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2025.11.05
その他
外国人
外国人比率10%時代に向けた在留管理体制の構築(第2編)
~在留資格手続きにおけるマイナンバー利用開始と公共サービスメッシュの導入~
宍戸 美佳
- 要旨
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- 2023年改正の番号法により、在留資格等に係る許可等の事務にマイナンバーを利用可能とする制度が創設された。
- 改正により、在留資格を有する外国人が在留期間更新等を申請する際、課税証明書などを紙で添付せず、マイナンバーを提供することで関係行政機関から電子的に情報照会できる仕組みが導入される見込みである。これにより、在留外国人の手続負担が軽減される。
- 出入国在留管理庁は、マイナンバー利用に対応するため、新たに「個人番号情報管理システム」を整備し、既存の出入国管理システム(FEIS)と連携させる方針である。この新システムは、デジタル庁が推進する行政機関間連携基盤「公共サービスメッシュ」の一部として運用される。
- 公共サービスメッシュは、行政機関が保有するデータを安全かつ円滑に連携させる仕組みであり、在留資格手続では社会保険・課税情報等の電子照会を可能にする。運用開始は2026年1月、出入国在留管理分野での情報連携は2027年3月に予定されている。
- 制度導入による主な効果は、審査の正確性向上、事務処理の効率化、不正申請防止、自治体の窓口業務軽減などであり、行政・利用者双方に利点をもたらす。
- 一方で、課題として、システム可用性と業務継続性の確保、セキュリティ要件の高度化、データ整合性の確保、複数の省庁・行政機関にまたがるデータ・インターフェイス設計、運用・保守体制の構築が挙げられる。
- 特に、出入国在留管理庁・厚生労働省・国税庁などが保有する情報を相互に連携させるため、技術的・法的・運用的な整合性の確保が求められる。
- 次編では各国の行政情報連携事例との比較を通じ、制度設計の方向性を考察する。
- 目次
1. はじめに
本レポートシリーズでは、外国人比率10%時代に向けた在留管理制度の構築をテーマに、現在進められている出入国在留管理制度に関する制度改正について考察する。
2. 在留資格等に係る許可等におけるマイナンバー利用と公共サービスメッシュの導入
本編では、在留資格等に係る許可等にマイナンバーを利用可能とする制度改正(注1)を踏まえ、その具体例として在留期間更新の許可申請フローを確認する。また、この制度改正と不可分に位置づけられる、公共サービスメッシュを通じた行政機関間の情報連携について見ていく。
(1)在留資格手続きにおけるマイナンバー利用とは何か
「在留資格等に係る許可等におけるマイナンバー利用」(以下、「在留資格手続きにおけるマイナンバー利用」)とは一体どのような制度なのか、その一例である在留資格を有する外国人が、在留期間を更新する許可申請を行う場合の手続きの流れを通して確認していく(資料1)。
現在の手続きでは、資料1左図のとおり各行政機関に来所して証明書発行申請を行い(左図①)、課税証明書などを取り付ける(左図②)。そのうえで、出入国在留管理庁に在留期間更新の許可申請を行い(左図③)、出入国在留管理庁にて申請内容の確認・審査を行い(左図⑤)、申請者である在留外国人に審査結果を通知する。なお、各行政機関が保有する証明書等を紙媒体で入手し、③の申請をオンラインで行う場合には、電子化して在留申請オンラインシステムに登録する必要がある。
一方で、資料1右図のとおりマイナンバーの利用により行政機関間の情報連携が実現した場合、申請者がマイナンバーを提供して在留諸申請を行うと(右図①)、出入国在留管理庁が必要な課税情報などを関係行政機関に直接照会し、関係行政機関が電子的に情報提供を行う(右図④)。これにより、対象手続から順次、添付書類の省略が可能となる見込みである(ただし、所管規程・告示等の整備状況に依存する)。実現すれば、在留外国人や行政機関の負担軽減につながる。

(2)出入国管理システムはどのように変わるのか
前節で確認した制度改正を受けて、システムを通じてどのように実現するのか本節では確認する。既存の基幹システムに加えて、新たに個人番号情報管理システムを追加整備し、これを介して、在留資格更新などの審査時に他行政機関の保有情報(課税情報・社会保険加入状況など)と直接連携できる仕組みを導入する、そしてこうした行政機関間のデータ連携を技術的に支える基盤が公共サービスメッシュである(注2)。これが整備の方向性であるが、各システムについて順に確認していきたい。
