- HOME
- レポート一覧
- ビジネス環境レポート
- 制度化の転換点に立つ在留外国人向けの日本語教育
- Illuminating Tomorrow
-
2026.03.26
その他
外国人
制度化の転換点に立つ在留外国人向けの日本語教育
~在留管理と地域共生を支える認定日本語教育機関の制度設計を考える~
宍戸 美佳
- 要旨
-
- 「認定日本語教育機関」制度は、「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」に基づき、日本語教育機関を文部科学大臣が認定する仕組みであり、外国人に対する日本語教育の質の確保と教育水準の可視化を図る新たな制度的枠組みである。
- 従来、日本語教育は、法務省告示機関として留学生を受け入れる日本語教育機関、日本語学校、大学、地方公共団体、国際交流協会、地域のボランティア等、多様な主体によって担われてきた。他方で、教育内容は多様であり、制度上の位置付けや質保証のあり方も一様ではなかった。認定制度の創設は、こうした多様な日本語教育のうち、一定の要件を満たす日本語教育機関を公的に認定する仕組みを導入するものである。
- とりわけ、育成就労制度の創設により、日本語能力の向上が制度目的として明確に位置付けられ、日本語教育は在留管理制度の運用と結び付く要素となりつつある。本稿は、日本語教育の実施主体を巡る現状と制度の変化を整理した上で、「就労」「留学」「生活」の各課程について、その制度的位置付けと課題を検討するものである。
- 「就労」課程では育成就労制度との接続の下で日本語教育を実施する体制の未整備が、「留学」課程では法務省告示機関から認定制度への移行と質保証の実効性が、「生活」課程では対象、到達像、既存施策との関係を含む制度設計が未確定であることが、主要な論点である。
- さらに、認定日本語教育機関制度の運用上の横断的課題として、学習機会へのアクセスの地域差、国・地方公共団体等の役割分担、「生活」課程を中心とする費用負担のあり方、課題解決の前提となる基礎データ・実態把握の不足が指摘される。
- 認定日本語教育機関制度については、単なる認定の仕組みにとどまらず、日本語教育を在留管理と地域共生を支える基盤としての位置付けが問われる。
- 目次
1. はじめに
「認定日本語教育機関」制度(以下、認定制度)が創設された。これは、2023年6月に公布され、2024年4月1日に施行された「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」に基づき、外国人に対する日本語教育を行う日本語教育機関を文部科学大臣が認定する仕組みとして設けるものであり、2024年度から認定が開始されている。日本語教育の質の確保と、その教育水準の可視化を図る新たな制度的枠組みである。
従来、日本語教育は、法務省告示機関(注1)として留学生を受け入れる日本語教育機関、日本語学校、大学、地方公共団体、国際交流協会、地域のボランティア等、多様な主体によって担われてきた。他方で、教育内容も多様であり、制度上の位置付けや質保証のあり方も一様ではなかった。認定制度の創設は、こうした多様な日本語教育のうち、一定の要件を満たす日本語教育機関を公的に認定する仕組みを導入するものである。
この制度化の意味は、単なる教育の質保証にとどまらない。とりわけ、育成就労制度(注2)の創設により、日本語能力の向上が制度目的として明確に位置付けられ、日本語教育は在留管理制度の運用と結び付く要素となりつつある。これは、日本語教育が従来のように在留外国人本人の努力や地域の支援に支えられるものにとどまらず、在留管理の適正化や共生施策の実効性を支える制度的基盤として位置付けられ始めていることを意味する。
本稿では、まず第2章において、日本語教育の実施主体(注3)を巡る現状と制度の変化を整理する。その上で、第3章から第5章にかけて、「就労」「留学」「生活」の各課程について、それぞれの制度的位置付けと課題を検討する。さらに第6章では、認定制度の運用を巡る主要な論点として、アクセスの地域差、責任分担、費用負担、基礎データ・実態把握の不足を取り上げる。なお、本稿では、我が国に在留し、就労・生活する外国人に対する日本語教育に重点を置いて検討する。
2. 日本語教育の実施主体を巡る制度の変化
(1)現状における日本語教育の実施主体の規模感
まず始めに、現時点で日本語教育の実施主体(以下、実施主体)がいくつあるのか、規模感を確認する。
日本語教育の状況については、文部科学省が「日本語教育実態調査」を行っている。この調査では、「外国人等に対する日本語教育又は日本語教師等の養成・研修を実施していることを文部科学省が把握する国内の機関・団体・施設」に調査票を送付し、回答があったものを集計している。この文部科学省(2025)の場合、調査票の配布数は8,478件、回収率は56.2%であり、回答に基づく日本語教育実施機関・施設等の合計数は2,669である。
文部科学省(2025)の調査結果を基礎としつつ、同調査における法務省告示機関(回答分)を告示掲載数に置き換え、大学機関等を除外した上で(除外理由は後述)、現行制度における日本語教育の実施主体数の規模感を示したのが資料1左図である。併せて、資料1右図は、「認定日本語教育機関」制度の施行後における認定状況を示したものである。左図のような実施主体数の規模を示すものではなく、実施主体のうち認定日本語教育機関に係る部分を最新時点で示したものである。なお、認定日本語教育機関については、次節で詳述する。

まず、法務省告示機関(注1)とは、法令に基づき、在留資格「留学」により日本語教育を受けようとする者の受入れ先として、法務大臣が告示により定める日本語教育に係る施設・団体を指す。①日本語教育そのものを主目的とする独立した日本語教育に係る施設・団体(857施設・団体)、②大学などの高等教育への円滑な参加を目的として日本語を学ぶ付属教育施設(513施設・団体)、および③各種学校等(注4)への入学を目的として日本語を学ぶ付属施設(9施設・団体)に区分され、合計1,379施設・団体が告示に掲載されている(注5)。
文部科学省(2025)では、法務省告示機関以外にも、大学機関等、地方公共団体や教育委員会、国際交流協会、あるいはNPOなどを含む任意団体等が日本語教育実施機関・施設等として報告されている。このうち、大学機関等については、①法務省告示機関に該当する大学等の付属教育施設による日本語教育と、②日本語教育を主目的としない留学生に対する教育活動が、同調査の性質上、区分として切り分けられず混在している可能性があると推測される。そこで、文部科学省(2025)が示すこれらの実施主体の合計数(2,669)から、大学機関等と法務省告示機関を除いたうえで、法務省告示機関数(1,379)を合算すると、全国には約2,900の日本語教育の実施主体があると見ることができる。ただし、回収率等を踏まえると、実際の総数はこれを上回り得るものの、正確な数は把握されていないのが現状である。また、両者には把握対象や集計方法の違いがあり、正確な総数を直接示す公表資料があるわけではない。
こうした限界が生じる理由の一つとして、実施主体の開設について、国の許認可や届出、あるいは都道府県による学校設置認可等を通じて全国一律に網羅的把握を可能にする仕組みが必ずしも整備されていないことが挙げられる。例えば、地域に根差したNPOなどが開設する日本語教室は許認可や届出といった制度には馴染みにくいことに鑑みれば、全国一律の制度設計によって網羅的に把握することには限界がある。結果として、行政による把握は実態調査への回答等に依存しやすく、把握対象の範囲や回収率によって集計値が変動し得る。
一方で、前段で整理した約2,900の内訳のうち、在留資格「留学」の下で日本語教育を受ける留学生の受入れについては、法務大臣告示により定められる法務省告示機関という枠組みが存在する。このため、少なくとも当該範囲については告示掲載を通じて受入れ機関数を制度に基づき把握し得る。すなわち、実施主体を網羅的に把握することには限界がある一方で、留学分野については把握可能な領域が相対的に明確である。
ここまで、数として把握することが部分的に可能であることを確認したが、「質」はどうか。
