの取組については、国民および在留外国人の利便性を向上させ、行政の効率化を図る、との目的に基づく制度設計が進められることを求めたい。そのうえで、在留管理の観点からは、法令を遵守しない、あるいは不当な行為を許容せず排除できる枠組みを確立しながら、利便性向上と効率化が公平に享受されることを期待したい。こうした違法行為や不当行為の排除は、法令を遵守しまじめに生活する外国人を守ることにもつながり、安心して共に暮らせる社会の形成にも資する。

外国人の比率は、人口減少と在留外国人数の増加に伴い上昇している。法務大臣の私的勉強会でも「将来、外国人比率が総人口の10.8%に達する可能性」が示されている(注25)。今回、筆者はエストニア、デンマーク、オランダを取り上げたが、いずれも外国人の比率は10%を超えている(前掲資料2)。この10%を大きな分水嶺と仮置きするのであれば、各国の事例に照らすと、日本にも受け皿となる制度・体制を整備する必要性が強まっていると感じる。そうした強固な受け皿には、目的を明確に設定した公共サービスメッシュの制度設計のみならず、その周辺制度設計を含めた質が求められる。

だが、こうした目的を明確にするにあたっては、そもそも人口減少の進む日本がどのような姿を目指すのかという国民的な議論が不可欠であろう。このようなありかたの議論はまだ緒に就いたばかりである(注26)。しかし、人口減少に伴う影響を肌身で感じることが多くなった今こそ、現実を踏まえた冷静かつ開かれた議論が求められる。

以 上

【注釈】

  1. 本レポートにおいて「個人識別番号」という用語は、各国において個人を一意に特定するために国が付与する番号制度を総称するものとして使用している。日本においては「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下、「番号法」)に基づき、住民基本台帳に記録される者(日本国籍を有する者のほか、中長期在留者、特別永住者等の外国人住民を含む)に対して「個人番号(いわゆるマイナンバー)」が付与される。番号法(第9条第2項)に基づき、利用範囲は社会保障・税・災害対策に限定されており、社会保険番号や年金番号など、個別制度ごとの番号体系が並存している。このため他国のような行政全般の共通IDとは制度設計上区別される。他方、本レポートで比較対象とするエストニア、デンマーク、オランダの共通IDはいずれも国民のみならず在留外国人に対しても付与され、税務・社会保障・医療・教育など幅広い行政手続に共通して利用される番号である。本レポートでは、こうした各国制度との比較を容易にするため、日本の個人番号(マイナンバー)を含めて「個人識別番号」と総称して記載する。

  2. OECDは、日本および韓国については、外国で生まれた人ではなく、在留する外国人の割合である、と補足している。

  3. 日本の2023年時点の「外国で生まれた人の割合」は、国際比較の観点から世界銀行が公表する日本の総人口(1億2,452万人)に対し、在留外国人数を310万人として計算していると考えられる。一方、住民基本台帳に基づく総人口に占める外国人住民の割合は、2023年1月1日時点で2.39%、最新の2025年1月1日時点では2.96%となっている。なお、住民基本台帳上の総人口(2025年1月1日時点)に対する在留外国人(2024年12月末時点)の比率を計算すると、3.03%となる。

  4. 本レポートシリーズ第2編では、日本におけるマイナンバーの共通IDとしての利用範囲が限定的であり、社会保険番号や年金番号など、個別制度ごとの番号体系が並存しているものの、マイナンバーは、これらの番号を相互に関連づけ、行政機関間で情報を連携させる際の共通の結合項目(共通キー)として機能することから、「共通キー」と表現した。

  5. 基幹レジストリとは、行政や社会全体の基盤となる基本情報(住民・法人・不動産など)を、国家が一元的に管理し、法的根拠に基づいて行政機関や民間に提供する台帳のこと。エストニアやデンマークでは、base registries と呼称されているが、注7で説明している日本の制度用語であるベース・レジストリと区別するため、基幹レジストリと表現する。なお、個人識別番号と紐づく基幹レジストリについては、巻末の補足資料2を参照いただきたい。

