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2025.11.04
その他
外国人
外国人比率10%時代に向けた在留管理体制の構築(第1編)
~特定在留カードの創設による利便性の向上~
宍戸 美佳
- 要旨
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2024年6月成立の改正入管法により、マイナンバーカード機能を付加した「特定在留カード」が創設された。在留資格手続とマイナンバー制度の接続を通じ、在留外国人の利便性向上と行政手続の効率化を図るものである。
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交付対象は、住民基本台帳に記録される中長期在留者および特別永住者であり、2024年末時点で約377万人が申請資格を有すると見込まれる。交付開始時期は2026年6月までに政令で定められる予定である。
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特定在留カードでは、裏面にマイナンバーを記載し、在留期間・許可年月日などの一部情報をICチップに集約する。これにより在留カードとマイナンバーカードの更新手続が地方出入国在留管理局に一元化される。
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一方で、特定在留カードの申請は任意であり、(a)特定在留カード取得、(b)在留カードとマイナンバーカードをそれぞれ取得、(c)在留カードのみ取得、の三択が生じる。これにより、制度運用上の複雑化が懸念される。
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主な課題は、マイナンバー機能失効と在留カード効力維持が併存する部分失効に対する統合的な制度設計、異なる暗号化技術を統合したセキュリティ強化、行政窓口職員への周知・教育、および多言語・やさしい日本語による制度理解の促進、である。
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次編では、マイナンバー利用開始と公共サービスメッシュ導入を通じた在留資格手続の高度化を考察する。
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- 目次
1. はじめに
本レポートシリーズでは、外国人比率10%時代に向けた在留管理制度の構築をテーマに、現在進められている出入国在留管理制度に関する制度改正について考察する。初編となる本レポートでは、特定在留カードを取り上げる。第2編では在留資格に係る許可等に関する事務におけるマイナンバーの利用および公共サービスメッシュを通じた行政機関間の情報連携、そして最終編となる第3編では、これらを総括し在留外国人比率10%時代に向けた出入国在留管理制度について考察する。
2. 特定在留カードとは何か
2024年6月に「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律」が成立・公布された。これにより「特定在留カード」が創設された。本シリーズの初編として、この特定在留カードについて考察する。
(1) 特定在留カードの概要
特定在留カードとは、マイナンバーカードとしての機能が付加された在留カード(注1)である。特定在留カードの交付申請資格を有するのは、住民基本台帳に記録されている中長期在留者(注2、注3)、または特別永住者と規定されている。ここで住民基本台帳制度が適用される対象者についてもう少し詳しく見てみる(資料1)。中長期在留者や特別永住者のほかにも一時庇護許可者など、住民基本台帳制度が適用される対象者がおり、2025年1月1日時点でその総数は368万人である。これに対して、今回の特定在留カードの交付申請資格があるのは前述のとおり中長期在留者および特別永住者であり、2024年12月末時点ではそれぞれ349万人、27万人、合わせて377万人となっている。2026年6月までに、いつから交付申請が可能なのか政令で公表される予定だが、現時点では未定である。したがって、現時点での在留外国人の増加状況に鑑みれば、交付申請可能となった時点でその申請資格を持つ外国人は、377万人と同等かそれ以上になると考えられる(注4)。

(2) 特定在留カード創設の経緯
次に、特定在留カード創設に至った背景を確認する。2018年12月に「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立・公布され(2019年4月1日施行)、特定技能制度が創設された(注5)。この制度により将来的に外国人の増加が見込まれ、在留状況・雇用状況・社会保険加入状況の3分野における外国人の情報を一元的に把握し連携させる必要性が認識された。そこで制度の創設とともに、個人識別番号検討規定が設けられた。
ここで、特定技能制度創設時に見込んだ在留外国人の増加について、実際の状況について見てみる。資料2は、特定技能制度と、その後制度的に接続することとなる技能実習制度(注6)が創設された2010年以降の在留外国人数、および在留資格のうち技能実習と特定技能を持つ外国人数の推移を示したものである。特定技能制度が開始された2019年以降、コロナ禍で技能実習の人数が一時的に減少したものの(2020年および2021年)、それ以降は特定技能と技能実習とを合計した人数は増加している。2024年12月末時点では74.1万人、また在留外国人総数に占める割合は19.7%と、最も多い永住者(91.8万人、24.4%)に次ぐ規模になっている。