日本語教育の実施主体は形態が多様であり、前述のとおり網羅的把握にも限界がある。このため、教育課程や教員体制、組織運営といった観点から、実施主体全体を横断して質を一律に確認・担保する教育行政上の枠組みが、少なくとも認定制度が施行される以前は整備されていたとは言い難い。
他方、在留資格「留学」との関係で実施主体を捉える場合には、法務省告示機関という枠組みが存在し、留学の受入れ先要件として位置付けられてきた。また、法務省は告示機関に係る基準を公表しており、教育の実施体制等に関する要件が示されている。もっとも、告示制度は在留資格「留学」の受入れ先要件として運用される制度であり、教育課程・教員体制等を教育行政上の質を確保するという目的で一律に認定・管理する枠組みとは、目的・性格が異なると整理できる。
こうした中、文部科学大臣による「認定日本語教育機関」を中核とする制度が施行され、足元では認定が進みつつある(資料1右図)。次節では、認定制度の概要と、法務省告示機関との関係を整理する。
(2)認定日本語教育機関制度(認定制度)の創設
前節で触れたとおり、認定制度は、日本語教育の適正かつ確実な実施を図る観点から、文部科学大臣が一定の要件を満たす日本語教育機関を認定する枠組みとして施行された。
以下では、制度の対象、認定要件の概要、ならびに在留資格「留学」との関係(法務省告示機関との関係)を整理する。
① 認定制度の目的と基本構造
認定制度は、日本語教育の質を、個々の実施主体の自主性に委ねるだけではなく、一定の基準に基づき外形的に確認・担保しようとするものである。制度上は、文部科学大臣が、日本語教育の実施主体の申請に基づき認定を行い、認定後も、情報公開や報告徴収、指導等を通じて、適正な実施を確保する枠組みとして整理できる。
また、認定制度は、受講者が必要な情報へアクセスできるよう、認定日本語教育機関の情報をポータル等で公表する仕組みを伴う(注6)。これにより、受講者側の選択可能性を高めるとともに、認定日本語教育機関側の説明責任と透明性を高める制度設計となっている。
② 課程区分(留学、就労、生活)と想定される対象
認定日本語教育機関の下では、受講者の目的に応じた課程区分が制度上整理されている(資料1右図)。具体的には、在留資格「留学」により日本語教育を受ける者を主たる対象とする「留学」課程、就労を目的として日本語を学ぶ者を想定した「就労」課程、および生活場面で必要な日本語の習得を目的とする者を想定した「生活」課程の3つである。2025年10月31日までに認定された認定日本語教育機関は、「留学」課程が61、「就労」課程が3、「生活」課程は0であり、合計64機関である(注7)。
ここで重要なのは、認定制度が「留学」だけを対象とする制度ではなく、「就労」「生活」の日本語教育も制度目的の射程に含めている点である。また、認定は機関単位で行われるが、審査は「留学」「就労」「生活」の課程別に行われる。
すなわち、認定制度の導入により、日本語教育は「在留資格の運用(受入れ先要件)」としての側面に加え、「教育政策としての質保証(教育課程・教員体制・運営)」という観点からも制度的に問われる段階に入ったと整理できる。
3. 認定日本語教育機関「就労」―育成就労制度との接続と実施体制の未整備
(1)「就労」課程と育成就労制度との接続
認定制度の意義が最も明確に表れ得るのが、「就労」課程、とりわけ育成就労制度との接続である。育成就労制度は、人材の育成・確保を制度目的の一つとして、就労を継続しながら技能と日本語能力の向上を図り、一定の到達点として特定技能等への移行を見据える枠組みとして整理されている。その運用において日本語能力は重要な要素であり、「育成就労の目標等」として、就労開始前のA1相当(試験合格又は講習受講)から、1年目のA1相当試験合格、育成就労中のA2目標講習受講を経て、終了までにA2相当試験合格に至る段階的な目標が明示されている(資料2、注8)。併せて、A2相当試験合格に向けたA2目標講習(100時間以上)等について、育成就労実施者(受入企業等)が費用負担を含め、受講機会を確保する義務を負うことが示されている。

このように、日本語教育が制度運営上の要請として組み込まれる中で、A1からA2への到達に向けたフローの中に、認定日本語教育機関の「就労」課程が位置付けられている。したがって、育成就労制度の要請に照らすと、「就労」課程には受講機会の確保、運営の透明性、学習成果の説明責任の3点が求められると整理できる。
(ア)受講機会の確保を実効化する「受け皿」の制度化
育成就労制度では、A1相当講習・A2目標講習の提供(受講機会の確保)が育成就労実施者の義務として整理されている。したがって、制度が想定する講習を、就労と両立し得る形で継続的に提供できる外部資源が必要となる。「就労」課程を有する認定日本語教育機関は、この「受講機会確保」という制度要請を具体化する際の受け皿として位置付けられ、企業側の実施義務の履行を現実に可能にする教育資源となり得る。
(イ)運営の透明性と是正可能性を担保する仕組み
就労目的の日本語教育は、受講者本人のみならず、企業・監理支援機関等の関係者が関与し、費用負担も生じ得る以上、提供体制が不透明であれば、形だけの受講に陥るリスクや、質のばらつきが大きくなるおそれがある。認定制度には、情報公開や報告徴収、指導等を通じて適正な実施を確保する枠組みが組み込まれているため、問題が生じた場合に、基準との照合や行政による指導等につなげやすい。結果として、受講者・企業が選択し得る条件(提供体制、運営の見通し、改善の経路)が相対的に明確となり、就労のための日本語教育の質の担保に資する。
(ウ)到達目標(A1~A2等)に整合した課程設計と成果の説明責任
育成就労制度は、段階目標としてA1相当、A2相当といった到達水準を明示している以上、講習提供が「実施したか否か」だけではなく、到達目標と整合した課程設計になっているか、学習成果をどのように説明し得るかが重要となる。認定制度では、教育課程・教員体制・組織運営等の要件が明確化され、認定を通じて外形的に確認されるため、就労目的の日本語教育においても、到達目標に照らした内容設計や実施の説明可能性が相対的に高まり得る。これにより、受講者・企業双方にとって、教育内容と提供体制の見通しが立ちやすくなり、教育の質に関する不確実性の低減につながる。
(2)「就労」課程の課題―制度要請に対する実施体制の未整備
「就労」課程に関連しては、育成就労制度の下で日本語能力向上が制度運用上の要請として組み込まれ、A1相当講習・A2目標講習の受講機会確保や費用負担等が育成就労実施者の義務として整理されている。他方で、「就労」課程を置く認定日本語教育機関は、足元では3施設・団体とごく少数にとどまっている(2025年10月31日までに認定された機関数、資料1右図)。
これに対して、育成就労の受入れ見込数について、出入国在留管理庁は2029年3月末までに426,200人と示している(注9)。そこで、筆者は、同庁が示す育成就労制度の枠組みを踏まえつつ、一定の仮定を置いて、新規の育成就労受入れ規模およびそのうち認定日本語教育機関の「就労」課程による受講が必要となる人数を試算した。具体的な試算値は注10に掲げるとおりである。その結果、現時点の定員規模では、制度が想定する受講機会の確保に十分対応できる状況にはない可能性が示唆される。
もっとも、この試算は、公表統計に基づかない仮定を含む規模感の把握を目的とするものであり、数値は幅をもってみる必要がある。したがって現段階では、「就労」課程を実施する認定日本語教育機関の広がりは、将来見込まれる需要に比してなお限定的であると整理するのが妥当であろう。
このギャップが継続する場合、育成就労制度が想定する講習提供は、実務上「企業内教育」「監理支援機関等による対応」「外部講習(オンラインを含む)」への依存によって埋められる構造となり得る。就労と両立し得る形で、一定の質と継続性をもって提供されるべき講習が、こうした代替手段ごとの能力差に左右されれば、受講機会確保の形式化、教育の質のばらつき、受講者・企業双方の費用負担や調整負担の増大といったリスクが高まる可能性がある。
4. 認定日本語教育機関「留学」―告示校制度からの移行と質保証