まず、在留外国人の出入国管理にはどのようなシステムが使用されているのか確認したい(資料2、注3)。その基幹システムと位置付けられるのが、外国人出入国情報システム(以下、FEIS)である。名称には「出入国情報」とあるが、実際には出入国記録に限らず、在留資格や所属機関(注4)などの在留管理に関わる情報も広く収録している。氏名、性別、国籍、生年月日、旅券番号などの共通事項を収録した3つのデータベース以外に、「査証情報データベース」、「外国人ブラックリスト基本情報データベース」など、いくつものデータベースから成る、とされている(注5)。

次に、個人番号情報管理システムを確認する(資料2)。この新システムは、公共サービスメッシュというデジタル庁が整備を進める行政機関間の情報連携基盤の一部として、在留外国人の情報を適切に管理・連携する役割を担うと考えられる。マイナンバーそのものを管理するシステムではなく(注6)、出入国在留管理庁が所掌する事務で必要となるマイナンバーと紐づいた在留資格等の情報(特定個人情報)を扱うためのシステムである。これにより、公共サービスメッシュを通じて他機関が保有する情報(注7)とマイナンバーを「共通キー」(注8)として連携することが想定されている。
この個人番号情報管理システムと公共サービスメッシュが、前項で確認した在留資格手続きに必要な課税情報などを、マイナンバーを「共通キー」として関係行政機関に直接照会し、関係行政機関が電子的に情報提供を行うことを可能にするのである。もっとも、公共サービスメッシュ自体は、番号法に基づくマイナンバー利用事務に限られるものではなく、他の法令に基づく行政機関間の情報連携や通知機能も含む仕組みとして設計されている。ただし、マイナンバーを「共通キー」とした情報連携以外の取組みについて、現時点で公表されている情報は限られている。また、公共サービスメッシュの運用は2026年1月から開始されるが、出入国在留管理分野での情報連携開始は2027年3月とされている。
3. 在留資格手続きにおけるマイナンバー利用および公共サービスメッシュがもたらすメリットと課題
(1)在留資格手続きにおけるマイナンバー利用および公共サービスメッシュがもたらすメリット
まず、在留資格手続きの審査を行う出入国在留管理庁にはどのようなメリットが期待されるか確認する。
(ア)不適正な申請の防止と審査の正確性・信頼性の向上
マイナンバーによる情報連携により、同庁は関係行政機関から最新かつ正確な情報を電子的に取得できるようになる。申請者が提出する証明書類(課税証明書、納税証明書、住民票の写し等)の真贋判定という物理的確認作業に依存せず、関係行政機関から電子的に取得した証明書類の内容や整合性といった実質的な審査にリソースを重点配分できると考えられる。これにより、提出書類の偽造や内容の不実記載といった不適正な申請を防止する一方で、審査の正確性と信頼性の一層の向上が期待される。
(イ)事務処理の効率化
紙媒体の証明書類の確認作業や、疑義がある場合の関係機関への照会業務が削減され、審査期間の短縮と事務負担の軽減が実現されることが期待される。なお、現在の標準処理期間、すなわち、申請から在留外国人が在留カードを受け取るまでの期間は2週間から1か月程度とされており、この審査の効率化が期待される。
次に地方自治体などの関係行政機関のメリットについて確認する。在留申請に必要な課税証明書等の発行件数が減少することで、市区町村の窓口業務の負担が軽減され、業務全体の効率化が図られることが期待される。
また、従来の在留資格手続きでは申請者による紙の証明書の提出(原本の添付、あるいはPDFによる提出)に依拠し、その内容について必要に応じて出入国在留管理庁が関係行政機関に対して個別照会を行う運用となっていた。今後、公共サービスメッシュの導入により電子的な取得・照合が進むことで、迅速かつ正確な情報提供が可能となり、照会の受け手側でも事務負担の軽減が期待される。
最後に、在留外国人にもたらされる最大のメリットは、行政機関が発行する証明書類の添付が省略できるようになることであろう。前章で確認したとおり、現在は、オンライン申請を行う場合でも、課税証明書、納税証明書、住民票の写し等の証明書類を紙面で取得し、電子化して在留申請オンラインシステムに登録しなければならなかったが、マイナンバーが利活用されることで、こうした証明書類の取得・添付という手間が省ける。また、在留外国人を雇用する企業などが申請等取次者として手続きを行う場合、本人が行う場合と同様に、外国人従業員に係る証明書類を複数の行政機関から入手して添付する必要がなくなる。
このような手間を省くことを可能にするのが、マイナンバーを「共通キー」とした行政機関の間の情報連携である。なお、どのような情報が提供されたのか、その履歴をマイナポータル上で閲覧することが可能である。これにより、在留外国人自身も自分の情報がどのように利用されているか確認できる。
(2)在留資格手続きにおけるマイナンバー利用および公共サービスメッシュの課題
次に、在留資格の許可申請手続きにおけるマイナンバー利用を巡る主な課題について確認する。言い換えれば、前掲資料2の個人番号情報管理システムの新規開発と、公共サービスメッシュ導入に伴う課題であるが、これらについて見ていく。