(3) 特定在留カードの特徴
前節で確認した在留外国人数の増加の見通しから、個人識別番号の具体的内容の検討が開始され、冒頭に述べた特定在留カード創設に至ったものであるが、本節ではその特定在留カードの詳細を確認する。なお、特別永住者の場合には、特定特別永住者証明書の交付申請対象となるが、本章では特定在留カードに絞り確認することとする。
資料3は、現行の在留カード、マイナンバーカードおよび特定在留カードの券面イメージを示したものである。また、資料4は各カードの券面等記載事項を比較したものである。

特定在留カードの主な特徴を、在留カードとの差異を確認することで捉える。
まず、特定在留カードの裏面にマイナンバーが記載される。また、在留カードの券面記載事項が簡略化され、在留期間、許可の種類および年月日、在留カードの交付年月日の記載がなくなり、ICチップにのみ記録される。
特定在留カードの創設により手続きが一元化される。現行の在留カードは、在留資格に応じた有効期限が設定され(注7)、その更新には地方出入国在留管理局で手続きを行う必要があった。他方、マイナンバーカードの有効期限も在留期間満了日までであるが、市区町村の窓口で有効期間変更手続きを行う必要があった。だが、今回の法令改正によりこの手続きが一元化され、特定在留カードは地方出入国在留管理局で更新することが可能になる。在留外国人の利便性が向上することが期待される。
なお、特定在留カードの取得は義務ではなく任意であり、創設後も、在留カードとマイナンバーカードを別々に所持することは可能である。この場合、手続きの一元化の対象外となり、更新にあたってはそれぞれの窓口で手続きを行う必要がある。
顔写真の表示も変わる。現行の在留カードでは16歳未満は顔写真が表示されないが、特定在留カードでは16歳未満でも顔写真が表示されることになる(ただし、1歳未満は除く)。本人確認の精度向上が期待される。
以上のような特徴を持つ特定在留カードが導入されても、現行の在留カードはその有効期限まで使用が可能とされている。なお、特定在留カードを希望しない場合でも、新たな様式の在留カードが交付される。この新様式は、特定在留カードからマイナンバーの記載を除いた内容となる。
この制度改正、とりわけ行政手続きの一元化により、在留外国人の利便性が大幅に向上することが期待されている。
3. 特定在留カードを巡る課題
次に特定在留カード創設に伴い、現時点で想定される課題を考察する。なお、前章に引き続き特定在留カードに絞って確認する(注8)。
まず、特定在留カード創設に伴い、その申請は任意であることから在留外国人は以下の選択肢を持つことになる(注9)。なお、いずれの場合でも、住民登録した在留外国人にマイナンバーは付与される。

これを踏まえ、想定される主な課題について確認する。
(1) 複雑な失効ルールへの対応
例えば、特定在留カードを紛失した場合、マイナンバーカード機能は失効するが、在留カードとしての効力は維持される、という部分失効が起こる、とされている。現段階では、この複雑な失効ルールを技術的に実現するための具体的な仕組みについて、詳細は明らかにされていない。もっとも、マイナンバーカードのICチップには、公的個人認証や券面事項、自治体ポイントなど複数の機能領域を安全に区分して搭載する構造がすでに導入されており、情報領域を分離して管理すること自体は技術的に可能であると考えられる。
したがって、技術的制約というよりも、制度間の整合性と運用設計が課題となろう。すなわち、在留カード情報を所管する出入国在留管理庁と、マイナンバー情報を管理する地方公共団体情報システム機構(J-LIS、注10)という異なる管理主体の間で、失効や再交付、認証結果を正確に同期させ、行政窓口や関連システムで即時に反映できる仕組みを整備することが求められる。特定在留カードの導入にあたっては、こうした制度横断的な情報管理・失効制御を含む統合的な制度設計が不可欠である(注11)。
(2) 特定在留カードそのもののセキュリティ強化
現行の在留カードとマイナンバーカードは、それぞれ異なる高度な暗号化技術を使って偽造を防止している。特定在留カードでは、これら2つの異なるセキュリティ技術を1枚のカードに組み込む必要があると考えられる。それぞれが正常に機能し、互いに干渉しないよう調整することが求められるだろう。また、外国人の身分証明書は、不正入国や身元詐称などの目的で悪意ある者に狙われやすく、偽造、複製、改ざんの対象となるリスクが高い。特定在留カードは、従来の在留カードに対する偽造手法とマイナンバーカードに対する偽造手法の両方に対応できる防御機能を、1枚のカードで実現することが求められる。
(3) 行政窓口職員への周知・教育
本章の冒頭に記載したとおり、在留外国人は3つの選択肢を持つことになる。したがって、新設される特定在留カードに関して、制度説明や外観・機能に関する職員への情報提供が求められる。また、特定在留カードおよび在留カードに関する手続きは出入国在留管理庁、マイナンバーカードに関する手続きは各市区町村で行うことになる。このため行政機関によっては担当職員が複数の手続き方法を習得する必要がある。
(4) 制度理解・啓発・普及に関する課題
特定在留カードの普及に向けては、対象となる在留外国人(2024年12月末時点で約377万人、前掲資料1、注12)に対して、その制度概要について多言語で説明していくことが求められる。筆者としては、「やさしい日本語」(注13)の活用も求めたい。また、交付申請は任意であることに伴い、選択肢が3つとなること、それぞれ手続きが異なることについても分かりやすく案内する必要があるだろう。システム障害等が発生した際にも多言語や、やさしい日本語でのサポートが求められる。