(1)「留学」課程と法務省告示機関(告示校制度)との接続
認定制度の3課程のうち「留学」課程は、在留資格「留学」により主として日本語教育を受ける者を対象とする課程として位置付けられている。教育政策として日本語教育の質保証を図る認定制度の中でも、「留学」課程は、留学生受入れという在留制度上の要請(受入れ先要件)と制度的に結び付く点に特徴がある。すなわち、留学生を受け入れ得る教育機関であることを、教育課程・教員体制・組織運営等の要件と併せて、認定を通じて制度上の要件に基づき確認する仕組みである。
従来、在留資格「留学」の受入れ先要件を具体化してきたのは法務省告示機関(いわゆる告示校制度)である。ただし、在留資格「留学」の受入れ先要件を満たす機関を特定し、入管手続上の受入れ適格性を外形的に担保するための枠組みとしての性格が強く、教育行政目的で教育課程・教員体制等を一律に審査・認定する枠組みとは目的・性格が異なる点は前章までに述べたとおりである。
認定制度の導入に伴う重要な変化は、留学分野において、従来は告示校制度によって整理されてきた受入れ先の枠組みが、「留学」課程の認定を通じて、教育政策としての質保証の枠組みに接続されていく点にある。文部科学省の「留学のための課程を置く認定日本語教育機関の認定等について」では、現行の法務省告示機関(留学分野)が引き続き留学生を受け入れる場合、2029年3月31日までに「留学」課程の認定を受ける必要がある旨が示されている。ただし、法務省告示機関は1,379機関ある一方で、2025年10月31日までに認定された「留学」課程は61機関にとどまっている(資料1)。移行期限が示される一方で認定の進捗は限定的であり、留学分野における制度移行をどのように進めていくかが当面の論点となる。
もっとも、「留学」課程を置く認定日本語教育機関については、留学生の受入れに伴う在留管理上の観点から、引き続き一定の情報把握・管理等が求められる(注11)。このため、教育行政と在留管理が制度上は並行して機能する構造になると整理できる。
以上を踏まえると、「留学」課程を有する認定日本語教育機関には、告示校制度が担ってきた受入れ先要件との接続を前提に、教育課程・教員体制・組織運営等について質保証の要件を満たし、その実施状況を情報公開や報告等を通じて継続的に説明可能な形で運用することが求められる。
(2)「留学」課程の課題―制度移行と質保証の実効性
留学分野では、法務省告示機関(告示校制度)から「留学」課程の認定への移行が前述のように求められている。移行期限(2029年3月31日)が示されていることを踏まえると、移行の実務負荷や、認定基準に見合う体制整備の難しさが課題となり得る。
文部科学省が公表する認定日本語教育機関の認定結果(資料3、注12)によれば、法務省告示機関のうち、認定日本語教育機関としての認定を申請した機関を合算すると70施設・団体、このうち認定されたのは19施設・団体である。
もっとも、課程分野ごとの機関種類別内訳は公表されていないため、残る51施設・団体について、①不認定となったのか、②審査中に申請の取り下げを行ったのか、あるいは③審査が継続しているのかは公表資料から一義に確定できない。また、法務省告示機関が「就労」「生活」課程として申請した、あるいは認定を受けた可能性も排除できない。加えて、資料3の認定結果から、法務省告示機関ではない、「その他」として区分される機関が「留学」課程を申請・認定されていることから、少なくとも一部には法務省告示機関以外の機関が認定を受けたものと考えられる(注13)。
したがって、3課程のうち在留資格「留学」の受入れと直接結び付く、法務省告示機関から「留学」課程への移行のみを切り出して、認定制度への移行の進捗状況を評価することには限界がある。ただ、その点を踏まえても、申請機関数や認定機関数に加え、不認定・取下げといった結果が生じ得ること自体は、移行が形式的なものにとどまらず、認定基準(教育課程・教員体制・組織運営等)に即した体制整備を伴うプロセスであることを示唆している。

加えて、認定結果一覧を見ると、認定された各機関には、認定基準等の根拠規定と紐づいた「留意事項」が個別に付されている。留意事項は、以下のような運営・教育の具体的運用面に踏み込む内容が多い。
-
主任教員の職務過重を踏まえた教職員体制の見直し
-
シラバス等の学習目標が言語知識偏重に見えないよう「参照枠」を踏まえた到達目標設定の共有
-
成績評価・修了要件の透明性(学則の規定を含む)
-
自己点検・評価が「現状確認」にとどまらないよう理念やエビデンスに基づく評価項目への改善
-
募集要項等で入学手順・費用・資格外活動ルール等を誤解なく示す情報提供の充実
したがって、留学課程においては、認定取得により外形的な基準適合が確認される一方で、認定日本語教育機関制度が想定する質保証の実効性は、これら留意事項を踏まえた改善状況が定期報告や確認の中で継続的に点検されるかどうかに左右される、と位置づけるのが適切であろう。
5. 認定日本語教育機関「生活」―未確定の制度設計に伴う課題
(1)「生活」課程の制度的位置付け
日本で生活する上で必要となる日本語を理解し、使用する能力の習得を目的とするのが「生活」課程である。もっとも、現時点での公表資料から読み取れるのは、制度趣旨や課程区分、審査単位といった枠組みが中心であり、「生活」課程について、全国的に統一された到達像――例えば「就労」課程における育成就労制度と連動したA1・A2のような段階目標――が同程度の粒度で具体化されているとは言い難い(注14)。したがって現時点では、「生活」課程は「生活に必要な日本語能力の習得」を中核に置きつつ、各認定日本語教育機関が設定する課程設計・到達目標が、ポータル等を通じた情報公開を通じて順次具体化されていく性格が相対的に強いと整理できる。
他方、政府が2026年1月に決定した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(以下、総合的対応策)では、外国人が日本語学習に加え、日本で生活する上で必要となるルール・マナー等を学ぶことを含む施策が示されている。現段階で、これらの施策が直ちに認定日本語教育機関の「生活」課程と制度的に連動することまで明示されているわけではない。しかし、行政手続、医療、防災等の生活基盤に関わる場面で必要となる日本語に加え、生活上必要な知識(ルール・マナー等)の理解を促す取組を、政策パッケージとして強化していく方向性は読み取れる。したがって今後、「生活」課程の制度設計は、共生施策の具体化・拡充に伴い、その内容や到達像がより明確化される余地がある。
(2)「生活」課程の課題―対象・到達像・既存施策との関係整理
現時点で「生活」課程の認定機関が存在しない背景には、単に申請主体が現れていないというだけでなく、そもそも申請判断の前提となる制度設計が十分に具体化されていないことがあると考えられる。認定制度上、「生活」課程も「留学」「就労」と同様に、教育課程・教員体制・組織運営等について認定基準に基づく審査の対象とされている。しかし、「生活」課程については、誰を主たる対象とし、どのような生活場面を念頭に置き、どの程度の日本語能力の習得を目指すのかといった基本的要素が、「留学」課程や「就労」課程に比べてなお流動的である。
この背景としては、少なくとも次の構造的要因が考えられる。
第一に、「留学」課程のように在留資格の受入れ先要件と直結する制度接続や、「就労」課程のように育成就労制度の段階目標(A1・A2)と連動した明確な制度要請が、現時点で「生活」課程には同程度の形では示されていない。
第二に、生活場面における日本語学習は対象者の属性や必要場面が多様であり、受講ニーズの把握、到達目標の共通化、認定日本語教育機関の位置付け等、申請判断の前提となる制度設計が相対的に難しくなりやすい点が挙げられる。