(ア)システム障害の防止と障害発生時の対策
2024年7月に、一時的なシステム障害により入国審査の待ち時間計測に必要なデータを取得できない事態が発生した。このような障害が頻発しているとは公表されていないが、個人番号情報管理システムの導入により業務の複雑性とシステム間の連携が増加することを考慮すると、現行システムの安定性確保、あるいはいつでも使用できるというシステム可用性確保と、システム障害が発生した場合の対応体制の強化は重要な検討事項であろう。
また、個人番号情報管理システムを通じた公共サービスメッシュとの接続により、他の行政システムへ障害が波及するリスク、あるいは逆に他のシステムが個人情報管理システムに影響を及ぼすことも想定される。こうした一つのシステムの障害が公共サービスメッシュを通じて税務、社会保障、災害対策等の複数の行政サービスに連鎖的に影響を与えないような対策が求められるのではないか。
(イ)高度なセキュリティの確保
個人番号情報管理システムでは、マイナンバー(特定個人情報)を取り扱うため、厳格な技術的安全管理措置が法的に義務付けられている(注9)。一方、出入国管理の基幹システムであるFEISの具体的なセキュリティ要件については公的資料で詳細が確認できないが、マイナンバー取扱いに求められる技術的安全管理措置と照らし合わせると、両システムの連携部分では、高度で統一されたセキュリティ管理体制の構築が必要になると考えられる。特に、異なるセキュリティレベルのシステム間でデータ連携を行う際の認証・暗号化・ログ管理の統合は、技術面および運用面でも複雑な課題になると推測される。また、FEISが2004年に運用開始されたシステムであり、新システムとは約20年の技術的な世代差があるなかで、これらの技術を適切に実装し安定稼働させること、特定個人情報の安全管理措置に関する法的要件を満たしながら運用することも肝要となろう。
(ウ)データ整合性の確保
FEISが管理する外国人の出入国情報と、個人番号情報管理システムが扱うマイナンバー関連情報を連携させる際、同一人物の情報が両システムで齟齬なく管理される必要があると考えられる。
とりわけ、空港などでの出入国管理業務においては、ほぼリアルタイムに近い整合性を確保できる仕組みや、データ不整合発生時の自動検知・修正手順が求められると推測される。24時間365日稼働が必要な業務で、データ整合性技術を適用しながら必要な処理性能を維持することも求められるだろう。
なお、政府は2025年の骨太の方針で、外国人の税・社会保険料の未納付防止や制度の適正利用に向け、未納付情報や医療費不払情報の連携による在留審査への有効活用を進める方針を決定している(注10)。中長期在留者に関しては、当該情報に基づく審査の厳格化の実施・運用が検討課題とされている。この実現に求められるのが、出入国在留管理庁の外国人出入国情報システム(FEIS)等と厚生労働省の社会保険システム間での情報連携であり、在留審査時や24時間稼働の出入国管理実務で必要な時に迅速に照会・応答できる体制が必要となる一方、厚生労働省が運用する社会保険システムなどは一定の周期での処理を行うバッチ型の運用が主体となっている(注11)。こうした場合、課税・社会保険料の納入未反映といったタイムラグが生じる可能性があり、そうした点も踏まえたシステム連携の設計・運用が求められる。
(エ)複数の省庁・行政機関にまたがるデータ・インターフェイス設計、運用・保守体制の構築
個人番号情報管理システムの導入により、出入国在留管理庁は公共サービスメッシュを通じて、住民基本台帳・マイナンバーカード情報、厚生労働省の社会保険料情報、国税庁の課税情報など、複数の行政機関と情報をやり取りすることになる。これらのシステムはそれぞれ異なる目的・管理方法・安全基準を持っていると考えられるため、単に接続するだけでなく、データ項目の意味づけや識別子のそろえ方、照会・応答の手順や更新の周期などを、共通の考え方に基づいて設計することが欠かせない。とりわけ、出入国在留管理庁が扱う在留資格情報と、厚生労働省や国税庁が保有する社会保険・課税情報とをマイナンバーを「共通キー」として結びつける場合、前項でも指摘したとおり情報の更新時期や処理の仕組みの違いによって内容が一致しない恐れがある。このため、公共サービスメッシュ上でのデータ交換プロトコルや標準APIの設計を整えることが必要なのではないか(注12)。
また、各機関が管理する情報の項目名や分類の方法をそろえるなど、情報の整理方法を統一すること、さらに、通信の途中で生じる不具合や誤りを検出・修正するためのエラー対応手順を定めることも求められる。
加えて、各省庁で異なる情報管理の方針や障害対応の基準をすり合わせ、共通の監視や運用体制を築くことも課題である。これらを通じて、制度面・技術面・運用面のすべてで整合性を確保し、行政機関間の情報連携を安定して持続的に運用できる仕組みを構築することが重要である。
4. 小括