4. 小括
本編では、特定在留カードについて確認した。次編では、在留資格等に係る許可等にマイナンバーを利用可能とする制度改正と、この制度改正と不可分に位置づけられる、公共サービスメッシュを通じた行政機関間の情報連携について考察する。
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在留カードとは、日本に中長期間在留する外国人に交付される公的な身分証明書。氏名・生年月日・国籍・在留資格・期間などが記載されており、16歳以上の者は常時携帯することが義務付けられている。
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住民基本台帳とは、住民基本台帳法に基づき、日本国内の市区町村に住所を有する住民(外国人のうち同法に基づき記録対象とされる者を含む)の氏名、住所、生年月日、性別などの基本的な情報を記録・管理する帳簿である。これに基づき、住民票の発行や転入・転出手続きなどの行政サービスが行われている。日本全国の市区町村が管理する住民基本台帳の情報をネットワークで共有・利用できるようにしたのが「住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)」であり、2002年に運用が開始された。住民票コードと呼ばれる11桁の番号が各住民に付与され、このコードは結婚などにより氏名や住所が変更された場合でも原則変更されない。なお、住民票コードは、本人の請求による場合、または法令に基づく場合を除き、住民票の写しその他の証明書に記載してはならないと定められている。
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現行の在留カードについては、住民登録(住民票の作成)を完了していない中長期在留者の交付申請そのものを拒否する旨の明文規定は確認できない。このため、住民登録をしていない場合でも、在留カードの交付申請は可能であると考えられる。しかし、住所未登録のままでは、在留カード記載情報と行政記録との間に不整合が生じる。このため、法務省および総務省は、住所を定めた日から14日以内に住居地届出を行うよう義務付けており(住民基本台帳法第30条の45)、在留カードの適正な交付・利用には住民登録が事実上の前提となると考えられる。もっとも、特定在留カードの導入および「公共サービスメッシュ」の運用開始後は、出入国在留管理庁の在留情報と住民基本台帳情報がマイナンバーを共通識別子としてオンラインで連携することにより、こうした情報の不整合は縮減されることが期待される。ただし、住民登録(住民票作成)を完了していない中長期在留者が特定在留カードの交付申請を行うことができるかについては、現時点では公的情報が示されておらず不明である。なお、「公共サービスメッシュ」制度の概要については本レポート第2編、また制度的な改善効果については第3編において詳述する。
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資料1について、住民基本台帳に基づく外国人住民数は、在留資格を有する外国人数よりも少ない。これは、在留資格を保有していてもすでに出国している者や、転入届を提出していないため住民基本台帳に記録されていない者が含まれるなど、統計上・制度上の集計基準の違いによるものである。こうした乖離については、今後、「公共サービスメッシュ」の導入により、出入国在留管理庁の在留情報と住民基本台帳とのオンライン連携が進むことで縮減が期待される。公共サービスメッシュについては、本レポートシリーズ第2編、また制度的な改善効果については、第3編において詳述する。
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特定技能制度とは、日本で深刻な人手不足が生じている特定の産業分野で、外国人労働者が一定期間働くことを認める在留資格(特定技能)に関する制度。在留資格には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類がある。1号は相当程度の知識または経験を必要とする業務を対象とし、在留期間は通算で最長5年間。2号はより熟練した技能を必要とする業務を対象とし、在留期間の更新上限はなく、配偶者や子の帯同も認められている。
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技能実習制度は、1993年に研修制度の一部として導入された後、2009年に公布された「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」により在留資格として法的に位置付けられ、2010年7月1日に施行された。本レポートでは、在留資格制度としての創設年である2010年を基準として記載している。
この技能実習制度に関して、2024年6月に「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布された。これにより、技能移転による国際貢献を目的としてきた技能実習制度を抜本的に見直し、我が国の人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されることとなった。同法では、施行日を「公布の日から起算して三年以内に政令で定める日」としており、2025年10月20日時点においては具体的な施行日は未定である。ただし、出入国在留管理庁の公表資料によれば、2027年を目途に制度の運用が開始される見通しとされている。この制度の施行後は、従来の技能実習制度が段階的に廃止され、外国人材の育成と国内定着を重視した新たな枠組みへの転換が進められる予定である。 -