ただし、こうした仮説は、現状において生活のための日本語教育の実施主体が存在しないことを意味するものではない。地域の国際交流協会やNPO等が、生活場面で必要となる日本語を中心に教えているケースは十分に考えられる。一方で、実態把握の面では制約がある。文部科学省(2025)は、国内の日本語教育の状況把握を目的として、機関・施設等数、教師等数、日本語学習者数等を中心に集計しているが、各実施主体(大学等機関、地方公共団体・教育委員会、国際交流協会、法務省告示機関、任意団体等)が提供している教育内容について、「生活のための日本語」なのか「就労のための日本語」なのかといった区分に基づく実態把握が行われていることまでは確認できない。したがって、生活分野の受講ニーズや提供実態を定量的に把握し、到達目標の整理や認定日本語教育機関の位置付けにつなげるための基礎情報は、現時点では必ずしも十分ではないと整理できる。
また、「生活」課程を認定制度の下で位置付ける場合には、既存の地域日本語教育施策との関係整理も課題となる。地域における日本語教育を担ってきたと考えられる地方公共団体、国際交流協会、NPO、地域のボランティア等は必ずしも認定制度を前提として構成されてきたわけではない。やはり「生活」課程を制度上どのように位置付けるのかを明確にしなければ、既存の取組との接続関係も見えにくく、申請主体にとっての判断材料も十分には整わない。
以上を踏まえると、「生活」課程において申請を促し得る環境を整えるためには、少なくとも、①想定する対象、②到達像、③認定日本語教育機関の位置付け、④既存施策との関係、といった要素について、一定の制度的見通しが示される必要がある。対象と目的が定まらなければ、課程設計や実施主体の参入判断も具体化しにくく、結果として認定制度が制度上は存在していても実際には活用されない状態が続くことになる。なお、費用負担のあり方はこうした制度設計と密接に関わるが、その運用上の論点については次章で改めて論じる。
6. 認定日本語教育機関制度の運用上の横断的課題
ここまで見てきたとおり、認定日本語教育機関制度は、「留学」「就労」「生活」の3つの課程を同一の制度枠組みの下に位置付けている。他方で、認定は機関ごとに行われるものの、文部科学省によれば、審査は「留学」「就労」「生活」の課程別に行われる。このため、複数の課程を置く場合には、それぞれの課程ごとに認定基準への適合が審査され、ある課程は認定されても、他の課程は認定されない場合があり得る。また、各課程は制度との接続のあり方、求められる到達像等において異なる性質を有している。以上から、個別課程の課題は前章までに整理したとおりであるが、認定日本語教育機関制度を実際に運用していくにあたっては、課程ごとの差異を前提としつつも、学習機会へのアクセス、国・地方公共団体・認定日本語教育機関の役割分担、費用負担、さらには制度設計の前提となる基礎データの整備といった、制度全体に関わる論点についても検討する必要がある。
(1)「就労」課程を中心にみた日本語教育へのアクセスの地域差
認定日本語教育機関の課題として指摘されるのが、アクセスの地域差解消である(注15)。ただ、「留学」課程は、地方における労働力確保という政策課題と制度上接続する「就労」課程とは性格を異にし、大学等の教育機関の立地や進学先へのアクセスといった教育を提供する側の条件の影響を相対的に受けやすいと考えられる。また、「生活」課程は制度設計の途上にあり、全国的に統一された到達像や提供体制の全体像が見えにくい。そこで本節では、「就労」課程を取り上げ、アクセスの地域差解消という課題を検討する。
育成就労制度では、地方への配慮施策として、8都府県を大都市圏等として整理する一方で、それ以外の道県を指定区域(地方)とし、監理型の受入人数枠について、指定区域(地方)に所在する優良な育成就労実施者等に対し、基本人数枠の3倍まで拡大し得る整理が示されている(注16)。
そこで、便宜上、大都市圏等とされる8都府県と、指定区域(地方)の39道県について、将来的に「就労」課程を提供し得る日本語教育の実施主体の所在状況を確認すると、全国2,397施設・団体のうち、1,236(51.6%)が8都府県に集中している(注17、都道府県別の内訳は注記内に補足資料3として掲載)。他方で、育成就労制度は未施行であるため、都道府県別の技能実習生数を代替指標として使用すると、2025年6月末時点で大都市圏等に在籍するのは37.9%であり、残りの62.1%は指定区域(地方)に在籍している。技能実習と育成就労は制度目的・運用が同一ではないため、現在の比率がそのまま育成就労生にも当てはまるわけではない。もっとも、前述の育成就労制度は地方での受入れ拡大を促す設計であることを踏まえると、今後、地方への在籍が相対的に増加する可能性がある。こうした局面において、受入れ地域における「就労」課程の提供拠点をどのように確保するか、あるいは認定日本語教育機関としての認定取得が進まない場合に、どのように補完していくかが論点となり得ることを示唆する。
また、指定区域(地方)に当たる39道県のなかでも、現状の日本語教育の実施主体の分布には濃淡がみられる。実施主体の数のみに着目するものであるが、例えば福岡県には大都市圏等の一部の府県に相当する水準の実施主体が所在する。これに次いで茨城県、静岡県、北海道および広島県にも比較的多くの実施主体が所在する。なお、これらの道県には技能実習生も比較的多く在籍している。他方で、大分県、沖縄県、鳥取県、和歌山県など、実施主体数が10程度と、相対的に少ない県も存在する。現状ではこれらの県の技能実習生数は比較的少ない。このような濃淡は、指定区域(地方)における受入れ拡大が進む局面において、「就労」課程の提供体制を各地域でどのように確保するかという論点について、全国一律ではなく、地域ごとの実情に即して検討する必要があることを示唆する。
もっとも、本章の試算は、あくまで将来的に「就労」課程を提供できる可能性のある、日本語教育の実施主体の所在を概観するものであり、認定日本語教育機関としての基準充足状況や、実際の受講可能枠(教員体制、開講頻度など)および日本語教育へのニーズとその充足率を直接的に示すものではない。このため、上記の地域差は、直ちに「就労」課程の提供可能性の差を意味するものではなく、育成就労生の受入れと学習機会確保という課題の両輪を示す補助的な材料として位置付けるものである。
(2)学習機会確保における国・地方公共団体等の役割分担
認定日本語教育機関の設立を、日本語教育の実施主体の自助努力に完全に委ねるのは適当ではないと筆者は考える。育成就労制度の創設にあたり、日本語能力を要件として位置付け、かつ地方での受入れ拡大を促す制度設計を国が採る以上、学習機会の確保は制度の前提条件であり、認定制度を所管する文部科学省を中心に、法務省、出入国在留管理庁、およびその他の関係省庁が一定の責任を負うべきであろう。実際、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策について」(以下、総合的対応策)には、日本語や制度・ルール等を学ぶプログラムの創設等が盛り込まれており、また、国の責任において受入れ環境を整備する趣旨も示されている。
他方、総合的対応策は地方公共団体への支援策の拡充等も掲げているが、日本語教育を制度要件として位置付ける局面においては、地方支援の拡充にとどまらず、文部科学省を中心とする関係行政機関が質保証と最低限の提供基盤を担保し、地方公共団体の取組をその枠組みの中で支える構図が求められると考えられる。なお、生活者としての外国人に対する地域日本語教育については、文化庁が地方公共団体による体制整備を補助する支援策を講じている(注18)。この方式は地域の創意工夫を促す一方で、体制整備の進捗や日本語教育の提供が自治体の財政力・人員、関係主体の有無に左右されやすく、結果として地域差が残り得る。日本語能力を制度要件として位置付ける局面では、こうした補助中心の支援にとどまらず、国が質保証と最低限の提供基盤を設計し、空白が生じやすい地域を優先して供給を担保する枠組みへと重心を移すことが求められる。
この役割分担を具体化する手段としては、都道府県よりも広い圏域単位で中核機能を整備する複数のオプションが考えられる。通勤・生活圏や産業集積に即した圏域を基本単位として、国が設計した枠組みの下で都道府県・圏域が広域調整を担い、市区町村は周知・伴走等の前線機能に重点化する分業を構築することが、アクセス偏在の是正と制度運用の両立に資すると考えられる。