本編では、在留資格手続きにおけるマイナンバー利用と公共サービスメッシュについて確認した。本シリーズ最終編では公共サービスメッシュのような行政機関間の情報連携の事例として、エストニア、デンマークおよびオランダについて確認する。また、こうした各国の事例を踏まえ、外国人比率10%時代に向けた在留管理制度について考察する。
【注釈】
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根拠法は2023年6月改正の「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」で、通称「番号法」。同法第9条第2項改正で「在留資格等に係る許可等の事務」においてマイナンバーを利用可能とすると定めている。この「在留資格等に係る許可等」には、出入国管理及び難民認定法に基づく在留資格更新・変更、認定証明書交付、再入国許可など幅広い手続きが含まれる。
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公共サービスメッシュとは、デジタル庁が推進する行政データの活用・連携を迅速にするためのシステム間連携の仕組み。「デジタル社会形成基本法」に基づく施策としてデジタル庁が推進し、2021年閣議決定の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」等において、行政機関間の情報連携を強化する中核基盤として位置づけられている。①自治体内の情報活用と、②行政機関間の情報連携の2つの枠組みで構成され、行政が保有するデータを安全かつ円滑に連携できるようにするもの。①は自治体内での業務・システム横断的なデータ抽出・加工を可能にする。また、②については、現行の中間サーバー等の機能を共通化する「機関間情報連携サービス」が2026年1月から提供される予定。これにより、住民サービス体験の向上や自治体職員の業務効率化を実現し、最終的には「スマホ60秒で完結する行政サービス」を目指している。
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出入国管理の基幹システムとされる外国人出入国情報システム(Foreigners Entry departure Information System, FEIS)については、本格運用が開始された2004年度(平成16年度)に関する法務省「法務年鑑」、および翌年度の法務年鑑に記載がある。しかし、およそ20年前の資料であることから、より新しい総務省「外国人の受け入れ対策に関する行政評価・監視-技能実習制度等を中心として-結果報告書」の記載をもとに資料2を作成。ただし、この総務省資料も2013年4月に公表された資料であることから、本文に記載したFEISの各データベース名などが変更されている可能性がある。
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所属機関とは、在留外国人が就労・就学等の活動を行う際に所属する教育機関や受入れ機関、雇用主などを指す概念であり、すべての在留資格に共通するものではない。技能実習、特定技能、留学、技術・人文知識・国際業務など、一部の在留資格においてのみ在籍先や受入先が明示される。したがって、外国人出入国情報システム(FEIS)における「所属機関情報」は、これらの在留資格に該当する者について登録・管理される項目である。
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共通事項として、本文に記載した氏名、性別、国籍、生年月日および旅券番号以外にも、入国年月日、居住地、在留目的、在留資格期間、資格外活動に係る情報、研修生派遣・所属機関番号などの情報が「外国人管理情報データベース」、「所属機関情報データベース」および「イメージ情報データベース」に収録されている。また、目的別のデータベースとして、本文記載以外に「出入国記録情報データベース」、「外国人登録履歴情報データベース」、および「在留認定審査情報データベース」などがあるとされる。これらにより、FEISは単なる出入国情報の管理にとどまらず、在留資格や所属機関情報を含む広範な在留管理情報を扱う構造を有している。
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マイナンバー制度の所管は、制度全体の企画・立案を行う内閣官房およびデジタル庁である。番号法に基づく利用範囲(社会保障・税・災害対策)の規定や制度設計は国が所管する。他方、マイナンバーの具体的な付番・記録は市区町村が管理する住民基本台帳に基づいて行われる。また、マイナンバーカードの発行・管理は、総務大臣の所管のもとに、複数の地方公共団体が共同で事務を処理するために設立する公的法人(地方共同法人)である地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が担っている。すなわち、制度所管は国(デジタル庁等)、実務的な番号付番は市区町村、カードの発行・管理はJ-LIS、という三層構造で運用されている。