現行の在留カードの有効期限については、有期限在留者は在留期間満了日まで、他方、永住者および高度専門職2号は交付日から7年間有効とされている。
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特定特別永住者証明書も特定在留カードと同じ技術仕様書で規定されており、出入国在留管理庁が公開する「特定在留カード等仕様書」において両カードは共通の技術仕様として定められている。したがって、本章で確認する課題は、その多くが特定特別永住者証明書にも当てはまるものと考える。
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第213回国会参議院本会議(2024年5月15日)において、マイナンバーカードの取得およびマイナ保険証の利用に関する質問に対し、武見敬三厚生労働大臣は、「マイナンバーカードは、最高位の身分証として、対面での本人確認など厳格な本人確認の下で交付する必要があるため、取得を義務化せず、本人の申請に基づくこととされているものと承知しています」と答弁している。このマイナンバーカードの取得が義務ではないことから、同カードとの一体化を前提とする特定在留カードについても、取得を義務化せず任意とした制度設計になっていると考えられる。
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地方公共団体情報システム機構(J-LIS)とは、「地方公共団体情報システム機構法」に基づき設立された法人であり、複数の地方公共団体が共同で事務を処理するために設立する公的法人(地方共同法人)である。マイナンバー制度においては、マイナンバーカードの発行・管理を担う「個人番号カード管理システム」の運営主体であり、公的個人認証サービス(JPKI)の提供や住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の運用も行っている。このため、特定在留カードのICチップに搭載されるマイナンバーカード機能部分については、地方公共団体情報システム機構が管理主体と位置づけられる。
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制度間連携やデータの即時反映を実現する技術基盤が「公共サービスメッシュ」である。詳細は本レポートシリーズの第2編および第3編を参照されたい。
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2024年版「出入国在留管理」日本語版によれば、2024年7月末時点の外国人住民のマイナンバーカード保有率は約52.4%(総務省提供)とのことである。なお、当該保有率は、2024年7月31日時点の外国人住民における保有枚数の、2024年1月1日時点の外国人住民の住民基本台帳人口に対する割合、としている。
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やさしい日本語とは、難しい言葉を言い換える、ふりがなをふるなど、相手に配慮したわかりやすい日本語を指す。
【参考文献】
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国土交通省「資料1 国内におけるICカードの利活用事例」
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国立国会図書館「第213回国会 参議院 本会議 会議録(第18号 令和6年5月15日)」
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出入国在留管理庁「令和6年入管法等改正について」
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出入国在留管理庁「令和5年における難民認定者数等について」
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出入国在留管理庁「在留カードとマイナンバーカードの一体化Q&A」
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出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」
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出入国在留管理庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」
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出入国在留管理庁「2024年版「出入国在留管理」日本語版」
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総務省「外国人住民に係る住民基本台帳制度」
宍戸 美佳
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