もっとも、こうした役割分担の具体化の仕方は一様ではなく、制度設計には複数の選択肢があり得る。以下では、私案として考えられる二つの方向性を示す。
第一に、国と都道府県・圏域が、国際交流協会等の公的性格の強い主体を中核的な認定日本語教育機関として位置付け、拠点維持や教員確保、評価・研修等の基盤部分を重点的に支援する方法である。中核機関が企画・運営を一体的に担うことで、統一的な実施と説明責任を確保しやすいという利点がある。
第二に、国が質保証と最低限供給を担保するためのフレームワーク(到達目標、評価・記録様式、研修要件、必要な教員体制等)を標準化した上で、その枠組みに沿って授業提供を委託・契約により確保する方法である。このモデルは、特定の実施主体への依存を避けつつ、需要の変動や地域特性に応じて実施体制を伸縮させやすい点で、相対的に実効性が高い可能性があると筆者は考える。このような標準化・多元委託モデルの運用形態は複数想定される。例えば、①圏域ごとに単一の受託者(事業者・団体)に一括委託して提供枠を確保する形、②複数の事業者・団体と並行して契約し、地域・時間帯・対象者属性に応じて提供枠を配分する形、③登録日本語教員を含む個人とも契約し、教員プールを形成して必要に応じて派遣・配置する形である。いずれの形態であっても、フレームワークの遵守と学習成果の記録・検証を通じて質保証を担保し、空白が生じやすい地域を優先して提供枠を確保する運用設計が鍵となる。
さらに、このモデルを具体化する一案としては、新たな施設整備を前提とせず、既存の公共施設(公民館、地域のコミュニティセンター等)を日本語教育のサテライト拠点として活用する方法が考えられる。標準化されたフレームワークの下で、中核機能(教材・評価、研修、記録、品質管理等)を圏域で整備し、授業提供場所はサテライトとして確保することで、空白が生じやすい地域にも比較的低コストで学習機会を展開し得る(注19)。
(3)「生活」課程を中心にみた費用負担のあり方
前節で指摘した、認定日本語教育機関へのアクセスの地域差解消という課題の次に問われるのは、その運用コストを誰がどのように負担するのかという論点である。費用負担の設計が不明確な場合、日本語教育の実施主体の参入・継続が進まず、結果として日本語教育の空白や地域偏在が固定化し得る。以下では、「生活」課程を議論の中心に据え、費用負担のあり方を整理する。
認定日本語教育機関制度においては、授業提供に加え、教員確保・研修、学習成果の評価、記録管理、報告等の制度対応を伴う。これらのコストには、拠点維持や一定の事務体制等として受講者数に左右されにくい固定費がある一方、受講者の増加に応じて増えやすい変動費(教材、クラス編成、評価・記録の処理負荷等)や、規模の拡大に応じて段階的に増える準固定費(教員の追加配置、研修・品質管理の拡充等)も含まれる。費用負担の所在が曖昧であれば、認定日本語教育機関が持続的に体制を維持できず、制度運用の実効性が損なわれる。
ただし、「留学」課程は、日本語教育を受ける側が学費等として受益の対価を支払うという構造として比較的整理しやすい。また、「就労」課程については、少なくとも育成就労制度において、受入れ側(育成就労実施者)が日本語講習等の費用負担を要する旨が整理されており、企業負担を基本とする構造が明確に示されている。他方、「生活」課程については、対象の広がりや制度目的の多様性を踏まえると、費用負担のあり方を受講者本人の負担に単純に帰着させることは難しく、制度目的と対象範囲に応じて整理する必要がある。
「生活」課程の費用負担は、一義的には受講者本人の負担と整理する考え方があり得る。他方、「生活」課程は共生施策としての公共性を持ち得るほか、生活上の困難の軽減や社会参加の促進を通じて行政対応の効率化にも資し得る。なお、帯同家族を含む在留外国人が日本語や制度・ルール等を学習するプログラムの創設や、その受講・理解を在留審査における考慮要素とすることが検討されているとしても(注20)、当該プログラムと「生活」課程との関係は現時点で制度的に確定しているわけではない。その上で、仮に今後、当該プログラムに「生活」課程の活用が含まれるのであれば、公費負担を含めた制度設計を検討する余地がある。一方で、本人負担が発生する場合、過度な負担は受講機会を阻害し、上記プログラムの実効性を損ない得る。総合的対応策においても、外国人が日本語や日本の風土・文化、ルール・制度等を分かりやすく学習する機会が限られ、参加のインセンティブが欠如していることが問題として示されている。このため、所得水準等に応じた減免、導入期の負担軽減、生活上の必要度に応じた重点化など、受講を促す設計と一体で検討することが求められるであろう。なお、プログラム、あるいは「生活」課程の対象範囲は制度設計上の重要な論点であるが、ここではその指摘にとどめたい。
この公費負担の財源としては、例えば総合的対応策では、在留許可手数料・査証手数料の見直しにより、外国人に関わる各種施策・出入国在留管理の体制を強化・拡充することを掲げている。日本での生活に必要な日本語の学習機会にこれらの財源を充当することも検討に値する。
また、「生活」課程の受講による便益は就労に限定されるものではなく、前述のとおり、生活上の困難の軽減、制度・ルールの理解、社会参加の促進等を通じて、結果として行政対応の効率化や社会全体の安定に資する可能性がある。したがって、費用負担のあり方については、短期の支出のみで評価するのではなく、中長期の便益も含めて政策効果を点検する視点が求められる。日本語教育への公的関与は、在留外国人に対する一方的な給付としてではなく、日本に居住する外国人が国民と共に円滑に日常生活や社会生活を営むことができる環境を整えるための基盤整備として位置付けることが適当ではないだろうか。
以上の検討を踏まえると、本節の費用負担の論点は、公費負担の有無と多寡もさることながら、前節で論じた責任分担の問題と一体として整理することを求めたい。
(4)課題解決の前提となる基礎データ・実態把握の不足
ここまで確認してきたとおり、認定日本語教育機関制度の運用を巡る課題は、現状での日本語教育の実施主体の所在の地域差や将来的な受講機会の確保、責任の所在や費用負担の整理など、課程ごとに異なる形で現れている。もっとも、こうした課題を実態に即して検討するためには、その前提として、どこに日本語教育を必要とする外国人が居住しているのか、また、どこで誰が日本語教育を実施しているのかを把握し得る基礎データが整備されている必要がある。現時点では、この両面において、政策判断の基礎となる情報基盤は必ずしも十分とはいえない。
第一に、拙稿(宍戸2025a, 2025b, 2025c)でも論じたとおり、外国人住民については、本人による在留カードの提示に基づき、住民票に在留資格、在留期間およびその満了日が記録される実務である一方、実際にどの在留資格を有する者が、どの市区町村に居住しているのかについて、政策目的に即した最新かつ一体的な情報として把握することは容易ではない。また、在留状況と就労状況を含めて一体的に把握・活用する仕組みも、少なくとも現時点で十分に整っているとは言い難い(注21)。どこに日本語教育を必要とする者がいるのかを的確に把握できなければ、学習機会の確保や地域差への対応についても、実態に即した施策を講じることは難しい。
第二に、日本語教育の実施主体についても、全国一律の網羅的な把握に基づく統計基盤が整っているとは言い難い。本稿において参照している文部科学省の日本語教育実態調査は、国内の日本語教育の状況を把握する重要な調査であるが、例えば「留学」課程についてみると、法務省告示機関数の取扱いは法務大臣告示掲載数とは一致せず、把握方法の違いが結果に影響している(詳細は注5を参照いただきたい)。また、「生活」課程に関連して、各実施主体が提供する教育内容が、「生活のための日本語」なのか「就労のための日本語」なのかといった区分で把握されていることまでは確認できない。この点は、現行調査項目と認定制度上の課程区分との差異による可能性があると推測するが、日本語教育を誰がどこで担っているのかを、政策判断に足る粒度で把握するにはなお限界がある。