  6. エストニア、後述のデンマークおよびオランダ、および日本の個人識別番号制度の概要は巻末の補足資料1を併せて参照いただきたい。

  7. 本レポートにおいてレジストリとは、行政機関や民間事業者が保有する台帳・データベースを指す広い概念として用いている。本文において後述するエストニアのX-teeやデンマークのDatafordelerといった行政機関間の情報連携基盤では、人口・法人・不動産といった基幹レジストリに加え、銀行・保険・公益事業者など民間が保有するレジストリも法的根拠に基づき情報連携の対象となっている。他方、日本でも「ベース・レジストリ」(公的基礎情報データベース)の整備が、デジタル社会形成基本法(2021年5月成立・同年9月施行)および同年の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づき整備が進められている。対象は住民基本台帳、法人登記、不動産登記など基幹レジストリに加え、住所、地理空間情報、郵便番号、法令、文字コード等を含む、行政で共通利用される基礎情報全般である。ただし、2022年度以降に有識者会議等で整備・改善計画の検討が始まり、2023~2024年度にかけて優先的整備対象分野が整理されたが、2025年10月時点でも大半が検討・試行段階にあり、整備は緒に就いたばかりと評価できる。本レポートでは、こうした各国の制度的相違を踏まえ、日本のベース・レジストリを含めた広義の意味で「レジストリ」という用語を用いる。各国の基幹レジストリ、および日本のベース・レジストリについては、巻末の補足資料3を併せて参照いただきたい。

  8. 行政機関間の情報連携のための基盤システムに関する詳細は、巻末の補足資料2も併せて参照いただきたい。

  9. 情報システムやデータベースのメタデータとして、名称、管理機関、責任者、法的根拠、収集・処理するデータの種類、提供サービス、再利用可能なコード表や分類体系、技術仕様、連絡先などを公開している。

  10. GDPR(General Data Protection Regulation、一般データ保護規則)は、2018年5月25日に施行されたEU規則(Regulation)であり、EU域内における個人データの取扱いについて包括的なルールを定めている。合法性、目的限定、必要以上の情報を集めないデータ最小化、正確性、保存期間の制限、完全性・機密性といった基本原則を規定するとともに、本人の権利(アクセス権、訂正権、消去権、処理制限権、データポータビリティ権、異議申立権等)を保証している。また、EU域内の監督機関(各加盟国のデータ保護当局)が法令遵守状況を監督し、違反がある場合には制裁金を科すことが可能とされている。なお、エストニア、デンマークおよびオランダはいずれもEU加盟国であるため、GDPRの直接適用を受け、各国の国内法において補完的規律が定められている。

  11. 北欧諸国民とは、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、およびアイスランドを指す。「北欧パスポート同盟」に基づく相互優遇措置があり、CPR番号については、パスポートや北欧IDのみで簡易に登録でき、他の外国人より手続きが緩和されている。登録にはデンマーク国内での住所と滞在実績が必要とされる。

  12. Once-Only Principleとは、欧州委員会が「eGovernment Action Plan 2016–2020」や「タリン宣言(Tallinn Declaration on eGovernment, 2017年)」において掲げた行政サービスの基本原則である。国民や事業者が行政機関に一度提供した情報について、他の行政機関との間で適法かつ安全に共有することで、再度の提出を求めないとする考え方である。この原則は、行政手続の効率化と利用者負担の軽減を目的とするとともに、GDPRにおける「データ最小化」や「目的限定」の原則とも整合している。

  13. 行政機関の職員の実務においては、デンマーク語でServiceplatformenと呼称される共通APIハブを通じて Datafordelerや他のサービスに接続している。

  14. 公共機関には、デンマーク政府の定義に基づき行政機関に加えて大学、研究機関などの公的主体が含まれる。

  15. エストニアでは、雇用者は従業員をTax and Customs Boardに従業員登録する義務がある。登録内容には雇用開始日・終了日、雇用形態等が含まれ、個人識別番号と紐づけられている。
    デンマークでは、労働契約に基づく給与は必ず税務庁に報告され、CPR番号と連動して課税・社会保険処理される。さらに、雇用について税務庁の報告システムに登録され、雇用主は給与情報を毎月報告し、CPR番号と紐づけられる。
    オランダでは、雇用主は新規雇用時に従業員の個人識別番号をもとに税務当局および社会保険機関(Employee Insurance Agency)に報告する義務を負う。これにより、給与課税や社会保険料納付のデータが個人識別番号と紐づけられる。

  16. API連携とは、Application Programming Interfaceの略称で、異なるシステム間で定められた規格に従いデータや機能をやり取りできる仕組みを指す。日本においては、デジタル社会形成基本法(2021年5月成立)および「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2021年閣議決定)に基づき、行政機関間の情報連携を効率化する技術方式として位置づけられている。デジタル庁が整備する公共サービスメッシュは、このAPI連携を共通基盤として実装するものであり、各行政機関が安全な認証・暗号化を前提に必要な情報を照会・提供できる仕組みである。これにより、紙媒体や個別接続に依拠していた従来の仕組みから、リアルタイムかつ標準化されたデータ交換へと移行し、在留管理を含む各種行政手続の迅速化・効率化が図られる。

  17. 住民基本台帳法により外国人住民について在留資格、在留期間およびその満了日を住民票に記録することが定められており、外国人住民には転入等の届出の際に在留カードまたは特別永住者証明書を提示する義務が課されている。また、総務省通知(住民基本台帳事務処理要領)においても、在留資格等の記録は外国人本人の在留カード等の記載内容に基づいて登録することが示されている。なお、住民基本台帳に記録されている情報については、補足資料2を参照いただきたい。

