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2025.10.31
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COP30の注目ポイント
NDC遅延、ラチェットアップ・メカニズムのサイクルは挽回できるか
牧之内 芽衣
1. ブラジル・ベレンで開催されるCOP30
2025年11月にブラジル・ベレンで第30回気候変動枠組条約締約国会議(COP30)が開催される。京都議定書の発効から20年、パリ協定の採択から10年という節目に当たる。議長国ブラジルはCOP30を「交渉の段階から実施の段階への決定的な移行」を示す場ととらえ、すでに8回もの議長レターを発行し、行動加速への参画や、政府以外の「非国家アクター」へのCOP参加を呼び掛けている。
COP29で合意された気候資金「1.3兆ドルロードマップ」の具体化や、アマゾンの熱帯雨林保護に寄与する国際熱帯林保護基金「トロピカル・フォレスト・フォーエバー・ファシリティー(TFFF)」の設立なども議題に上がりそうだ。
そのうえで、今回の注目ポイントは①これまでの合意を実行に落とし込めるか、②遅れている各国のNDC(国が決定した貢献)提出を挽回できるか、③ラチェットアップ・メカニズムのサイクルを修正できるか、の3点と考える。
2.交渉から実施への転換点となるか
COP30は「グローバル・ストックテイク(GST)」完了後、評価から実施へと重心を移すタイミングのCOPだ。GSTとはパリ協定の目標達成に向けた世界全体の進捗評価で、5年ごとに実施される(資料)。2023年のCOP28で第1回GSTの結論がまとめられた。そこでは2030年までに「再生可能エネルギー容量を世界全体で3倍に」「エネルギー効率改善率を2倍に」といった目標が示された。ブラジルはGSTの成果を「1.5℃目標の羅針盤」と位置づけ、その実現を後押しする行動アジェンダを提示する考えだ。COP30は、これまでの評価を踏まえて各国が約束をどこまで実行に移し、加速できるかが問われる舞台ともいえる。

3. 各国NDC提出の遅れ
パリ協定の「ラチェットアップ・メカニズム(段階的な野心引き上げの仕組み)」により、各締約国はGST実施後、自主的な排出削減目標である「国が決定する貢献(NDC)」を提出・更新し続けることが義務付けられている。2015年のパリ協定採択時に各国が初期NDC(主に2030年目標)を提出し、その後2020~2021年にかけて第2ラウンドのNDCが提出された。そして、第3ラウンドのNDCの提出期限は2025年2月と定められており、各国は2035年までの削減目標を盛り込んだ新たなNDCを提出することになっていた。第1回のGSTで浮き彫りになったギャップを埋めるべく、各国がどこまで2030年・2035年目標を引き上げられるかという重要な局面だ。ところが、2025年2月10日の締め切り時点で提出したのはブラジル、米国、スイス、英国など、全締約国のわずか13か国に過ぎなかった。日本は2月18日に提出している。2025年春に開催された「気候野心サミット(注1)」において各国は提出期限を2025年9月まで延長することで合意したが、延長期限の9月末時点でも提出状況は3割程度と芳しくない。
4. ラチェットアップ・メカニズムの限界
国連環境計画(UNEP)の「排出ギャップ報告書2023」によれば、各国が現在公約している2030年までのNDCがすべて履行されたとしても、今世紀末の気温上昇は約2.5~2.9℃に達する見通しだ。GSTを踏まえてより高い野心を反映した各国のNDC提出が停滞すれば、1.5℃目標とのギャップは縮まらないままだ。2021年にグラスゴーで開催されたCOP26では、勝負の10年間とする2020年代に目標を引き上げるための仕組みとして「緩和作業計画(MWP)」が策定された。ところが、各国の自主性を尊重するあまり、MWPでの議論はあくまで意見交換であり、必ずしも新たな排出削減目標につなげるものではないという趣旨の決定がなされた。排出大国の思惑も絡み合う交渉の場では、野心引き上げにつながる踏み込んだ合意形成が困難を極めているのが実情だ。
5. COP30への期待
国連環境計画(UNEP)は、気温上昇を1.5℃以内に抑えるためには、2030年までに予測排出量をさらに28~42%削減する必要があるとしている。IPCCの第6次評価報告書によれば、1.5℃目標のオーバーシュート(超過)を回避するには、遅くとも2025年までに排出量がピークアウトし、その後2030年までに43%減、2035年までに60%減(いずれも2019年比)という前例のない削減が必要だ。残念ながら現実の削減ペースは目標達成には程遠い。一方、島しょ国での海面上昇による被害や気候変動による生態系の変化など、温暖化の影響は明白に表れつつある。COP30での各国の野心引き上げと行動加速に期待すると共に、成果を着実に実施へと繋げていくこと、勢いを持続・拡大することが肝要だ。そして、米国のパリ協定からの再度の離脱は、国際交渉の場における合意形成の推進力と資金動員の見通しに不確実性をもたらしている。COP30においては、従来の枠組みの見直しや具体的な枠組みの構築、目標の引き上げなどによって、国際的な気候変動対策の実効性を確保するための緊急の対応が求められている。最後の猶予期間である2020年代後半にどれだけ大胆な転換を成し遂げられるか、注目が集まっている。
【注釈】
- 気候野心サミットはパリ協定採択5周年を記念して2020年12月12日に開催された「Climate Ambition Summit 2020」を起源とする気候変動対策の強化と加速を目的とした国際会議を指す。野心(Ambition)・信頼性(Credibility)・実装(Implementation)の三本柱の構造を特徴とし、NDCはこのうち野心に該当する。
牧之内 芽衣
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