したがって、認定日本語教育機関制度の運用上の課題を解決するためには、個別課程ごとの課題を実態に即して検討する前提として、外国人の在留状況と日本語教育の実施主体を把握し得るデータ基盤の整備が不可欠である。どこに日本語教育を必要とする者がいるのか、どこに日本語教育の実施主体が存在するのかを把握できてこそ、学習機会へのアクセス、役割分担、費用負担といった論点についても、実態に即した検討が可能となる。
7. おわりに
本稿では、育成就労制度の創設等を背景として、日本語教育を巡る制度環境の変化と、認定日本語教育機関制度の意義および課題を検討してきた。日本語教育は、在留管理の適正化と共生施策の実効性を支える基盤として、その重要性を増している。その意味で、一定の要件の下で日本語教育の質を担保しようとする認定日本語教育機関制度の意義は大きい。
もっとも、「留学」「就労」「生活」の3課程は、制度との接続のあり方、対象、実施主体、費用負担の考え方等において相互に異なる。このため、制度運用にあたっては、各課程の性質に応じた整理が必要である。また、その前提として、在留状況や日本語教育の実施主体を把握し得る情報基盤の整備が不可欠である。
認定日本語教育機関制度は、単なる認定の仕組みにとどまらず、日本語教育を在留管理と地域共生を支える基盤としてどのように位置付けるのかを問う制度である。今後は、認定日本語教育機関制度を所管する文部科学省を中心に、法務省、出入国在留管理庁、その他の関係省庁、および地方公共団体が連携しつつ、学習機会の確保と質保証の両立に向けた具体的な制度設計と運用が求められる。
大学や日本語学校のみならず、地域のボランティア等によっても担われてきた日本語教育は、いま制度化の転換点を迎えている。その整備が管理のためだけに終わることなく、豊かな共生社会を支える基盤として実を結ぶことを期待したい。
【注釈】
-
法務省告示機関の根拠法令は、「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」である。併せて法務省は、告示機関に係る告示基準等を公表している。本文で後述するとおり、告示機関は、同省令の別表に基づき、①別表第一の規定に基づく施設・団体(日本語教育そのものを主目的とする独立した日本語教育に係る施設・団体)、②別表第三の規定に基づく付属教育施設(大学等の高等教育への円滑な参加を目的として日本語を学ぶ付属教育施設)、③別表第四の規定に基づく付属施設(各種学校等(注4)への入学を目的として日本語を学ぶ付属施設)に区分される。
-
育成就労制度とは、2024年の法改正により創設された制度であり、育成就労産業分野において、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保することを目的とするものである。受入れ対象分野は特定技能制度の受入れ分野と原則一致するとされており、制度の詳細は一部の規定を除き2027年4月1日に施行される予定である。育成就労制度の創設に至る経緯等については、重原(2024)を参照いただきたい。
-
本稿では、一般に「日本語学校」と呼ばれるものを含め、日本語教育を実施する施設・団体を総称して「日本語教育の実施主体」(以下、実施主体)と表記する。これは一般名詞として用いるものであり、本稿後段で述べる文部科学大臣が認定する「認定日本語教育機関」、および法務大臣が告示で定める「法務省告示機関」とは区別することを目的とするものである。文部科学省(2025)とは異なる集計方法を採用しているため、同調査で使用される「日本語教育実施機関・施設等」とも区別している。
-
ここで述べる「各種学校等」とは、学校教育法上の「各種学校」(専修学校とは別に、各種の教育を行う学校として都道府県知事の認可等を受けて設置されるもの)および、設備や編制がこれに準ずる教育機関を指す。これらの教育機関で、在留資格「留学」により主として日本語教育を受ける目的で在留する場合には、法務大臣が告示により定めた日本語教育機関(法務省告示機関)であることが求められる。
-
文部科学省(2025)の調査では、法務省告示機関は648施設・団体と報告されている。これは、同調査が、文部科学省が把握する実施主体に調査票を送付し、回答があったものを集計した結果であり、法務大臣告示に掲載された数(筆者集計では1,379)とは把握方法が異なることによるものと考えられる。
-
文部科学省の日本語教育機関認定法ポータルでは、認定日本語教育機関のほか、登録実践研修機関、登録日本語教員養成機関、および登録日本語教員の一覧を閲覧できる。
(https://www.nihongokyouiku.mext.go.jp/application/top) -
文部科学省によれば、認定日本語教育機関としての認定は機関単位で行われるが、審査は留学のための課程、就労のための課程、生活のための課程の別に行う、としている。例えば、ある日本語教育の実施主体が、3つの課程すべてで教育を行おうとする場合、それぞれの課程において認定を受ける必要がある。
-
日本語能力A2相当以上とは、文化庁「日本語教育の参照枠」における6段階(A1~C2)のうち、基礎段階の上位(A2)に相当する水準を指す(補足資料1)。A2は、買い物、近所、仕事など直接関係のある領域について、よく使われる文や表現を理解し、簡単で日常的な範囲で情報交換に応じることができる段階とされる。日本語能力試験(JLPT)N4は、基本的な語彙・漢字を用いて書かれた身近な話題の文章を読み理解し、日常的な場面でややゆっくり話される会話を聞いて内容を概ね理解できる水準の目安として示されている。

-
出入国在留管理庁「育成就労Q&A(Q4-2)」では、令和10年度末までの見込数として示される約123万人(特定技能80万5,700人・育成就労42万6,200人)について、「特定技能外国人・育成就労外国人の在留者数の総計の受入れ見込数であって、現在の在留者数に加えて受け入れる数ではありません」と説明している。
-
新規の育成就労受入れ規模を始めとする本節の試算は、以下の方法により実施した。詳細は補足資料2を併せてご覧いただきたい。
(2029年3月末時点の育成就労受入れ見込み総数と新規受入れ必要規模)
-
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A(Q4-2)」では、2029年3月末までの育成就労受入れ見込み総数は426,200人とされているが、これは新たに受け入れる人数ではなく、同時点における育成就労外国人の在留者数の総計として示されている。
-
加えて、同庁「育成就労制度の概要」では、育成就労産業分野は特定技能制度の受入れ対象分野と原則一致するとされる一方、国内での育成になじまない分野等は対象外となり得ると整理されている。
-
また、同庁「育成就労制度の関係省令等について」では、育成就労外国人の受入れ人数枠の計算において、2027年4月1日の施行後も技能実習を行う1号技能実習生および2号技能実習生の数を、育成就労外国人の数として計算することとされている。施行日時点で技能実習を行っている1号技能実習生は施行後も2号技能実習に移行することが可能であり、また、施行日時点で技能実習を行っている2号技能実習生のうち、2号技能実習を1年以上行っている者は3号技能実習に移行することが可能とされている。
-
したがって、2029年3月末時点の育成就労受入れ見込み総数426,200人を、そのまま新規受入れ必要規模とみることはできない。
(育成就労外国人の数とみなす技能実習生数の試算方法)
-
上記の受入れ対象分野の限定を踏まえ、出入国在留管理庁が公表する「職種・作業別 在留資格『技能実習』に係る在留者数」(2024年12月末時点で456,595人)から、特定技能と接続していない職種・作業に従事する技能実習生を控除した405,308名を母集団として、2027年4月1日以降も受入れ人数枠の算定上「育成就労外国人の数として数える」技能実習生数を計算した。
-
なお、特定技能と接続していない職種・作業の控除は、出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」に基づき、筆者が職種・作業別内訳を分類して行ったものである。
-