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番号法(第9条第2項)では、マイナンバーの利用目的は「社会保障」「税」「災害対策」に限定されている。したがって、公共サービスメッシュを通じた情報連携の対象も本来はこれら三分野に及ぶ。ただし、災害に関する具体的な情報連携の内容については現時点で詳細が公表されていない。そのため、本レポートでは議論を簡略化する目的で、制度設計や運用の検討が先行している「社会保障」および「税」に関する情報連携に絞って記述する。なお、番号法における「社会保障」とは、社会保険の四分野(年金・医療・介護・雇用)に限定されるものではなく、施行令に列挙された社会保障制度全般を含む広範な概念である。具体的には、生活保護などの公的扶助、児童手当や障害福祉サービスなどの社会福祉、公衆衛生や母子保健などの事務を含み、社会保険とあわせて社会保障制度全般を対象としている。
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マイナンバーの利用目的は、社会保障、税、災害対策の分野に限定されている。他方、本レポートシリーズの第3編において筆者は、エストニア、デンマーク、オランダにおける個人識別番号との比較を行っている。これらの国では、国民のみならず在留外国人にも番号が付与され、税務・社会保障・医療・教育など幅広い行政手続に共通して利用されている。こうした国と比較すると、日本におけるマイナンバーの共通IDとしての利用範囲は限定的であり、社会保険番号や年金番号など、個別制度ごとの番号体系が並存している。それでもマイナンバーは、これらの番号を相互に関連づけ、行政機関間で情報を連携させる際の共通の結合項目(共通キー)として機能することから、本レポートでは「共通キー」と表現する。
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特定個人情報については、事務取扱担当者および特定個人情報ファイルの範囲を限定する適切なアクセス制御の実施、アクセス者の識別と認証による正当性確認、外部送信時の通信経路暗号化、ファイル保存時の暗号化またはパスワード秘匿(原則必須)、システム利用状況(ログイン実績、アクセスログ等)の記録と定期的分析が法令上求められる。
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2025年の骨太の方針では、外国人との秩序ある共生社会の実現と題された項において、外免切替手続・社会保障制度等の適正化について「外国の運転免許の日本の運転免許への切替手続(外免切替手続)について、運転免許の住所確認の厳格化や知識確認・技能確認の審査内容の厳格化を進める。外国人の税・社会保険料の未納付防止や社会保険制度の適正な利用に向けて、未納付情報や医療費不払情報の連携による在留審査への有効活用、外国人の保険適用の在り方等の検討を行う。児童手当・就学援助の実態に即した適正利用を図る。」としている。
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厚生労働省が運用する社会保険システムについては、日本年金機構が公表した最新の仕様書(案)においても、日次・月次・年次の定期処理を行うバッチ型運用を前提とする設計が示されていることが確認できる。
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データ交換プロトコルは、異なるシステム間で情報を送受信するための基本的な通信の取り決め、標準APIは各機関のシステムが一定の形式で情報をやり取りするための共通の接続口であり、前者が「通信の共通言語」、後者が「その言語を使って情報を取り出す窓口」のような関係にあるとも言える。
【参考文献】
-
社会保険庁「社会保険オンラインシステムの概要」(2006年3月)
-
出入国在留管理庁「空港における入国審査待ち時間」
-
出入国在留管理庁「最長入国審査待ち時間一覧表」(2024年7月)
-
デジタル庁「公共サービスメッシュ」
-
日本年金機構「国税庁からの提供情報の変更に伴う厚生年金保険適用業務支援システムの設計・改修業務 調達仕様書」(2025年10月)
-
法務省「法務年鑑」(平成16年)
-
法務省「法務年鑑」(平成17年)
宍戸 美佳
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。
- 宍戸 美佳
ししど みか
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総合調査部 政策調査G 次長
専⾨分野: 多文化共生、観光
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