  18. 日本の広義の社会保障制度(医療保険、年金、介護保険、雇用保険、公的扶助(生活保護)、社会福祉(子育て、障害者福祉等))は、住民基本台帳法に基づき、住民基本台帳に記録された住所を基礎として運用されている。原則として住民基本台帳に記録された住所を前提に資格管理や給付を行っており、制度上は住民基本台帳の住所=本人の居住地として取り扱われている。

  19. 社会保障に関する課題として、本文で記載している不正受給以外にも、医療費の未収金、すなわち診療費用の不払いという債務不履行が指摘されている。厚生労働省の令和6年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」では、日本人患者も含む未収金総額は1か月で881億4,250万円であり、そのうち外国人患者による未収金は470病院(16.3%)で計13億2,835万円(総額に占める割合は1.5%)であった。ただし、当該調査自体、全国すべての病院(2024年度調査の対象は8,220)に対する任意アンケート調査であり、未収金を含む調査項目への回答回収率は66.8%であった。このため、制度全体の未収金総額や、これに対する外国人患者分の比率は不明である。また、そのような情報を含む統計は公表されていない。
    こうした制度上の課題としての医療費の未収金についても、公共サービスメッシュや医療保険・医療機関データベースの相互連携を制度設計に盛り込むことで、将来的に給付済診療データと患者支払状況を追跡し、未収金総額および外国人分比率を制度横断的に把握できる可能性があると考えられる。ただし、外国人患者に関する未収金については、出国による回収不能など、日本人患者とは異なる特有の課題が残る可能性は考えられる。

  20. 消費税の輸出免税制度とは、国内で仕入れた際に支払った消費税が輸出時に還付される仕組み。

  21. 将来的な機能拡張、すなわち公共サービスメッシュの機能拡張には、法令改正を伴う場合がある。これ以降、本文において将来的な機能拡張を論じる箇所については同様。

  22. 2024年成立の入管法等改正を受け、2025年10月から出入国在留管理庁が公表した「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」に基づき、同在留資格の審査運用が厳格化された。明確化の主なポイントは、①実体のある事務所・事業運営の確保(形式的な登記のみや実体のない法人の排除)、②事業の安定性・継続性の重視(資本・財務状況や事業計画の実現可能性等の厳格な確認)、③単純労働への従事の否定(経営活動の実態審査の強化)。これにより、従前から指摘されてきた濫用的な運用や不適切な活動について、制度上是正される方向が明確化された。具体的要件や細目は、省令等および同庁ホームページ公表資料(当該ページ掲載の別紙を含む)で定められている。

  23. 例えば、配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス)やストーカー行為からの保護を目的として、住民票の閲覧や住所情報が秘匿される場合がある。このような正当かつ保護を要する事由によって住民基本台帳上の住所と実際の居所が乖離する可能性も存在する。

  24. ここで述べる「自己に関する情報を閲覧し、誤りがある場合に修正を求める権利」は、新たに創設を提案するものではない。個人情報の取扱いに関しては、すでに個人情報保護法で本人が自らの情報の開示や訂正を求める権利が定められており、マイナンバーを含む特定個人情報についても、この考え方が番号法のもとで引き続き適用されている。本提案は、こうした既存の仕組みを公共サービスメッシュの制度運用にも明確に反映させることを意図している。

  25. 2025年8月29日に公表された法務大臣勉強会の報告書において、外国人比率が将来的に総人口の10.8%に達する可能性が示された。また、同日の閣議後記者会見においても外国人比率の将来予測に言及しており、筆者が法務省公式ホームページを確認した限り、法務大臣が将来予測に減収したのは初めてのことである。なお、この10.8%とは、国立社会保障・人口問題研究所が2023年4月に公表した将来人口推計に基づく2070年時点の予測に基づくものであると推測される。また、将来人口推計では、2025年の外国人比率は、2.74%であるが、2025年1月1日時点の住民基本台帳に基づく外国人比率は2.96%と、推計値を上回っている。

  26. 注25でも触れた2025年8月29日の法務大臣閣議後記者会見において、同大臣は「(中略)今後の外国人の受入れの基本的な在り方の検討に関しては、出入国在留管理庁において、まずは「外国人の受入れの基本的な在り方の検討のためのPT」、これを速やかに立ち上げ、そして法務大臣の私的懇談会である、出入国在留管理政策懇談会での積極的な御議論にも期待させていただきながら、出入国及び在留管理の観点から、必要な検討を可能な限り進めてまいりたいと考えているところです。」と発言している。

【参考文献】

宍戸 美佳


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。