また、技能実習の職種・作業別在留者数には、1号、2号および3号の内訳が付されていないため、当該内訳は直近(2025年6月末)の在留外国人統計の構成比を用いて補完した。この1号、2号および3号それぞれの在留外国人数については、2024年12月末時点と2025年6月末時点とでその比率に大きな差がないことから、最新値を用いることによる試算の歪みは限定的と考えられる。
-
計算にあたり、4月を期始と仮定している。
-
また、就労継続率として、四半期で99.2%と設定した(2024年12月末と2025年6月末の技能実習生総数を比較し、簡易的に設定したもの)。継続率自体は複利で乗じている。
-
なお、技能実習生数の動態が分かるデータは非公表であることから、試算上、2024年12月末から2027年3月末までの期間の技能実習生の新規流入はゼロと仮定している。この仮定は便宜的なものであり、実際に流入がある場合、残存規模は大きくなり、その分、新規の育成就労受入れ必要規模は小さくなる方向に働く。
(育成就労受入れ見込み総数の試算方法)
-
上記のように試算して得た、育成就労外国人の数としてみなす技能実習生数を、育成就労受入れ見込み総数(426,200人)から控除したうえで、2029年3月末時点で受入れ見込み総数に到達するよう、2027年4月期始および2028年4月期始の育成就労生数を逆算した。
-
なお、2027年度と2028年度とで同数が新たに育成就労生として就労すると仮定している。試算にあたり、育成就労の継続率は制度開始前で実績統計がないため、技能実習生数の試算に使用した継続率を便宜的に準用している。
-
この結果、2029年3月末時点の育成就労受入れ見込み総数426,200人に対して、同時点で在留する育成就労生の数は全国合計で416,897人と試算される。
(日本語教育が必要な育成就労生の試算方法)
-
日本語教育が必要な割合は育成就労生の70%、このうち認定日本語教育機関で「就労」課程を受講する割合は50%と設定している。
-
ただし、いずれも仮定の根拠となり得るデータが公表されていないため、筆者が規模感を把握するために便宜的に設定した任意の乗率である。このため、実際に日本語教育が必要な育成就労生の割合、およびこのうち認定機関で受講する人数は、統計・制度運用の公表が進めば更新し得る。なお、認定日本語教育機関が担う割合を5割と置いているのは、需要の全てを認定機関が担うという前提ではなく、その半分を担うにとどまるとする仮置きである。
-
この仮定に基づけば、日本語教育が必要な人数は、2027年4月期始で80,582人、2028年4月期始で233,206人と試算され、このうち認定日本語教育機関で「就労」課程を受講する人数は、2027年4月期始で40,291人、2028年4月期始で116,603人と試算される。これらは各年度の期始時点の人数であり、年度中の流入等を含む年間累計人数ではない。
(「就労」課程の足元の実施規模との比較)
- また、2025年10月31日時点で「就労」課程の認定を受けている3施設・団体の定員合計613名は、認定日本語教育機関ポータルに掲載された総収容人数を筆者が合算したものであり、一定期間当たりの新規受講可能人数を直接示すものではない。したがって、本文における比較は、制度が想定する受講需要に対して、足元で「就労」課程を実施する認定日本語教育機関の広がりがなお限定的であることを示す大まかな目安として位置付けるものである。

-
文化庁「認定日本語教育機関に関する省令等の案について」では、「『留学』の課程を置く機関については、現行の法務省告示機関が出入国在留管理庁へ報告を求められている、生徒の出席状況や資格外活動の状況等について、在留管理の観点から、引き続き同等の内容の報告が求められる予定」とされている。さらに、文部科学省・出入国在留管理庁「出席管理及び在留継続支援体制に係る認定日本語教育機関の運営に関するガイドライン」において、留学のための課程を置く認定日本語教育機関に関し、出席管理および在留継続支援体制に係る運営上の具体的事項が示されている。
-
文部科学省が公表する認定結果概要のうち、令和6年度(2024年度)1回目については、申請機関総数72機関に対し、課程分野内訳においては留学72機関、就労1機関、生活1機関で合計74機関となっており、申請機関総数と一致しない。また、認定とした日本語教育機関は22機関、不認定とした日本語教育機関は3機関、審査中に取下げを行った日本語教育機関は36機関であるが、これらを合計すると61機関となり、やはり申請機関総数と一致しない。後者の不一致の理由については、公表資料上明らかでないため、本文後段では「審査が継続している可能性がある」と筆者の推測として記載している。
-
ここでいう「その他」は、日本語教育の実施主体一般ではなく、資料3の認定結果において「その他」と区分された、留学生の受入れに関わる日本語教育機関を指す。認定日本語教育機関制度創設後も、日本語教育の実施主体は認定日本語教育機関に限られないが、日本語教育機関における勉学を目的として「留学」の在留資格で在留するためには、法務省が告示で定める日本語教育機関又は認定日本語教育機関に入学する必要がある。このため、法務省告示機関ではない日本語教育機関が直接「留学」課程の認定を受けることは制度上可能である。また、既存の法務省告示機関が引き続き留学生を受け入れる場合には、2029年3月31日までに「留学」課程の認定を受ける必要がある。他方、資料3で「その他」と区分された機関が、法務省告示機関ではなく認定申請を選択した具体的理由は、公表資料上明らかではない。制度移行を見据えて当初から認定取得を目指したものとも考えられるが、この点は制度構造からの筆者の推測を含む。
-
文部科学省「就労のための課程・生活のための課程を置く認定日本語教育機関の認定等について」では、「生活」課程を生活に必要な日本語能力の習得を目的とする課程として位置付け、認定要件(課程編成上の要件)として、就労・生活は「B1以上目標の課程を1つ以上置くこと」等を示している。他方、育成就労制度では、日本語能力A1・A2を制度運用と連動して育成就労外国人本人に求める段階目標として整理している。しかし、「生活」課程について同様の全国共通の段階目標が示されていることまでは、少なくとも上記資料からは確認できない。
-
文部科学省(2025)の調査でも日本語教育の空白地帯が課題として指摘されている。ただし、調査実施時点では認定日本語教育機関制度は創設されておらず、同調査は日本語教育の実施主体の分布(空白地域)に関する実態把握として位置付けられる。
-
大都市圏等とは、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県のうち、過疎地域として列記される区域を除く地域を指す。ただし、本文の試算は都道府県別集計に基づくため、便宜上、8都府県の全域を大都市圏等として扱っている。また、監理型とは、監理支援機関の関与を前提とする受入形態(監理支援を受けて受入れを行う類型)を指す。
-
全国で2,397施設・団体とした日本語教育の実施主体の都道府県別内訳は補足資料3の通り。また本文における試算の詳細は以下のとおり。
-
法務省告示機関(別表第一)数と、文部科学省(2025)における「一般の施設・団体」(大学等機関および告示機関を除く)数を合算し、2,397施設・団体とした。なお、本文の資料1では法務省告示機関数として、日本語教育に係る独立した施設・団体(別表第一)、大学等の付属教育施設(別表第三)、および各種学校等の付属施設(別表第四)の合計で1,379施設・団体と記載した。しかし、別表第三は高等教育への円滑な参加を目的とすること、また別表第四は各種学校等の本体校入学を前提とした準備教育を目的とすることから、本試算における合計数からは除外した。
-
別表第三に基づく付属教育施設については、当面は「留学」課程の認定取得を優先すると推測されるが、将来的には人材・ノウハウ・施設設備等を生かし、「就労」課程や「生活」課程の日本語教育を提供する可能性も考えられるため、補足資料3に参考値として記載した。
-
育成就労制度は特定技能への接続を制度上明確にした枠組みとして創設されるが、本稿公表時点では未施行であり、育成就労生の都道府県別の在留状況を示す統計は存在しない。このため、現行の技能実習制度の下で把握可能な技能実習生数(2025年6月末)を、将来の育成就労の受入れ地域を検討する際の代替指標として掲載した。なお、2025年6月末の技能実習生総数は449,432名であるが、いずれの都道府県にも区分されない「未定・不詳」が650名と報告されているため、補足資料3の合計数はこれとは一致していない。
-
もっとも、技能実習と育成就労は制度目的・運用が同一ではないため、育成就労生数の代替推計ではなく、あくまで現時点で観測可能な就労関連人員の規模・地域分布を示す補助情報として使用している。
-
なお、育成就労制度における指定区域(地方)および指定区域外(大都市圏等)の区分は市区町村単位で設定されるため、都道府県集計には一定の限界がある。

-
文化庁では「地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業」を実施している。これは、地方公共団体が関係機関等と有機的に連携しつつ、日本語教育環境を強化するための総合的な体制づくり等を行う取組に対し、必要経費の一部を補助することで、「生活者としての外国人」の日本語学習機会の確保を図ることを目的としている。なお、事業概要、募集要領等は文化庁ウェブサイト「地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業」に掲載されている。
-
本稿でいう「サテライト拠点」とは、認定日本語教育機関(中核機能を担う主体)が、統一したカリキュラム・評価・記録等の枠組みの下で授業を実施するために確保する、補助的な授業提供場所を指す。サテライト拠点として公民館や地域コミュニティセンター等の既存公共施設を活用する場合であっても、認定日本語教育機関としての審査における施設要件との関係では、単に施設が存在することをもって足りるものではなく、当該機関が授業提供場所として継続的・安定的に使用できること(例えば、一定期間にわたる使用権限や優先利用の確保)が重要となると考えられる。したがって、サテライト拠点の活用を前提とする場合には、①中核機関が施設要件を満たす拠点を確保した上で、②サテライト拠点についても継続利用を協定・契約等により担保し、③中核機関が授業運営(教材・評価・記録・研修・品質管理)を一元的に管理する運用として整理することにより、施設要件に関する実務上の不確実性を低減し得ると考えられる。なお、これは筆者の私案であり、現行要件の運用で対応できるか、要件の見直しが必要となるかは現時点では明らかではない。
-
「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」のうち、「秩序ある共生社会の実現に向けた受入れ環境整備」という項目では、今後の課題として以下のように記載している。
「我が国に在留する外国人(帯同家族を含む。)が、日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラムの創設を検討する。プログラムの創設に当たっては、来日前、来日後初期、中期、長期の各段階やライフステージ、出身国・地域に応じて必要な内容(取組)を調査・検討するとともに、各省庁が実施する各種取組を精査の上、省庁横断的に実施すること等を考慮する。その上で、当該プログラムを受講の上、内容を理解していることを在留審査における考慮要素とすることについて、対象とする在留資格も含め、検討する。その上で、日本語や我が国の制度・ルール等を学習する上記プログラムにおける認定日本語教育機関や登録日本語教員の活用を見据えた日本語教育環境整備、外国人の受入れによって裨益する受入れ機関が、外国人本人、配偶者及び子供に対する日本語教育や、違法行為やルール逸脱の防止等について果たすべき役割を一層明確にする方策を検討する。」 -
本文で述べた「一体的に把握・活用する」とは、外国人住民の私生活一般を監視する趣旨ではなく、法的資格としての在留資格、居住状況、就労状況などを、日本語教育機会の確保という行政目的に照らし、政策判断に必要な範囲で適法に把握・活用することをいう。
【参考文献】
-
外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(2026年1月23日)
-
参議院常任委員会調査室・特別調査室「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案の概要と国会論議-日本語教育機関の認定制度と日本語教師の国家資格の創設-」
-
出入国在留管理庁「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令の留学の在留資格に係る基準の規定に基づき日本語教育機関等を定める件」
-
出入国在留管理庁「受入れ機関に係る情報」
-
出入国在留管理庁「育成就労制度」
-
出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」(資料2)
-
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
-
出入国在留管理庁「育成就労制度の関係省令等について」
-
出入国在留管理庁「第12回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議 特定技能制度及び育成就労制度の受入れ見込数について(案)」
-
出入国在留管理庁「職種・作業別 在留資格「技能実習」に係る在留者数」(令和6年末)
-
文部科学省(2025)「日本語教育実態調査 令和6年度報告 国内の日本語教育の概要」
-
文部科学省「日本語教育機関の認定制度の創設等」
-
文部科学省「認定日本語教育機関の認定等に関すること」
-
文部科学省「認定日本語教育機関の認定結果」
-
文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会日本語教育部会長所見」(2024年10月30日公表)
-
文部科学省「日本語教育機関認定法ポータル」
-
文部科学省「就労のための課程・生活のための課程を置く認定日本語教育機関の認定等について」(2025年1月17日公表)
-
文部科学省・出入国在留管理庁「出席管理及び在留継続支援体制に係る認定日本語教育機関の運営に関するガイドライン」(2024年4月12日策定)
-
文化庁「認定日本語教育機関に関する省令等の案について」(第2回認定日本語教育機関の認定基準等の検討に関するワーキンググループ(R5.7.21)資料2)
-
重原正明(2024)「技能実習から育成就労へ~外国人の研修型就労制度はどう変わるか~」
-
宍戸美佳(2025a)「外国人比率10%時代に向けた在留管理体制の構築(第1編)~特定在留カードの創設による利便性の向上~
-
宍戸美佳(2025b)「外国人比率10%時代に向けた在留管理体制の構築(第2編)~在留資格手続きにおけるマイナンバー利用開始と公共サービスメッシュの導入~」
-
宍戸美佳(2025c)「外国人比率10%時代に向けた在留管理体制の構築(第3編・完)~エストニア・デンマーク・オランダとの比較から考察する制度設計の方向性~」
宍戸 美佳
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。
- 宍戸 美佳
ししど みか
-
総合調査部 政策調査G 次長
専⾨分野: 多文化共生、観光
執筆者の最近のレポート
関連テーマのレポート
-
続・不就学の外国人の子供たち ~共生社会に向けた教育行政への公共サービスメッシュの活用と求められる施策~
その他
宍戸 美佳
-
【1分解説】在留資格審査へのマイナンバー活用とは?
その他
宍戸 美佳
-
外国人比率10%時代に向けた在留管理体制の構築(第3編・完) ~エストニア・デンマーク・オランダとの比較から考察する制度設計の方向性~
その他
宍戸 美佳
-
外国人比率10%時代に向けた在留管理体制の構築(第2編) ~在留資格手続きにおけるマイナンバー利用開始と公共サービスメッシュの導入~
その他
宍戸 美佳
-
外国人比率10%時代に向けた在留管理体制の構築(第1編) ~特定在留カードの創設による利便性の向上~
その他
宍戸 美佳

